三章 ファイナルチャレンジャーⅩⅣ 新生アレイキャッツ ③

「ちなみにマスター、そういう少数精鋭なギルドって結構多いのか?」

「手元の資料では『ラストデイズ』や『ラビッツホーン』がそれに当たるな。突破力に優れるレーサーギルドだ。他には──」


 データを書き込んだプリントを手に、マスターは黙り込んだ。

 少数精鋭のギルドといえば、一体どこになるのか。

 今の俺達にとっては一つしか思い浮かばない。


「──それについては言っても仕方あるまい。来たギルドは全て確実に叩き潰す。それだけのことだ」

「出たとこ勝負にゃ!」

「それも俺達らしいですけどね」

「そうですね、先のことなんて考えてませんしっ」


 アコにはもうちょっと先のこと考えて生きて欲しいです。


「作戦は以上だ。最終決戦は明日。『崎校祭』までも残り数日だ。皆の奮闘を期待する」


 そう締めくくったマスターに、全員が、おー! と唱和した。

 これまで頑張ってきた全てを試す時が、もう目前に迫っている。

 否が応でも緊張が高まってくる。


「んじゃマスター、満足したなら、飾り付けはじめるわよ」

「……うむ」


 と言っても、こんな土壇場で必死に飾り付けをしてるような俺達じゃ、緊張も何もないんだけどさ。



 翌日、最終日。

 俺達はもちろん部室に集合した。

 各自のパソコンよりずっとスペックが高い現代通信電子遊戯部の設備を使わない手はない。

 流石に今日は猫姫さんも文句を言ったりしなかった。


「これまでやって来たんだから、絶対に負けないわよ」

「むーたん、頑張ろうね」


 秋山さんには悪いけど、むーたんは置いてって欲しいな。


「ルシアン、クラスの人が、私は頑張ったからシフトは少なめでいいよって言ってくれたんです!」

「おー、そりゃ良かったな」

「……遠回しな戦力外通告ではないか?」

「ふえええええええ」

「なんで余計なこと言ったマスターっ!」

「す、すまん」


 あー、いつもの調子だ。

 実戦前だけど普段と変わらないこの感じ、うん、いけそうな気がする。


「では構成だ。装備はどうする?」


 えーと、俺のキャラ構成はっと。


「盾カラサワカラサワイザナミイザナミリフダメ」

「軽突バトバト範デフオックスアチャアンチ」

「僧カラサワカラサワアマテラスロザリンロザリン」

「LWバースト火スト火ストメテサブ指定ヨロ」

「PB」

「PB」

「SER」

「PBケー」

「ケー」


 うし、問題なしだな。


「に、日本語で喋ってくださいー!」


 と、何故かアコが半泣きで怒りだした。

 なんだよ、なんで怒ってんの。


「お前これまで一緒に練習してきてわかんないのか?」

「わかりませんよ! わかる余地がありませんよ!」


 噓だー、散々相談したじゃん。


「だから、俺は盾職です。MDEF上昇の唐沢の波紋エンチャント装備を二つつけています。HPが上昇するイザナミの預言エンチャント装備をダブルでつけています。そしてリフレクトダメージで反射で倒す予定です、って言ってんだよ」


 俺が言うと、次に瀬川が、


「私は軽装突撃前衛職です。物理攻撃力の上がるバトルマスターエンチャント装備を二つつけています。範囲デバフ効果のある装備をつけています。オックスバンディットソードを装備しているから遠距離攻撃職にダメージがよく通ります、って言ってんのよ」


 呆然とするアコに、さらに猫姫さんが、


「私は回復職です。MDEF上昇の唐沢の波紋エンチャント装備を二つつけています。近距離無属性攻撃に大耐性がつく代わりに物理攻撃ができなくなるアマテラスの鎧をつけています。回復力の上がるロザリオリングを二つつけています、って言ってるのにゃ」


 アコがばっとマスターに目を向けると、


「私はロウウィザードです。炎のダメージを増加するバーストリングをつけています。炎のダメージを増加するストライクダメージ:フレイムのエンチャント装備を二つつけています。炎ダメージスキルのメテオをメインで使っています。サブの範囲スキルを指定してください、と言っているのだ」


 んで、その後は、


「氷属性範囲攻撃スキルのパーフェクトブリザードがいいです」

「氷属性範囲攻撃スキルのパーフェクトブリザードがいいです」

「無属性範囲攻撃スキルのソウルエナジーレインがいいです」

「パーフェクトブリザード、了解しました」


 そういう会話なんだよ?


