三章 ファイナルチャレンジャーⅩⅣ 新生アレイキャッツ ④
◆アプリコット:作戦は予定通りだ!
マスターの指揮が飛ぶ。
◆アプリコット:資源採集班は予定通り資源を集め、必要であれば攻城兵器への転用を! 資材は防衛中の砦修復にも使う、無駄使いはしないように!
◆セッテ:みんなー、掘りいこー
資源採集班リーダーのセッテさんが少しレベルの低いメンバーを率いて行った。
テンションの下がりやすい裏方にあって、周りを盛り上げる秋山さんの才能は貴重だ。
彼女とならきっとみんな攻城戦を楽しんでくれると思う。
こういうのも大事。
◆ユユン:砦の所有者はヴァレンシュタインですが、防衛線は見当たらないと報告が
偵察班から報告が入った。
◆アプリコット:予想通りだな。全軍で砦に向かうぞ!
『ヴァレンシュタイン』は本当に砦を守ってないらしい。
それなら俺達が奪うだけだ。
◆ルシアン:……っていうか、ユユン、居たの?
◆ユユン:居たよ! 今更気づいたのかよ!
◆ルシアン:そういえばお前も猫姫さんと仲良かったっけ
懐かしいな、中身男の嫁さんは元気?
そうして俺達は空っぽの砦に向かって進軍。
さっさと占領して防衛に入る予定だったが、そう上手くは進まないらしい。
◆ユユン:前方に敵軍!
◆アプリコット:相手は?
◆ユユン:『エンペラーソード』! 軽く三十人以上はいます!
やっぱり来たか『エンペラーソード』の人達。
先週バッツ達に落とされるまでは砦を持ってたんだもんな、今週来ないはずがない。
◆アプリコット:『ヴァレンシュタイン』対策に増員をかけてきたらしいな。想定よりもかなり人数が多い
◆シュヴァイン:とっことん邪魔をしてくる奴らだな
◆猫姫:猫姫さん達は負けないのにゃ
そうだ、数がちょっと少ないぐらいで負けるもんかよ。
◆アプリコット:だがこのタイミングでは向こうが先に砦を占領するだろうな。必要な者は戻って装備変更! 防衛編成ではなく攻撃編成で攻める!
◆セッテ:攻城兵器準備するねー
◆アプリコット:ああ、頼む!
それぞれが慌ただしく動く。
攻めでも守りでも装備の変わらない俺はまだ楽な方か。
◆セッテ:ジャイ出ます!
◆ルシアン:護衛ナイト行きます
アーマーナイトだけどな。
セッテさんと資源採集班がジャイアントカタパルトを作成。
北側の外壁の一角、迎撃待機中の魔法使いが集まっている辺りを照準。
◆セッテ:ふぁいあーっ!
砲撃が始まった。
と言ってもジャイアントカタパルト一基で砦の壁は破れない。
これはただ、防衛網の一角に穴を開けたいだけだ。
◆アプリコット:突撃前衛部隊、行け!
◆†クラウド†:我らが猫姫様の為にー!
◆ユユン:異教徒を殺せー!
◆猫姫:私に勝利を捧げるのにゃー!
あの人はジャンヌ・ダルクか何かでしょうか。
既に一度勝った相手、さらに連携も向上し、猫姫さんを神輿に抱えてやる気満々の猫姫親衛隊はとにかく強い。
一気に押しきり、前線を突破した。
しかし砦の中庭に作られた中盤の戦線が硬い。
「くそ、膠着してきたな」
「参ったわね、狭い戦線に火力を集めてきたから抜けられないわ」
「人数で負けている。範囲火力だけでは押しきれないぞ」
復帰してきた敵も合流して、かなり分厚い防衛線が敷かれてる。
◆ルシアン:にしても味方が少ないな、もっといなかったか?
◆ユユン:僻地に多数の親衛隊員が流れてる。合流に失敗した敵残党を追っていったらしい
◆ルシアン:戦功を焦りやがって!
◆シュヴァイン:僻地厨まじでウザイな
チッと舌打ちが聞こえた。
こら、下品だぞ。大体お前みたいな中央厨が人のこと言えるか。
◆セッテ:ジャイ出ます
◆ルイン:歩兵ジャイ出ます
◆カボたん:囮ジャイ出ます
◆リミット:輸送ジャイ出ます
◆アコ:ジャイアントカタパルトが山ほど後ろから来ます!
んで弓と魔法の的になってるー!
っていうかそれ五人居ないと動かないんだぞ! ただ棒立ちしてるだけじゃねえか!
