三章 コラボ戦記 ⑨
◆ルシアン(仮):意外とまともだ
テンプレで返ってくるかと思ったのに、割とマジで対応してる感じがある。
◆アプリコット:コラボ先の兼ね合いもある。おざなりな対応はできないだろう
◆ルシアン(仮):これならちょっと期待できるかな?
意外となんとかしてくれるかな、と微かな希望を持った。
夏休みはずっと居る、なんて言ってたアコは、今日はログインしてない。
あいつの為にも何とか少しでも状況が改善してくれればいいんだけど。
──と、画面の下部でチャットメッセージが光った。
◆†黒の魔術師†:ルシアン、少し良くない情報を見つけてしまったので連絡したい
頼れる†黒の魔術師†さんからの連絡だった。
◆ルシアン(仮):はい、なんです?
これ以上悪い情報があるもんか。
何でもこい。
◆†黒の魔術師†:このURLを見てくれるか
◆ルシアン(仮):ええと……
開いてみると、どこにでもありそうなブログだった。
ただそのタイトルは、
LONのLA詐欺ブログ
◆ルシアン(仮):なんですかこのふざけたタイトル
◆†黒の魔術師†:それがふざけているわけでもないんだ。あらゆるゲームであらゆる詐欺行為をする有名な詐欺師のブログでね
有名詐欺師……?
え、ってことは、まさか。
嫌な予感がして記事を見てみると、そこには見覚えのあるスクリーンショットと共に日記が書かれていた。
今回はオフラインまで使った面倒な詐欺にトライ。
コラボホテルにまで出向いて、バレなさそうな場所のPCで、とあるURLを事前に開いておく。マルウェアもスパイウェアも仕込んでない。公開されたPCで、特定URLを開いて置いただけだ。俺は何も悪いことはしてない。使った奴が悪い。
やられた俺にはよくわかる。あのPCだ。
何が俺は悪くないだこの野郎。
あっさり引っかかったお馬鹿さんを即ハック。
なんと嫁とチャH直前w
ホテル内のアコの部屋のSSがそのまま掲載されていた。
が、すぐバレるw
怪しむアコ。
そしてルシアンはそんなこと言わない! と言い切られたSSも。
さっさとアイテムを頂いて逃亡。
すぐに凍結されたので収入は少ない上に、ふしだらな行為を防ぐという正義の行いをしてしまったので全く俺らしくない。
無警戒にコラボなんぞに浮かれる奴らに、次回はしっかりとわからせていく。
◆ルシアン(仮):……なんですか、これ
◆†黒の魔術師†:見た通り、かな
そいつが俺のアカウントに入り込む所から偽物だとバレる所まで、全部が面白おかしく書いてある。
しかもなんだ正義の行いって。
本っ当にクソ野郎じゃねえか。
◆ルシアン(仮):そういえば俺のアイテム売ってた奴も、名前が……
◆†黒の魔術師†:ロン、という商人だったね
隠す気ねえなこいつ!
どんだけ目立ちたがりな詐欺師だよ!
◆†黒の魔術師†:このブログのURLはこちらから運営に送ってある。君の方からも送っておくといいよ
◆ルシアン(仮):ありがとうございます
教えてもらえなかったらこんなのを野放しにしていたのか。くっそ。
今使っているサブのアカウントで、このブログを運営に報告しておく。
報告したからどうなるってわけでもないけど──。
◆シュヴァイン:どうした、ルシアン?
◆ルシアン(仮):ええと……ちょっとこれ見てくれるか
二人にブログのURLを伝える。
しばしの後、シュヴァインが叫んだ。
◆シュヴァイン:なんだこれは
◆ルシアン(仮):見た通りだよ
◆シュヴァイン:ざけんな……ざっけんじゃねえぞこの※※※野郎! ※※※※磨り潰して※※※にしてやんぞマジで※※※※だな!