「ごめんね、さっぱりわからないんだけど」

「ううう、セッテさんだけが味方なんて酷いです」

「アコちゃん、その扱いが一番酷くないかな?」


 まあまあ、そっちの二人はマイペースにやっててくれるのが一番調子が出るだろうから。


◆猫姫:そろそろ集合の時間にゃ。集まるのにゃ


「うっし……行くか!」


◆ルシアン:了解

◆シュヴァイン:おう!

◆アコ:はい!

◆セッテ:はーい

◆アプリコット:では、アレイキャッツ、出撃だ


 最終決戦の時。カントルの一角に集まったのは総勢三十五名のプレイヤー達。

 ギルド『アレイキャッツ』からは俺、アコ、シュヴァイン、マスター、臨時でセッテさんの五人。

 ギルド『猫姫親衛隊』から、猫姫さんを含めて三十人。

 以前に比べて少し参加率が良い。

 もちろんこういう所で強制参加なんて要求しないのが俺達のやり方だ。

 来てくれと頼むこともしなかったけど、それでも皆が来てくれた。


◆ルシアン:あれ、フィネ君来てないの?

◆猫姫:お子さんの運動会らしいのにゃ

◆ルシアン:ってなると……盾は俺だけかよ


 ただ困ったことに、俺と同じアーマーナイトだった人が欠席。

 すると完全盾職でスタンを使えるのはこの三十五人で俺だけか。

 いやいや、別に責任重大ってわけじゃない。

 これだけ居るんだからいくらでもカバーはきくさ。


「アコ、今回はバフの振り分け上手くできてるか?」

「私は指揮官枠なので他の人に任せました!」

「ずりい!」


 一応アレイキャッツが指揮する側だってのを悪用しやがった!


「権力ってこう使うものなんですよ?」

「マスターから変なこと学ぶなよー」


 いーけどさ、全く。


◆アプリコット:皆、準備は整ったか


 マスターが全員の前に立ち、チャットを打った。


◆アプリコット:我々の願いに応え、これだけの人数が集まってくれたことに心から感謝する

◆†クラウド†:我らが猫姫さんの為に!

◆猫姫:今回は確かに頼んだにゃ! 頼んだのにゃ! でも、でもおお!


 猫姫さんが泣き、そこかしこから笑い声が上がった。


◆アプリコット:……ありがとう。我々アレイキャッツと、猫姫親衛隊の諸君。この場に集った我らにギルドの区別はない


 静かに耳を傾ける俺達を見回す。


◆アプリコット:アレイキャッツ──すなわち『野良猫』と、『猫姫親衛隊』! 我々はひとつ! 今日、この時、この場限りの、『野良猫姫親衛隊』だ!


 マスターは力強く拳を振り上げた。


◆アプリコット:暁の水平線に、勝利を刻むぞ! 野良猫姫親衛隊、出撃!


 おおおおお、と歓声が上がった。

 うーっし、やる気が出てきたぞ!


「……アレイキャッツって、野良猫って意味だったんですか?」


 小さな声でアコが聞いてきた。

 え、今更そこを確認すんのっ!?


「もう一年以上このギルドに居るくせに何を言ってんだよ」

「いえ、全然知らなくて」


 うーん、と考えた後、アコは小さな声で言った。


「……ギルドから居なくなった猫姫さんを探して、って意味でこんなギルド名にしたわけじゃないですよね?」

「ないないないない!」


 なんでそんな理由でギルド名つけんの!


「俺達が集まったあの時、全員野良だったから。俺達野良猫だなってことでアレイキャッツになったんだろ!」

「そ、そうでしたっけ?」

「…………」


 お前も居たじゃん、あの時……。


◆猫姫:野良猫姫親衛隊、って、名前がおかしいのにゃ……あきらかに猫姫さんが真ん中に居るのにゃ……猫姫さんは見守り役のはずなのにゃ……


「良いではないですか、顧問の為に部員が頑張る、美しいことです」


◆猫姫:納得できないのにゃ……


▼ただ今より攻城戦を開始します▲


 攻城戦開始のアナウンスが流れた。

 野良猫姫親衛隊、最初で最後の戦いが始まった。

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