第一章 プリン一個で終わる世界 2
「ふむ」
「女王?」
もうプリンがどうのという次元じゃねえ。食蜂操祈的にも決して相容れる事のないヤツとは白黒つけなくちゃ気が済まないのはひとまず絶対に確定として。
(NTR耐性の低い涙目ふくれっ面女王から洗脳されたおかげでやや視線がぼーっとした)帆風潤子からの質問には答えず、食蜂はくるくると手の中でテレビのリモコンを回す。
食蜂操祈の『
試しにリモコンを足元に向けてみても、やはり何の反応もなかった。本来なら地面にある美琴の足跡から残留思念を読み取って獲物を追跡できるはずなのだが、何故か読み込みが拒否されてしまう。
(……つまり、微弱な電気まで一緒に焼きつけられるから残留思念が壊れるって感じかしら。手紙なんかの個人情報を消し去るために、ランダムな英数字をびっしり並べたスタンプを本文の上から押しつけて読み取り不可にしてしまうアイデアグッズみたいにダゾ☆)
大雑把に予測し、続けて帆風にリモコンを向ける。
『『テメこらどうせアンタが食ったんでしょうがコレ今すぐダッシュで買い直してこいやァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!』』
先ほどのやり取りがそのまま食蜂の脳内で再生された。
こちらでは、美琴の体や音声に変なノイズはかかっていない。
「つまり御坂さん本人については洗脳も読み込みもできないけどぉ、第三者が見たり聞いたりした御坂さんの目撃情報はそのまま残るって訳ねぇ」
「?」
事情が分からずに首を傾げる帆風。
単純なようだが、自分の能力で何ができて何ができないのか把握しておくのは一番の基本だ。いざという時になって致命的にしくじる前に線引きはしっかりしておきたい。逃げる美琴を追うよりこっちが優先だ。
足で走るのはいつだってできる。できるってば。
(他には……)
帆風はこうして洗脳したとして、今他に使える手駒は何か。同じ派閥の部下は山ほどいるが、真っ当なモラルがあったり御坂美琴への根本的な恐怖心があったりすると普通に指示するだけでは手駒としては使いにくい。
やっぱり全員洗脳してしまった方が確実か。
食蜂はリモコンの先を自分のほっそりした顎に当てて、
「口囃子さぁん」
『お傍に』
声は脳内に直接響いた。
相手は食蜂派閥に何人かいる参謀の一人、『
ただし、
「……何で顔を出してくれないのぉ?」
『交戦中で気が立っていそうですし、今正面に立ったら「念のため」で迷わずリモコン洗脳されそうなので。キホン性善説なんて全く信じない人ですからね、うちの女王は』
金髪お嬢が思わず舌打ちした。
バレてる。
『こちらは独自に御坂様の足取りを追い、判明すれば女王にお伝えいたします。一度「接続」してしまえば位置情報は常に辿れる状態になりますからね。軍事行動において重要なのはパワーよりもまずインテリジェンス。どれだけ火力が高くても当たらなくては意味がありません』
「りょーかいダゾ☆」
『それから必要なら、念話で接続したままだんまりを決め込んでいれば御坂様の心の声を盗み聞きする事もできます。彼女の行動パターンを先読みするのに役立つかと』
「そこまではしない方が良いわぁ。彼女、普通力に機械と会話できる二進法の住人だから。無理に心の声を深く聞こうとすると読み込み不能のデータ通信やノイズをもろに喰らって脳みそクラッシュするかもしれないわよぉ?」
黙ったという事は、口囃子早鳥もそれなりにビビったか。
基本ルールはこんな所だ。
御坂美琴に『
帆風潤子は会話に参加してくれるが洗脳状態なので何でもイエス。
仲間は基本的に全員洗脳。仲良しかどうかは関係ない。
「さぁて帆風さん、それじゃ改めて追いかけっこを始めましょうかぁ☆」
「了解しました女王」