三章 ファイナルチャレンジャーⅩⅣ 新生アレイキャッツ ②
◆シュヴァイン:突っ込んだ後の火力が足りねえ……貯金叩いてあれを買うか……オックスヴァンディットソード……
◆ルシアン:アーチャー特攻武器持って突っ込むとか頑張りすぎじゃね?
◆シュヴァイン:そのぐらいやらねば、奴らに勝てん!
勝たなくていいよ!?
相手してくれてる†黒の魔術師†さんの所には根本的に勝てないからね!?
◆猫姫:猫姫さんはもう女神になるのにゃ、全てを諦めたのにゃ。アマテラスの鎧を積むのにゃ
◆ルシアン:それ攻撃ができなくなる鎧っ!
神輿が誕生してる!
担がれるだけで自分は何もしない人だ!
◆アコ:デバフにリカバリー、スタンにエクダメ、デバフにリカバリー、スタンにエクダメ……
◆ルシアン:しっかりしろ、アコー!
もう練習になってるのやらなってないのやら。
俺達は楽しく練習の時間を過ごした。
ただ少なくとも、黒の魔術師さんのギルドの人とも、猫姫親衛隊のみんなとも、次の攻城戦限りの付き合いとは言わないぐらいに仲良くなった。
このメンバーで頑張ろう。頑張りたい。きっと頑張れる。
そして、勝ちたい。そう思うぐらいには。
◆†黒の魔術師†:いよいよまもなく本番だ。こちらも『門閥貴族』相手に打って出る。君達の勝利を願っているよ
◆アプリコット:ああ、互いに武運を
ギルドマスター二人ががっちりと握手する。
戦いを目前に控え、†黒の魔術師†さんも気合が入っているみたいだ。
◆†黒の魔術師†:にしてもアプリコットさん、本当に装備凄いね。かなり課金した?
◆アプリコット:無課金だぞ?
◆ルシアン:どうしてそこで噓つくのっ!?
◆アプリコット:いいや、無課金だ。無課金とは『生活に無理のない課金』のことだろう?
◆ルシアン:それ無課金じゃねーって!
◆アコ:それだけ課金して無理が出ないっていうのが羨ま憎いです……
◆ルシアン:落ち着いてアコ!
◆シュヴァイン:いいからさっさと行くぜ、親衛隊とも打ち合わせがあんだろ
さっさとカントルに向かったシュヴァイン。
その後を追ってマスターとアコも向かう。
俺も行こうとした所で、後ろから†黒の魔術師†さんが言った。
◆†黒の魔術師†:アレイキャッツは、この一戦が終わったら対人をやめるんだったかな?
◆ルシアン:この日に勝つ為にやってるものなんで、そのつもりですけど
◆†黒の魔術師†:……そうか、残念だな
†黒の魔術師†さんは言葉通り、本当に残念そうに続けた。
◆†黒の魔術師†:この戦いが終わったら、君達をうちに引き抜こうと思ってたんだが
それはまた光栄なお誘いだ。
でも残念だけど、それはありえないと思う。
◆ルシアン:あー、そりゃ無理ですよ
◆†黒の魔術師†:やっぱり無理かな
◆ルシアン:あたりまえじゃないですか、俺達アレイキャッツですよ?
