I ―スクワッド・ジャム―
第二章「レンとピトフーイ」 ①
「ねえ! そこのおチビちゃん。あんた、中身は女の子でしょ? 歩き方で分かるよ」
GGOの中央都市《SBCグロッケン》にあるきらびやかなショッピングモールで、次に買うべき
「ちょっとお茶しない? おねーさんがおごるから」
レンは、女の声で、後ろから話しかけられました。ナンパされました。
おねーさん?
顔を
リアルの自分ほどではないが背の高い、
このときの彼女の服装は、ビキニに毛が生えたような、どう見ても
なんでタトゥーが顔だけなのかと不思議に感じながら、また、これが自分のキャラクターだったら
相手が明らかな女性なので、レンは
今あるほとんど
興味本位で話しかけてきた男性プレイヤーはいましたが、女性プレイヤーと話をするのは
そもそもGGOは、
褐色肌の美女が、にっこりと
「私は〝ピトフーイ〟。みんな呼びにくいってブーブー言うから、略して〝ピト〟でいいよ。おチビちゃん、お名前は?」
「こんにちは……。〝レン〟……、です」
「レンちゃんか!
それが、レンがGGO内で
レンは、ピトフーイと
ここしばらく、教授と家族以外とは直接の会話をしていない
二人はまず、お
セクシーなキャラになってしまったピトフーイは、顔面タトゥーを入れるとナンパが激減したと告げて、レンにも
レンが首を素早く横に
「私もリアルでは入れてないよー。温泉入れなくなっちゃうからね!」
ピトフーイはそう言って、優しげな笑顔を見せました。
もっともGGO内でのタトゥーは入れるのも消すのも
そんなピトフーイのVRゲーム歴はレンよりずっと長く、それこそSAOのデスゲーム
そしてGGOは、8ヶ月前のサービス開始時から。他のVRゲームにない
ゲーマーとしても
会話によって打ち解けることができたので、レンはピトフーイを《フレンド》として登録しました。これによって、ゲーム中でもそうでなくても、メッセージのやりとりができます。
GGOを始めてから3ヶ月以上、レンは、ゲームの中での知り合いを、やっと一人見つけることができました。そういえば、長身コンプレックスで
もちろんレンには、現実世界のピトフーイがどんな人間か、まったく分かりません。
かつて美優は、こう教えてくれました。
「VRゲームの中だって、キャラクターを動かしているのはリアルな人間なんだから、会話や仕草で、その人となりは
ピトフーイの態度は陽気で、
そこでレンは勝手に〝気のいいお姉さんタイプの二十代女性。社会人。独身〟などとプロファイリングしてみましたが、あっているかなど分かりません。
お茶とケーキをごちそうになったあと、今日はもう〝落ちる〟、つまり現実世界に
「なんだ! それなら任せなさい! いい店教えてあげる!」
ピトフーイは、自分の知っている小さな店に連れて行ってくれました。
しかしそこには、他のプレイヤーが
「すごい……。こんな店もあるんだ……。こんな銃もあるんだ……」
目移りしていたレンに向けて、
「レンちゃんレンちゃん! これ、オススメだよ! 昨日入荷したばかりだって! こっち来て! 見て!」
ピトフーイが、新しい
そして、そこにあったのが、小型で高性能、そしてそこそこレアな銃──、P90でした。
そのプライスタグに並ぶ数字の
「買いますっ!」
一目見ての
「何これ……、本当に銃なの……。かわいい……。なまらかわいい……」
心の声が
「おっ? レンちゃん
予備マガジンと、それを収めるマガジンポーチをオマケしてもらい、ほくほく顔の買い物のあと、レンはP90を
ちょっと手を
「分かるよー。買った銃は、しばらく
「名前はどうする? 付けるでしょ?」
「な、名前? 銃にですか?」
レンはピトフーイの顔を見上げました。
「もちろん!」
「そ、そんなことは──、します!」
「でしょー。で、その子のお名前は?」
数秒の
「〝ピーちゃん〟」
「うむ、いい名だ。ピーちゃんには、レンちゃんの手で、たくさんの敵の血をたっぷりと吸わせてあげるんだよ。
「うん! わたし、
現実世界でこれを話していたら、まず通報されていたことでしょう。
そろそろ、そのリアルワールドに
「ありがとうございます、ピトさん。本当にお世話になりました」