I ―スクワッド・ジャム―
第二章「レンとピトフーイ」 ③
あるとき、
「ピトさん、
ついうっかり、見合いの席のようなことを聞いてしまいました。
「ん? ……うーん、このゲーム以外? ないわー」
ピトフーイからは、そんな答え。
聴いてしまった以上は自分のことを言わねばと──、
レンは自分の趣味である音楽
「音楽かあ……。私はほとんど聞かないなあ」
「そうなの? 意外……」
レンが正直にそう言うと、
「そう?」
意外そうな顔をしてピトフーイが答えました。
「なんかわたし、勝手にだけど、ピトさんは音楽好きに思ってた」
「ふっ、
「…………。いや、ごめん。リアルの話はここまでで」
レンが謝りつつ会話を打ち切ろうとすると、意外なことに、ピトフーイの方から、
「まあ、レンちゃんとは結構仲良くなったから、リアルでも会って、正体教えるのもアリかもしれないなって思うこともあるよ。いわゆるオフ会ってやつね。レンちゃんの方は? その
レンは、べらぼうに背の高いリアルの自分を思い、数秒考え、
「多分……、ピトさん……、ビックリすると思いますよ……」
敬語で答えました。
「じゃあ、こうしよう! いつか、レンちゃんが私と真っ向勝負をして、勝つことができたらリアルで会おっか!
どうしてそういう話になるのかは
「わたしがGGO内でピトさんを
「じゃあ約束してあげる! それまでGGO内で
「わ──、分かりました! いや、分かった! いつか、絶対に、ピトさんを、倒す!」
「うん、いい返事だ。じゃあ、
「きんちょう?」
「誓いの
「ピトさん……。リアルは百七十
「まだ
そして二人は、
そのとき、笑顔のピトフーイが何を考えているかは分かりませんでしたけど、レンはこう思っていました。
無理だろうなあ、そんな日は絶対に来ないだろうなあ、と。
その約束からおよそ1月後の、2026年1月18日。
レンはスクワッド・ジャムの話を聞くのです。