I ―スクワッド・ジャム―
第六章「戦闘開始」 ④
相手の位置が分からない状態では、バレット・ラインが発生しません。いきなり撃ってきて一発
「いないよー」
「簡単に見つかるような場所にはいないさ。銃や身を出して撃つのは、スナイパー失格だ」
エムからは、
「わずか六人しかいないチームを分割するのは、勇気のある作戦だ。
敵を評価する言葉も。
「あの二人、もうすぐやられるぞ」
エムの言葉に、まだスナイパーを探していたレンは、二人に視界を
覆面の四人はマシンガンの二人から50メートルまで近づいていて、なおかつ瓦礫の山を
それにまったく気付いていない二人は、
「ここから
「でも、顔を出したら撃たれるぞ!」
そんなでしょうか? レンは想像しました。
レンが見守る中で、わずか20メートル、一つ手前の瓦礫の山まで接近した四人は、
先頭の一人が、
マシンガンの二人は
外れる
「あーあ……」
レンのため息が、二人のキャラクターの戦死、またはSJからの退場を
レンが時間を見ると、14時14分でした。
あれからたった4分かと、レンは
スキャンまでまだ6分あります。今ならあの四人の位置はほとんど丸見えで、しかも向こうはこっちを認識していません。チャンスです。
「エムさん、やっちゃいなよ!」
レンは、
「だめだ。一人だけなら
むう、とレンは心の中で
「それより、連中の様子をもうちょっと観察したい」
ここはエムの言葉に従うことにしました。少なくともあと5分少々は、この場で安全に観察ができるのは確かです。
単眼鏡に視線を戻すと、四人の姿は消えていました。もうどこにも見えません。手際よく撤退したのでしょう。
それから30秒が過ぎて、
「いた」
エムの声。
「レン。
指示通りのビルを探してズームすると、
「あっ! いたっ!」
そこには、探していた
どうするんだろう? と思ったレンに、こうするんだよ、と言わんばかりに彼は、地面に向けて長いロープを放り投げました。
そして、すぐさまそのロープを体の前にして
「なにあれ? すごい!」
レンが、
「ラペリングだよ。ロープによる
「へー。
「連中は、ちょっと
「ん?」
「GGO内のラペリングスキルでは、あそこまで素早い降下はできない。やったことがあるから分かる」
エムの返答に、レンは首をかしげて、
「じゃあ、あの人達はどうやったの?」
「あれは、プレイヤーの持っている能力だ」
「プレイヤーの能力? どういうこと?」
エムの言ったことがすぐに分からず、レンは彼に顔を向けて聞き返していました。M14・EBRを構えてスコープを
「つまり、GGOを遊んでいる人間が、リアルであれができる、ということだ」
「あ、なるほど! 前にピトさんに聞いた話を思い出した!」
GGOを
一つは──、キャラクターができること。
つまり、経験値との
GGOなら、高性能の
スキルにもレベルがあるので、上げれば上げるほど成功率が高くなったり、より早くできたり、より高度にできたりするのです。
そしてもう一つが──、スキルを持ってなくても、プレイヤーがリアルでできることです。
元々プレイヤーがリアルでもできることは、スキルを取らなくても可能です。アミュスフィアによる神経伝達によって、体が動くからです。
一方、リアルで書を
当然ですが、スキルによってできることは、あくまでゲームの中でのこと。
書道スキルを手に入れたからといって、現実世界で美しい文字が書けるようになるなんてことは基本的にはありません。
「つまり、ロープでスイスイ降りるのも、らぺ……、なんだっけ?」
「ラペリング」
「そうそれ。あの人達はリアルで
素直に感心して、のんきに言ったレンですが、
「だったらよかったんだがな」
エムの言葉は、ずいぶんと重く聞こえました。
単眼鏡に目を
「エムさん、その口ぶりだと、あの人達のリアルが分かってるようだよ?」
「予想だけどな」
「すると?」
予想の予想がまったくつかないので、レンは素直に
左耳に返ってきた答えは、
「
「プロ? はい?」
意味が分からず、四人が見えなくなったので単眼鏡を目から外してエムを見ると、エムもこっちを見ていました。
その口が動きます。
「文字通り、〝戦うことでお金をもらっている人達〟だ。あの六人は──、警察もしくは海上保安庁の