二章 初心者育成伝 ⑥
◆猫姫:二人はこんな所でなにをしてるのにゃ?
◆アコ:私達はデートをしてます
猫姫さんに躊躇いなく言い放つアコ。恥とかないのかお前。
◆ルシアン:俺達はその、ちょっと散歩……みたいなことです。猫姫さんは?
◆猫姫:あー、えっと、その、にゃんというのかにゃ
言い難そうに口ごもる。普通にここで集まってたんじゃないのか?
と、さらに集団から一人が抜け出し、ぶんっと大きく剣を振った。
◆†クラウド†:なんだ貴様らー!
えっと……なんだろ、あれ。変な人が怒鳴ってんだけど、何で?
◆†クラウド†:猫姫様が困ってるだろ! 何を言った!
そうだそうだー、と声が上がる。
なにこの……ええと、なに? どういう状況?
◆ルシアン:いや、何もしてないけど……猫姫さん? そこの人達は?
◆猫姫:えっと、昔所属してたギルドの人達なのにゃ。ばらばらになってたのをたまたま皆で集まれるように紹介したんにゃけど……
◆†クラウド†:我々はギルド。猫姫様親衛隊! 俺達が居る限り猫姫様には指一本触れさせないからな!
◆ルシアン:あ、すいません、帰りますね
事情は全てわかった。全てわかった。
ここは何も見なかったことにして去ろう。それがいい。
君子危うきに近寄らず、李下に冠を正さず、三十六計逃げるにしかずだ。
◆猫姫:待つのにゃ、ルシアン! 違うのにゃ! 皆はただ悪ふざけをしてるだけなのにゃ! 本当に昔のギルドメンバーが集まって懐かしい話を──
◆ルシアン:行くぞ、アコ。猫姫さんはもう遠い存在になった
◆アコ:はい。……ルシアンはずっと私と一緒に居て下さいね
◆ルシアン:ああ、ずっと一緒だ
◆猫姫:誤解なのにゃああああああ
候補三、断念。新興宗教猫姫教の拠点になっていた。
◆ルシアン:これで考えていた候補地の全てが駄目だったわけだ。残念だな
◆アコ:仕方ないです、どこでも人は居ますよね
そうなんだよなあ。街の適当な場所にキャラクターを棒立ちにしておくのが嫌だ、って考える人は、大抵どこかに居場所を求める。人気のある街はすぐに人で埋まるんだよ。
そして俺とアコがいつもの喫茶店に戻ると、
◆セッテ:遅かったね
◆ルシアン:ああ……うん……
◆アコ:え、えへへ……
当たり前の様に俺達を待っていたセッテさんに、俺達はがっくりとうなだれた。



