第一章 プリン一個で終わる世界 4
御坂美琴は総毛立って叫んでいた。
互いの声が聞こえる距離までは第五位に近づかれた訳だ。
(ったく、能力もその使い方もとことんまで馬が合わないわね!!)
美琴はトラックの屋根に飛び乗ったまま車内電子装置をまとめて乗っ取り、前進させて路地の出入口を封鎖。複数の能力を使ってゴリ押しでトラックをひっくり返される前に地面へ飛び降り、数秒の猶予を確保して美琴はさらに逃げる。磁力を使って壁に足をつけ、そのままビルの屋上まで逃げ切る。そういった小さなアクションを繰り返す事で群がる能力者に呑まれるのだけはギリギリで避けていく。
嘲笑う声が美琴の背中を追ってきた。
「ずーっと逃げているだけで私に勝てると思ってぇ? 誰だって個人の体力なんかいつか切れるんダゾ。御坂さんだけ永久機関を搭載力している訳じゃないものねぇ!」
「アンタがバテるの早すぎるだけなんじゃない運痴?」
「誰よ今アプリ無料ダウンロードくらいのお手軽感覚で私の尊厳力を踏みにじった人ぉ!!」
先を走る美琴が磁力を使って大きく跳ぶ。
『学舎の園』のゲートをそのまま越えた。
「チッ! 外に逃がしたかっ。できればお嬢様エリアの中で始末力をつけたかったんだけどぉ」
食蜂もまた洗脳済みの帆風潤子に米俵からお姫様抱っこに変えてもらいつつゲートを潜る。
その瞬間だった。
バラバララ!! とヘリコプターのローターの騒音が響き渡った。走る美琴と上下で交差する格好で金属の塊がこちらに向かって鋭く飛んできた。
無人制御の攻撃ヘリ『六枚羽』の群れだ。
(外と繋がる緊急ホットラインを使ったのは
目の前の脅威に対して反射でリモコンを空に向けようとして、機械相手では役に立たない事に気づく食蜂。
精神系では最強。
ただし人間以外の動物や機械には全く通じない。
「やばっ!!」
慌てて物陰に逃げようとしてお姫様抱っこの状態なのに派手にジタバタした運痴が自分を抱えてくれる帆風ごと派手にコケ、洗脳済みの縦ロールがクイーンを小脇に抱えて自販機の陰に身を隠す。六本のアームが展開されたと思った直後にドドドガガ!! と機銃の帯が雑居ビルの壁を一本道で抉り飛ばし、自販機をスクラップに変えて、そして食蜂側は何とか一斉射を凌ぐ。だが同じ盾が二回使えるとは思えない。アームから『砲撃』されたらクレーターができる。一回終わって再び狙い直すまでの数秒。ここで食蜂側がリモコンをその辺の一般人に向けると、呼応した複数の能力者がその掌を青空に突きつける。
撃たれる前に落とせば良い。
「っ?」
そこで食蜂が眉をひそめた。
『まー美少女に支配されて戦え言われるんもまた本望かもしれへ、あはー☆』
『ちょっとアンタこの非常時にナニ妄想の世界に逃げ出してんの……ガッ!?』
青髪ピアスだの吹寄制理だの、一〇人くらいそこらの能力者をまとめて洗脳したのに炎や氷を使った反撃が発生しない。掌をかざし、眉間に力を込めているのは見れば分かるのだが、現実にそよ風一つ起きないのだ。
気づいて常盤台のクイーンは舌打ちした。
帆風に命令して手近なトラックの陰に身を隠しながら、
「
「アンタそういうトコあるわよね、高位能力者ばかりで囲った最大派閥の女王なのだから仕方ないかもしれないけど。一言で言って外道」
右を見ても左を見てもハイスペックお嬢だらけだった常盤台や『学舎の園』の内部とは違うのだ。二三〇万人の八割が能力者であっても、しかしその六割が
(……となると顔写真で照合できる能力者のリストが欲しいんダゾ。ひとまず正規ルートで『
「考えている事は大体分かるわ。だけどこっちにそのリストは必要ない、そんなリスクしかないもんいつまでもそのまま残すとでも思ったかッ!!」
ばぢっ!! と美琴の前髪から火花が散った。
ここからでは見えないが、無線のネットワークを経由して『何か』が起きた。どこに本体があるか誰も知らない『