第四章 退魔師は終わりを選ぶ (N)Ever_Say_Good_bye. ⑥
「じれってえ野郎だな、んなの見りゃ分かんだろ! インデックスはこうして魔術を使ってる、それなら『インデックスは魔術を使えない』なんて言ってた教会が
じりじり、と。上条の足が後ろへ下がる。
「冷静になれよ、冷静に考えてみろ!
二人の魔術師は、
「───『
それは間違いなく二人の魔術師の知らないインデックスだっただろう。
それは間違いなく教会に教えられなかったインデックスだっただろう。
「……、」
ステイルはほんの一瞬、本当に一瞬だけ、奥歯が砕けるほど歯を食いしばって、
「───Fortis931」
その漆黒の服の内側から、何万枚というカードが飛び出した。
炎のルーンを刻んだカードは台風のように渦を巻き、あっという間に壁や
だが、それは
インデックスという一人の少女を助けるために、ステイルは上条の背中に手を突きつけた。
「
ギチリ、と。ずっと押し負けていた上条の足が、不意に止まった。
信じられないほどの力に、足の指が食い込んでいる
「とりあえず、だぁ?」上条は、振り返らない。「ふざけやがって、そんなつまんねえ事はどうでも良い! 理屈も理論もいらねえ、たった一つだけ答えろ魔術師!!」
上条は、息を吸って、
「────テメェは、インデックスを助けたくないのかよ?」
魔術師の吐息が停止した。
「テメェら、ずっと待ってたんだろ? インデックスの記憶を奪わなくても済む、インデックスの敵に回らなくても済む、そんな誰もが笑って誰もが望む最っ高に最っ高な
無理矢理に光の柱を押さえ続ける右手の手首が、グキリと嫌な音を発した。
それでも、上条は
「ずっと待ち焦がれてたんだろ、こんな展開を! 英雄がやってくるまでの場つなぎじゃねえ! 主人公が登場するまでの時間稼ぎじゃねえ!
バキン、と右手の人差し指の
それでも、上条は諦めたくない。
「ずっとずっと主人公になりたかったんだろ! 絵本みてえに映画みてえに、命を
魔術師の声が、消えた。
上条は、絶対に諦めない。その姿に、魔術師達は一体何を見たのか。
「───手を伸ばせば届くんだ。いい加減に始めようぜ、魔術師!」
グキリ、と
不自然な方向に曲がって───折れた───と気づいた瞬間、恐ろしい勢いで襲いかかる光の柱は、ついに上条の右手を
上条の右手が、大きく後ろへ弾かれる。
完全に無防備になった上条の顔面に、
「───Salvare000!!」
光の柱がぶつかる直前、上条は
それは日本語ではない、聞き慣れない言葉。けれど、似たような言葉を──いや、名前を上条は一度だけ聞いた事がある。学生寮で、ステイルと
神裂の持つ、二メートル近い長さの日本刀が大気を引き裂いた。七本の
だが、それはインデックスの体を
インデックスの足元───
まるで巨大な剣を振り回すように、アパートの壁から
引き裂かれた壁や天井は、木片すら残さない。
代わりに、破壊された部分が光の柱と同じく純白の光の羽となった。はらはら、と。どんな効果があるかも分からない光の羽が何十枚と、夏の夜に冬の雪のように舞い散る。
「それは『
神裂の言葉を聞きながら『光の柱』の束縛から逃れた上条は、床に倒れ込んだインデックスの元へ一気に走ろうとする。
だが、それより先にインデックスが首を巡らせた。
巨大な剣を振り回すように、夜空を引き裂いていた『光の柱』が再び振り下ろされる。
また、捕まる!
「─────
と、身構える
人のカタチを取る巨大な火炎は、両手を広げて真正面から『光の柱』の盾となる。
まるで、罪から人を守る十字架の意味そのままに。
「行け、能力者!」ステイルの叫び声が聞こえた。「元々あの子の
上条は一言も答えない。背後を振り返る事もしない。
そんな事をする前に、ぶつかり合う炎と光を
上条は走る。
走る!!
「───警告、第六章第十三節。新たな敵兵を確認。戦闘思考を変更、戦場の検索を開始……完了。現状、最も難度の高い敵兵『上条
ブン!! と『光の柱』ごとインデックスは首を振り回す。
だが、同時に魔女狩りの王も上条の盾になるように動いた。光と炎は互いが互いを
上条は無防備となったインデックスの元へと、一直線に走り寄る。
あと四メートル。
あと三メートル、
あと二メートル!
あと一メートル!!
「ダメです──────上!!」