ほうかごがかり 3

十話 ⑫

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 ――――――――――――!!


 と、そのすずが、音を立てる。

 だいおんじようたそがれひびきわたる。それは夕刻に学校の終わりを告げるチャイムか、あるいは子供の帰宅をうながす自治体の放送を、ふるく時代をもどしながら悪意をもって化したかのようで、あまりにも、そしてあまりにも


「――――――」


 理解した。

 これは、神の世界だと。

 自分は何も分かっていなかった。化け物を、学校を、『ほうかご』を完全にいたつもりでいた。キャンバスに写しとったつもりでいた。だがそんなものはうすかわだった。現代の世界をしんろうのように映して、子供たちを迷わせる、表層に過ぎなかったのだ。


 がり、


 とくつの下で、硬い音が鳴った。

 白い道に立っていた。たまじやいたような、白い道に。

 道は赤い鳥居をして彼方かなたまで、黒い広大な森をつらぬいて、はるかなるさんりようへと向かって延々と続いていた。けいはそこに立っていた。そしてそんな道の、わたす限りの一面にかれていたのは、たまじやなどではなかった。


 小さなどくと目が合った。


 骨だった。頭の骨。足の骨。うでの骨。こしの骨。胸の骨。指の骨。頸の骨に、背中の骨。

 けいの立っていた道は、全て余さず、子供の骨によってそうされていた。とうてい数えきれないほどの、白い子供の骨によって、森の彼方かなた、山の腹の中の、神の座までの道が、真っ白に整えられていた。

 鳥居にるされた、死体がれる。

 首にくくられた大きなすずが、


 がらァ――――――――ン、

 がらぁ――――――――――――ん!


 とひびく。

 そして、道の彼方かなたから、


 がらぁ――――――――ん、

 がらぁ――――――――――――ん、


 とすずの音。

 そして次のすずが鳴る。だんだんと遠く、小さくなりながら、はる彼方かなたへと続く道の、見えないほどの遠くから、遠いすずの音が、赤い空の下、次へ、次へと続いてゆく。


「あ……」


 ぼうぜんと、くした。

 きようで、おそれで、足が一歩も動かなかった。

 それは無限へのきようだった。無限のきよへのきようだった。あまりにも広大なこの世界は。ただ無限に死んでいる、子供の骨以外に何もなく、ただ太古から子供の命を延々と延々とらい続けただけの、本当にただの、があるだけの世界だった。


 全ての『』は、此処ここより出ず。


 無限のの中に、ただ子供の死で、道がかれて。

 帰れず、げる場所も、向かう場所もない。

 その中に、たった一人、放り出されて――――――



「――――――――――――――――――ッ!!」



 けいのどから、破れんばかりのきようの悲鳴が上がった。

 だがそれも、無限の森の中に、無限のの中に、無限の夕焼けの中に、ただただ拡散していっただけだった。


 四時四四分四四秒。

 チャイムは、聞こえてこなかった。

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