三章 ファイナルチャレンジャーⅩⅣ 新生アレイキャッツ ①
◆ルシアン:というわけなので、よろしくお願いします
◆猫姫:にゃんでにゃのにゃ!? どうすればいいのにゃ!?
◆ルシアン:そこは猫姫さんに任せます。とにかく何とかしてください
◆猫姫:丸投げにゃのにゃあああああ
猫姫さんが愕然としたエモーションをとるけど、俺は知ったことではありません。
◆アプリコット:そ、それでいいのかルシアン
◆ルシアン:良いんだよ。自分にできないことは他人に頼む! 無理なことは無理なんだから仕方がない!
◆アプリコット:そういうものか……?
大体さ、猫姫さんならどうにでもなるんだから。
この日、俺はマスターを連れて猫姫親衛隊の所に来ていた。
このギルドは戦闘の目的が特殊過ぎて傭兵には向かない、とマスターは判断したらしいが、金銭的な利害じゃなく普通に話を通す分にはこんなに楽な所はない。
交渉役の†クラウド†氏はなんとも言えない表情で言う。
◆†クラウド†:猫姫様が頼むなら参加してもいいが、俺達にそれで利益があるのか?
◆ルシアン:猫姫さんが猫姫親衛隊ギルドに入ってくれるって
◆†クラウド†:マジでか!?
†クラウド†氏の頭上にすごい数のハートマークが出た!
◆†クラウド†:よし、お前達も聞いたな! これより我ら猫姫親衛隊、アレイキャッツの指揮下に入る!
◆猫姫:待つのにゃ、言ってにゃいのにゃ! 入るにゃんて認めてにゃいのにゃ!
◆猫姫:猫姫さんが猫姫親衛隊に入ってるって見た目が痛々しすぎると思わにゃいのかにゃ!?
◆†クラウド†:それもまた女神
◆猫姫:話が通じにゃいいいいいい
◆ルシアン:これで問題なし、と
◆アプリコット:これで良いのだろうか
◆ルシアン:いーんだよ。実際にはみんなで遊ぶのに理由を求めてるだけなんだから
勝ったら猫姫さんがギルドに入ってくれるから頑張ろうぜ! ぐらいで十分なの。
人を動かすのに大金はいらないの。
特にネトゲではね。
◆ルシアン:細かい打ち合わせは猫姫さんに一任しよう。んじゃ次ね
◆†黒の魔術師†:同盟、かい
◆アプリコット:うむ
◆ルシアン:そうです。今週の攻城戦だけはどうしても勝ちたいんです
◆†黒の魔術師†:うーん……
次に来たのは頼れる†黒の魔術師†さんの所だ。
何としても彼のギルドとは話をつけておきたい。
猫姫親衛隊のみんなは確かに強いんだけど、大手の対人ギルド相手に正面から戦える戦力じゃない。
中小ギルドが相手でも防衛戦はキツイってレベルで、前回もあっさり取り返されていた。
しかもガチ対人ギルドじゃないから、日曜の昼間は普通に出かけてる人も居たりして、どれぐらいの人数が揃うかも安定してない。
まだまだ俺達の勝ち目は高いと言えないのだ。
◆†黒の魔術師†:僕達『TMW』も決して楽な戦いをしてるわけじゃない。大要塞グランベルグを抑える『門閥貴族』に苦戦を強いられてる。悪いけど君達に援軍を出す余力はない
◆ルシアン:攻めてこないって約束をしてもらえるならそれで十分です
流石に援軍を出せとまで大きく出るつもりはない。
不可侵を結んでます! って大きくアピールすれば、それで十分に抑止力だ。
こことだけ条約を結ぶってのは、つまり傘下に入るのと同じなんだから。
◆†黒の魔術師†:それにしても、戦力差が大きい。君達は確か四人のギルドだろ?
◆ルシアン:いえ、猫姫親衛隊が傘下に入りました
◆猫姫:お願いしますにゃ
◆†黒の魔術師†:よしわかった、結ぼう
◆猫姫:にゃっ!?
