I ―スクワッド・ジャム―

第三章「スクワッド・ジャム」 ④

 もっとも、常時通話ですと全ての声が常に聞こえるので、仲間の人数が増えると、うるさいことこの上ありません。このあたりのせんたくは好みですが、二人だけならば常時通話の方が楽でしょう。

 次の大きなちがいとして、

『SJでは死体は10分後に消えて、プレイヤーは酒場にもどってこられる』

「まあ、これはBoBみたいにシビアな大会じゃないからでしょうね。かけで大金が動くBoBだとね、万が一の情報れを防ぐために、優勝者が決まるまで、意識が死体といつしよに待機させられちゃうのよ」

「ふむふむ。SJならすぐに死んでも、大会終了まで待たなくていいのね」

「すぐに死んだら許さないよー?」

「はっ! 死ぬ気で戦います!」

「よろしい」


 サテライト・スキャンの時間も、へんこうになっています。


『BoBでは15分だったサテライト・スキャンかんかくが、10分に短縮されている』

「これは、大会時間を短くしたいからだね。BoBがいつもだいたい2時間くらいで決着が付いているけど、それよりは、間違いなくかからないね。日曜日の14時から開始して……、ひょっとしたら1時間以内で終わっちゃうかも」

「そんな早く?」

「私のけいがんではね」

「自分で言うかな……?」

「まあいいじゃん。だから、この大会で1時間以上生き残ったら、それだけでたいしたものよ」

「そっか。チーム参加だから、すぐに派手なち合いになるかもしれないのか……」

「そうねー。ゲーム開始直後は敵は最低でも一キロはなれているけど、全力ダッシュされたらすぐにきよめられるから気をかないでね。見通しがいいところなら、800メートルでげきじゆうたまが、600メートルでマシンガンの弾が飛んでくるよ。──ま、そのへんは実際に一緒に戦うヤツに任せるけど」


 まだとうちやくしない、レンの知らない相棒についてれた後、ピトフーイは、


「で、ここからが多分一番重要なSJのルール! はいここテストに出るよ!」


 そう言いながら、画面を指さしました。そこに書いてあったのは、やはり要約すると、

『サテライト・スキャンで表示されるのは、スクワッド・リーダー(分隊長)の位置のみとする。また、BoBでは光点に触れるとプレイヤーの名前が出たが、今回はチーム名を表示しない』

「どういうこと?」

「チームは最大六人だけど、全員を表示したら、画面がにぎやかすぎてワケわかんなくなっちゃうでしょ」

「なるほど……」

「だから、リーダーがいる場所だけが表示される。これがどういう意味を持つでしょう? はい、レンちゃん」


 ピトフーイ先生の指名に、レンは数秒考えてから答えます。


「他のチームメンバーがどこかにひそんでいても、目視するまでは分からない……。リーダーの位置は、むしろ相手を引き寄せるためのわなに使える……」

「そう! さすがはありごくのようなトラップろうのレンちゃん! 理解が早い!」

「いや、それは忘れて……」

めたのに! あの、人を人とも思わないようしやのないこうげき! しびれるわー!」

「話もどすよ? ──じゃあ、個人戦のBoBとは、サテライト・スキャンの意味がだいぶ変わってくるね」

「そういうこと。ただし、あんまりチームがバラバラになると、それだけで不利になるからね」

「分かった……。先生質問!」

「はいレン君」

「そのリーダーが死んだら……、どうなるの? ──そのしゆんかん、そのチームの負け?」

「いや、それじゃみんなが楽しめないでしょ? 場所が判明しているリーダーがげきで一発死亡ってこともあるだろうし。だからその場合、実際の戦争と同じことになるだけ」

「というと?」

「軍隊ではね、隊長が戦死したら、次に階級の高い人が、同じ階級なら先になった人が、けんを引きぐの。つまりSJでは、チーム内順位をしんせいしておいて、二位、三位って自動的にり下がっていく」

「なるほど。じゃあ、二人だけのわたし達チームは、そのへんなやむ必要はないね。それにしても、本当に二人でやるんだ……」

「おうよ。がんばってねー。二人だけで優勝したらかっこいいじゃん」

「はあ」

「他にも、〝降参できるのはゆいいつリーダーだけで、その場合はチーム全体が降参になる〟ってルールもあるけど、まあこれもレンちゃん達にはあんまり関係ないね。人数が減って本当に勝ち目がなくなったら、さっさと退場していいよって意味」

「ふむふむ」


 レンは残り少ないアイスティーを飲みきるため、ストローをくわえて吸い始めました。そして、


「ルールは以上ね。レン分隊長殿どの


 その言葉に、中身をき出すかと思いました。何とか飲み込むと、目を丸くしながら、


「へ? は? ふ?」

「ハ行の発音練習?」

ちがいます! ──わたしがリーダー? なんで? 組むって人が、わたしより、弱いんですか?」

「敬語になってるよー。違う違う。もちろんヤツは強いプレイヤーよん」

「じゃ、なんで……?」


 小さな顔中にもんかべるレンに、顔中タトゥーのピトフーイは答えます。


「ひみつー! ま、作戦のうちよ」

「…………」


 レンはそれ以上何も言えなくなって、個室はすっと静かになりました。

 そして、


「悪い。おくれた」


 野太い男の声が聞こえ、きよだいな男が入ってきました。

刊行シリーズ

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