当たり前と言えば当たり前の答えに、†黒の魔術師†さんは笑って頷いた。
◆†黒の魔術師†:君達ならうちでも十分戦力になると思ったんだけどな
◆ルシアン:……ありがとうございます
何週間も準備して、練習して、戦ってきた。
最初は無理だとばっかり思ってた。
でも俺達なら勝てるかもしれないって、今ならそう思えた。
††† ††† †††
「いよいよ攻城戦の本番が目前に迫った。これより最終作戦会議を始める!」
「うるさいぞマスター」
「今は大変なのにゃ、後にするのにゃ」
作戦地図を前に意気込んで言ったマスターに向けられたのは、俺達の冷たい視線だった。
「マスターもさっさと造花を作りなさいよ」
「どうやって作っても変な形の花になりますー!」
「アコ、お前どんだけ不器用なんだよ……」
攻城戦ばかりに夢中になって、部室の飾り付けとか全然してなかった。
そんなことに今更気づいた俺達は、最終決戦の直前になって、ちまちまと展示の準備を始めております。
「ほらほらアコちゃん、こうやったらいい感じにできるよ? 二輪合体タイプ完成ー」
「な、なんでこんな綺麗にっ」
「だってコサージュ作るのと一緒だし」
「こ、こさーじゅ? サボタージュなら得意なんですけど……」
「あ、それも得意ー」
秋山さんの言うサボタージュはサボりじゃなくて破壊活動の方じゃないですかね。
「あたしがらんらんしてる場面のSSは拡大して展示したいわよね。シュヴァインに集中線をつけちゃおっか」
「瀬川を目立たせることを、強いられているんだ!」
「……やっぱ集中線はやめとくわ」
それが良いと思う。
「ま、まあ作業を続けたまま聞いてくれ」
「だからあんたもやりなさいってば」
「では当日の作戦についてだが」
「…………はあ」
マスターも本当にマイペースだ。
「作戦は三段階に分けられる。第一段階は、砦の獲得。現在カントル小砦を所有しているのは『ヴァレンシュタイン』で、奴らから砦を奪うのが目標だ」
「無理でしょ」
瀬川がげんなりと言った。
確かにあの人達が防衛をしていたら、奪うのはかなり面倒臭い。
「その通りだ。しかし『ヴァレンシュタイン』は戦闘狂の傭兵ギルド。防衛戦には興味がないらしい。砦が空のまま放置されている可能性は十分にあると見ている」
「うん、確かに砦は空になってるはずだぞ」
俺がそう言うと、マスターは少し首を傾げた。
「む、何故わかる?」
「聞いてきた」
「直接聞いたのか!?」
なんだかびっくりされた。
だってそれが一番早いじゃん。
砦守るの? って聞きに行ったら普通に答えてくれたよ。
「アコと一緒に聞きに行ったら、『防衛とかつまんねーわ、必死に守ってる所を攻め落とすのが楽しいんだから』って言ってたよ」
「お前達は……いや、それだから無駄に廃人に好かれるのか」
確かにアコは交友関係がとんでもなく狭い割に、たまに誰かと仲良くなったらとんでもない廃人さんだったりするけど。俺の方はそうでもないと思うよ。
「では作戦の第一段階は空になった砦を奪うことだ。これは他のギルドとの奪い合いになる可能性もある。先に取られた場合はこちらが攻め側になるので、その場合はセッテにも働いてもらうぞ」
「はーい」
お、秋山さんのことセッテって呼ぶようにしたのか、マスター。
ああ見えて身内以外には割と冷淡なマスターがちょっとずつ仲間と認め始めたらしい。
「うむ、よろしく頼む」
やたらと手の込んだ造花を作る秋山さんに頷いてから、マスターは続ける。
「砦を獲得した後は作戦の第二段階、砦の防衛戦だ。ここでは規模の大きなギルドから砦を守ることになる。予想される相手は『エンペラーソード』だ」
「もうあたし達なら負けないでしょ」
「猫姫さん達は強いのにゃ」
完全に教祖と化した猫姫さんは自信満々だ。
「そう思いたいが、戦場では何が起こるかわからん。総員が全力を尽くして戦うように」
ごもっともだ。
『ヴァレンシュタイン』がいる状態で勝てたからと言って、俺達だけで勝てるとはとても言い切れない。全力で挑まないとな。
「そして第三段階──最終防衛だ。大きなギルドは準備や連携もあり、残り時間が短くなると動きが取れなくなる。その代わりに小規模なギルドが砦を狙いに来ることが多いので、それを叩き潰すわけだな」
「小規模なギルドで砦なんて取れるの?」
不思議そうに言った瀬川。
「少数精鋭であれば可能だ。防衛線を無視して駆け抜け、クリスタルだけを叩き割り、自分達の物に置き換える。その瞬間に攻城戦が終われば砦は彼らの物になる」
「ラストチャンスをものにできれば大儲け、ってわけね。あたし達には取れない作戦かー」
「我々は負けるわけにはいかないからな」
部活対抗リレーへの参加を避ける為には確実な勝利が要る。
俺達はとてもじゃないけど賭けには出たくないな。