◆ルシアン(仮):おい、伏字伏字
怒ってくれるのは嬉しいけど、それだと全然ピンとこないから。
◆アプリコット:……ギルドマスターとしては、あまりふしだらな行為はだな
◆ルシアン(仮):やってねえから!
触れてくるのそこか!?
◆アプリコット:当然冗句だ。調子が出てきたな
頼むよ、本当に。
さて、後は露店を監視するぐらいしかやることがない。
しかも買い戻す金もないし……どうするかな。
こうなったらこいつのブログを隅から隅まで漁って──
◆GM01 Nyack:こんにちは
───おおう?
◆ルシアン(仮):へ?
◆アプリコット:今度はどうした
◆ルシアン(仮):なんか画面の上に誰かからのチャットが……
まるで割り込みをかけてきたみたいに、金色のチャット文字が画面に出てきた。
これは、えっと、え、あれか?
◆ルシアン(仮):GMさん?
◆GM01 Nyack:はい、GM01ニャックです
よくわからんけどニャックさんらしい。
それでどうしたんだ、と思った次の瞬間。
◆シュヴァイン:な、なにか出てきたぞ!
何もなかった所ににょきっとキャラがわいた!
すげえ、完璧に法則とか無視だ。これがGMか。
しかしいきなりGMって言われても、ええと、なんだ、どうしたっていうんだ。
◆GM01 Nyack:今回のアカウントハッキング被害について、運営サイドで確認をさせて頂きました。つきましては、ハッキング行為をしたと通報のあったプレイヤーについて報告をさせていただきます
◆ルシアン(仮):あ、はい
あのアコの杖と俺の装備売ってた奴か!
そうなんだよ、あいつが俺のアカウントに入ったLONとかいう奴なんだよ!
どうなるんだ、永久BANか?
一時的なBANとかだったら腹立つぞ。
◆GM01 Nyack:通報のあったキャラクターに不正行為は確認されませんでした
◆ルシアン(仮):……はい?
確認できなかった、ですと?
◆アプリコット:それは具体的に、どういうことでしょうか?
◆GM01 Nyack:詳細についてはお答えできません。通報の内容は受理できませんでした、ということをお伝えさせていただきます
お役所的な対応だな!
わかるけど、情報さらせないのはわかるけど!
◆ルシアン(仮):察するに、アイテムを売っているプレイヤーと、アカウントへの接続IPが違った、とかかな
◆GM01 Nyack:お答えできません
そう言いながらも、ニャックさんは沈痛な顔のエモを浮かべた。
ああ、なんかわかる、多分そうなんだろう。
◆シュヴァイン:そこまでの人間が、実際にやる時に家からやるはずがないってわけ
◆アプリコット:サーバーログからアイテムの追跡などは?
◆GM01 Nyack:技術的な問題もあり、難しい状態です
◆ルシアン(仮):くっそ……
八方塞がりか。
こいつがやったってわかってるのに、証拠がないと何もできないのか。
◆GM01 Nyack:憤りは本当に理解しています
◆GM01 Nyack:今回の不正行為被害は、ホテル内で接続せざるを得ないというイベント上のことで、進行に大きな問題がありました
◆GM01 Nyack:件のブログも確認しています
◆GM01 Nyack:こちらとしてもできる限りの対応を行いたいと思っていますが、どうしても限界がある点をお詫びいたします
◆ルシアン(仮):はい……
なんか意外と話が通じそうなGMさんだった。
GMなんてプレイヤーのふりをしてレア武器を超強化して全鯖に自慢のアナウンス流すような人か、知り合いのプレイヤーに増殖アイテム配るような人ばっかりかと思ってた。
しかしGMさんがまともであっても、捕まえるには証拠がない。
IPで接続先を確認できるのは警察ぐらいだけど、通報するかは運営側の判断だ。現状では俺が噓吐いてるのと区別がつかないと思う。
◆アプリコット:このままRMTで現金にされて終わり、か
マスターが苦々しげに言う。