即答された。
周りのギルドメンバーと相談すらなかった。
◆†黒の魔術師†:あなたの所は敵にまわしたくないですから
にっこり笑って言われたんだけど、猫姫さんが毛を逆立てて怯えてる。
◆ルシアン:いやー、猫姫親衛隊無駄に有名だな!
◆猫姫:私のギルドじゃにゃいのにゃ……風評被害なのにゃ……
お陰で助かりますよ?
◆アプリコット:ではギルド『TMW』と我々アレイキャッツは不可侵ということで良いだろうか
◆†黒の魔術師†:うん、それで良いよ。じゃあ条約の締結に入ろうか
締結に入る……と言いますと?
◆ルシアン:不可侵ですよー、じゃ駄目なんですか?
◆†黒の魔術師†:当たり前だろう!
言い切られた。
そこまではっきり言われると自分が大変な間違いをしたような気分になる。
◆†黒の魔術師†:まずはこのホームページを開いてくれ
なにやらURLが送られてきました。
コピーして開くと、黒の魔術師さんのギルド『TMW』のホームページが。
◆†黒の魔術師†:ここにIDとパスを入れて、同盟メンバーでログインして欲しい。そしたら下の方に条約の全文がある。確認の上で署名してくれ
◆ルシアン:……条約?
◆†黒の魔術師†:口約束じゃ怖いだろう?
そう言われましても、そもそもネトゲで契約もなにもないですし。
◆ルシアン:何の強制力もないんですから、それに書いたって意味が無いんじゃないかと
◆†黒の魔術師†:いやいや、ここまでやったのに裏切ったってなれば
彼はにっこりと笑った。
◆†黒の魔術師†:叩き潰す大義名分になるだろう?
怖っ!
その顔、完璧に『誰か裏切ってくんないかなー』って顔だ!
大手ってこれだから怖いんだよ!
◆アプリコット:いいや、わかるぞ。そうだ、こういうのが大事なのだ
あれ、マスターは嬉しそうだ。
こういうの、好きなの?
◆アプリコット:この条文の三項だが。同盟所属ギルドへの敵対行為はこれを認めない。該当する行為が行われた場合、該当のギルドを即座に同盟から追放する──とある。即座に、ということは、追放についての同盟内会議などが行われることはないと。『TMW』単独の判断で同盟からの追放を行うという意味か?
◆†黒の魔術師†:ふふふ、ご不満かな?
◆アプリコット:いいや、その点を他のギルドも知っているのかという確認がしたくてな
あなた達なんだか仲良さそうですね。
悪巧みが似合う二人組ってのもどうかと思うけど。
◆ルシアン:っていうかほんの数日しかいない連合でそんな条文とかどうでもいいじゃん……
◆アプリコット:馬鹿を言うな、こういう所で細かい部分を詰めるのが楽しいのだろうが!
◆ルシアン:さいですか……
この人もまた面倒臭い人だなあ。
廃人だけどくだらない裏切りとかする人じゃないよ、†黒の魔術師†さんは。
◆†黒の魔術師†:あ、そうだ。攻城戦中は援軍を送れないけど、それ以外の時間なら別だよ。多少の手伝いならできる
◆ルシアン:と言いますと?
◆†黒の魔術師†:夜に練習で紅白戦をやっててね、良かったら参加するかな
◆ルシアン:それは喜んで!
◆†黒の魔術師†:踏み込みが甘いっ!
◆シュヴァイン:ぬわあああああああっ!
突っ込むのが読まれていた。
シュヴァインの体が風の魔法で切り裂かれる。
◆ルシアン:シュヴァインが死んだ! このひとでなしー!
◆†黒の魔術師†:溜まり場へ帰るんだな。お前にも嫁がいるだろう
◆アコ:私、ずっとずっとルシアンを待ってますから!
◆ルシアン:それ死亡フラグー!
ぎゃー、敵の大軍がもうこっちに来てる!
◆†クラウド†:猫姫様を守れー!
守るだけじゃなくて戦ってくれないですかね、親衛隊の皆さん!
◆猫姫:私の為に敵を倒すのにゃ!
◆†クラウド†:いくぞおおおおおおお
超チョロいっ!?
言われるがままに突撃した猫姫親衛隊が乱戦の中で溶けて消えていった。



