第三章 魔道書は静かに微笑む "Forget_me_not." ⑧
『けど、上条ちゃん。研究所の
「しとくです? ……ってダメだ先生。悪いけど一刻を争う状態なんだ、今すぐ
けどー、と小萌先生は人をイライラさせるような間を空けた後、
『だって、もう夜の十二時ですよ?』
は? と、上条は思わずその場で凍りつくかと思った。
部屋には時計はない。だが、たとえあったとしても、今の上条に時間を確かめる勇気はない。
ギチギチと。ギチギチと、視線をインデックスの方へ落とす。
「……いん、でっくす?」
上条は恐る恐る、声をかけてみる。
インデックスは動かない。まるで熱病で倒れた病人のように、眠りに落ちたまま反応しない。
受話器が何かを言っていた。
だが、上条は声を聞き取る前に受話器を取り落としてしまった。
カンカン、とアパートの通路を歩く足音が聞こえた。
───それでは、
まるで樹海の奥に降り注ぐ木漏れ日のように、
真円の月を背負い、二人の魔術師がそこに立っていた。
その時、日本中の時計の針は、きっかり午前零時を示していた。
それは、ある少女の
つまり、そういう事だった。