◆アプリコット:この状況でジャイは要らん! レイスを呼べレイスを!
◆ルシアン:いいからナイトを増やせって! 前線だ前線!
◆セッテ:資材が足りないよー、資材採集班の増員を求むー
◆シュヴァイン:ジャイが! 出すぎて! 足りてないだけだろうが!
セッテさんの悪ノリが悪い方向に影響したか!
これだからリア充は信用ならない!
◆ルシアン:くっそ、盾が足りないんだよ盾が、突っ込めないんだよ
長いこと押し合いへし合いが続く。
単純前衛の俺にこの戦場は厳しい、何もできる気がしない。
「ルシアンとあたしのイライラタイムね」
「くっそ、いっそ突っ込むか?」
「やるならあたしの仕事ね」
らんらんしちゃう? と瀬川が目を輝かせた。
はまったのか、らんらんに。
「無謀な突撃は許さんぞ」
「勝算はあるわ。あたしだってこの三週間無駄に過ごしたわけじゃないのよ」
「ふむ」
目を閉じて思案したのも一瞬、マスターは頷いた。
「好きなようにやれ」
「おっけー!」
◆シュヴァイン:お前達! 俺様についてこい!
おお! と、イライラタイムを耐えている前衛PTの面々が応えた。
「よっし……後はタイミングね」
「タイミング? タイミング作ればいいの?」
丁度ジャイアントカタパルトが壊された所のセッテさんが寄ってきた。
「奈々子、何かあるの?」
「うん、待って」
秋山さんはぽちぽちとキーボードを叩いた。
◆セッテ:ちょっと頑張って、黒の魔術師さんがちょっとだけ来てくれるって
◆セッテ:
◆セッテ:
◆セッテ:誤爆
え、何そのオープンチャット。
今まで話してたギルドチャットは敵には聞こえないけど、このオープンチャットは誰にでも聞こえる。『エンペラーソード』の人にも完璧に聞かれてるんだけど。
「西村君も何か言って」
「何かって言われても……」
◆ルシアン:噓です、来ません
◆アプリコット:TMWは来ないぞ
◆アコ:平気ですよー
この攻城戦中とは思えない雰囲気は一体。
当たり前だけど、こんな馬鹿な会話に敵側から返事はない。
「ちょっと待ってね、このまま……うん、行っていいよ」
「え、今行けばいいの?」
「うん、すぐ行って、今」
「い、いいけど」
◆シュヴァイン:行くぞ貴様ら!
シュヴァインと数人が前に出ると同時に、『エンペラーソード』の防衛戦からいくつもチャットが上がった。
絶対来ねえwww
噓すぎるw
ブラフってレベルじゃないw
『エンペラーソード』から返事!? このタイミングで!?
「ね、チャンスでしょ?」
「なんで突っ込みのタイミングわかったの!?」
この人怖いんだけど!
チャット中のタイミングを完璧につかんだシュヴァイン達が範囲攻撃の弾幕をくぐり抜ける。
弾幕のさらに奥まで突っ込み、シュヴァインがぐっと腰を落とした。
◆シュヴァイン:食らえ、必殺!
そのまま大きく大剣を振り回す。
「らんらんできるなら死んでもかまわん! 二回打てたら黒字よ!」
ダメージ表示が一回、二回、三回、それが何人分も重なって表示される。
「これぞ私の、アカネスタイル!」
「どっかで聞いたことあるーっ!?」
が、強い。ただのらんらんと侮れない。
死なばもろとも。前線どころか後方の魔法職にまで突っ込んだシュヴァイン達は、死ぬまでの十秒程度、暴れに暴れた。
◆アプリコット:前線を上げろ!
後衛部隊が前に出る。薄れた弾幕の隙間を縫ってこちらの弾幕を前に上げる。
「火力前衛が集団で前に出れば当然強いが、結果が出ずに死んで終わることが大半だ。だというのに死んで戻ってくる間はつまらん。やれと言われてためらわずやる兵はそういない」
ぬふふと嫌らしく笑い、マスターは瀬川の背中を叩いた。
「私の知らぬ間にシュヴァイン、手勢を育てていたな」
「このあたしを舐めるんじゃないわよ」
俺の見てない所で一体何が起きてたんだろう。
しかし一部分、それも火力が崩れた集団なら俺達でも押しきれる。
互角だった戦線がぐんぐん上がっていく。
◆アプリコット:押しきるぞ、奴らのリスポーン地点を我々で包囲するのだ!
鬼畜だー!



