はたらく魔王さま!SP2
序章 ─ 六人の『あの日』の翌日 ─
「ううむ、聖別食材の残りも、心許なくなってきたな。悪くなっていそうなものも……そろそろ『すうぱあ』に買い出しに行かねばならんか」
鈴乃が対魔王軍用に用いている、聖法気たっぷり聖別食材の残量と消費期限を気にしている頃。
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「でも、真奥さんも凄いけど、学習塾の付き添いするなんて芦屋さんも多才だなぁ……考えてみると、最近私が知り合った人達って、なんか凄い人達ばっかりな気が……」
千穂は、ここ数ヶ月で起こった出来事を反芻して今更ながらとんでもない状況に自分がいることに気づく。
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「大体、なんで僕だけ毎回豚丼なんだよ。同じ豚でも格が違いすぎるだろ。僕だってカツ丼食べたい!」
漆原がその日の夕食に文句を言う頃。
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「貴様はいつから偉そうに夕食に意見できる身になった。せめて何かしら家庭に貢献してから口を開け。カツ丼は私が不在の間、ベルの料理を魔王様の食膳に上げざるを得なかったお詫びも兼ねているのだ」
芦屋はぶつくさ言う漆原に説教をする。
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「それにしても本当に大丈夫なのかしら……結局彼女、魔王城の隣から動いてないのよね」
恵美が夕方のニュースを見ながら、魔王城の隣に引っ越してきて、そのまま魔王達の敵として居座っている鈴乃の動静を懸念している頃。
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「いやー、二日も続けていいもん食うと、口が驕るな。贅沢は敵贅沢は敵っと」
昨夜は千穂が持ってきてくれたウナギをご馳走になり、今日の昼は、芦屋が何を血迷ったか近所の蕎麦屋でカツ丼を食べようなどと言い出し、日本に来てから最も贅沢な食生活を過ごした二日間と言って過言ではなかった。
「ま、頑張って働いてる分ご褒美があってもいいだろうし、たまの贅沢は素敵ってやつだな。その分、頑張って働かないとな」
魔王サタンこと真奥貞夫は、徒歩通勤になってしまったアルバイト先からの帰り道、夜空を見上げながら大きく伸びをした。
「よっし、また今日から頑張ろう!!」