I ―スクワッド・ジャム―
第三章「スクワッド・ジャム」 ①
「スクワッド・ジャムってのは、この《ガンゲイル・オンライン》の中で、〝少数チームを組んでバトルロイヤルをやろう〟って大会なのよ」
「バトルロイヤル……? みんなで
もちろん、他のプレイヤーから
「そう。レンちゃん、《バレット・オブ・バレッツ》は知ってる? みんなBoBって呼ぶけど」
レンは
「名前と
BoBとは、GGO内での最強プレイヤーを決める、バトルロイヤル大会のことです。一対一の予選トーナメントを勝ち
つい最近、その第三回大会が終わったばかり。
もちろん、参加など当然考えていないレンでしたので、どんなバトルだったのかは知りません。その日は姉家族と食事に出かけていたので、ダイブもしませんでしたし、
「その前回の第三回BoBだけど、まあ、私も参加してたんだ。リアルの用事で参加できない可能性もあったから、誰にも言ってなかったんだけど」
「へー! どうだった?」
「予選落ち。それも二回戦でね」
「あら……。残念」
「まー、
「そんなこともあるんだ」
「この先ひょっとして録画を見るかもしれないからこれ以上のネタバレは防ぐけど、最後までハラハラドキドキで、見ていて
「へえ」
ピトフーイが
「で、ここからが本題。──そのBoB中継を見ていたとある日本人が、鼻息
「ふむふむ」
「その人は、アメリカ合衆国にあるGGO運営団体の《ザスカー》にログイン中に英文メッセージを送りつけた。『
「まさか、そんな個人の要望が許可されたの?」
「そーなのよ。その人はザスカーに、開催に必要な費用は自分が出します、つまり大会のスポンサーになりますって
「はあ……。
「まあ、ガンマニアってだけで十分
「ピトさん……、世界中の作家さんに何か激しい
「ん? 別に? ──その作家さんの熱意が実ったのか、単にペイすると思ったのか、ザスカーも〝じゃあ日本サーバーだけで、個人協賛のミニ大会として開催します〟ってことになったのよ。その大会名がスクワッド・ジャム、略してSJ。その人の命名らしいから、英語としてあっているのかは分からないけど」
「なるほど。イカの
「まだ言うか。──SJは参加者、いや、参加チームを募集中でね、28日、つまり来週の水曜日昼が募集
「ずいぶん急だね……。人、集まるのかなあ?」
「今のところ、
「ふーん」
「なんか、興味なさげだね? レンちゃん」
「だって──、BoBもそうだけど、対人
「暗殺者みたいなえげつなーいPKやっておいてよく言う」
「あ、あれは! ──その……、うん」
「うん、あれはよくやった! ──でね、ここからが本題だけど」
「はあ……」
「レンちゃん、SJに出て!」
「はい? わたしが? ピトさんと組んで?」
「いや、すっごくすっごく残念だけど、私はダメなんだ。2月1日は……、中学以来の親友の
「うん、リアルで殺されるね」
「でしょ?」
「つまりその日に、日本中の結婚式参列者の女性を
「ひゃあ見つかる! ──それはさておきね、レンちゃんには
「手帳見ないと断言できないけど、多分、なかった、気がする……」
「じゃあ参加! 手続きはやっとくから! チーム登録だから名前があればオッケーだし」
「ちょ、ちょっと待って! どうしてそうなるの?」
「何事も経験だよ!」
「だって、チーム戦なんでしょ? わたし、
「お、やる気が出てきたね。いいことだ」
「聞いただけ!」
「私の知ってるプレイヤーで、強いのがいるのよ。男だけど、まあ、変なヤツだけど、ぶっちゃけ頭の中はほとんど犯罪者だけど、悪いヤツじゃないから。いいヤツでもないけどね。そいつとコンビ組んでよろしく!」
「え? 二人だけ?」
「うん。二人だけ。他に都合がつかなかったからさー」
「…………。ピトさーん、それでわたしが『わあい! 分かりました!』って言うと思う?」
「何事も経験だよ!」
「いや、その……」
「ねえレンちゃん。私が思うに、レンちゃんはリアルでいろいろ抱えてるでしょ?」
「えっ?」
タトゥーだらけですが、まるで優しい心理カウンセラーのような顔を見せると、
「リアルで、何かこう、
「…………」
「〝なんで分かるの?〟って顔してるけど、簡単に分かるよ。──だって、私がそうだもん!」
「…………」
「私は現実で
「ピトさん……」
「だからね、どうせ現実にできないことをやるんなら、思い切ってやろうぜ! って言いたいのさ! チームバトルロイヤルの
ぶるぶると首を横に
そして、
「だから、暴れようぜ! 水曜日の朝までになんも返事がなかったら、参加ってことにするね!」