三章 ファイナルチャレンジャーⅩⅣ 新生アレイキャッツ ⑦

「ここを外したら勝てないよな!」

「気合入れて、あたしの10M分ぐらいは頑張りなさいよ!」


 任せとけ!

 つうか二十個も食ってたのかお前! 散財ってレベルじゃないぞ!?

 俺のルシアンが先頭で突っ込む。スキルの硬直をモーションキャンセルで飛ばしたバッツの元へ一直線に駆け、そのままの勢いで盾を振るう。

 初手でスタンさえ入れば、全員の火力でそのまま落とせる!


「ぐうううう!」


 するりと抜けられた。見え見えのシールドバッシュを食らうほど甘い相手じゃない。

 でもそれならそれで!

 背後のロウウィザードが、バッツの代わりに俺の盾を受けた。


◆ルシアン:スタン入った! ↓ ここ!


 マクロ入力の台詞を表示。

 直後に凄まじい勢いで全方位から攻撃スキルが飛ぶ。

 だがそれでも死なないのは流石。

 スタン効果中を耐え切り、シュヴァインと同じホワイトエリクサーのオーラを立ち上らせ、俺に反撃のスキルを飛ばしてくる。


「おう、スキルさんきゅー!」


 とんでもない威力のスキルが、予定通りリフレクトダメージで部分的に跳ね返される。

 いくらなんでもHPを増やしてる俺のルシアンを一発で殺す火力はない。

 周りからのダメージと自分の攻撃で増えたダメージをまとめて食らって、ロウウィザードが沈んだ。


◆猫姫:五人中二人を撃破にゃ!

◆アプリコット:この距離なら!


 マスターのスキルが発動。

 前に飛び出していたバッツ以外の二人に吹雪が降りかかる。

 鈍足化したままではろくに逃げられず、攻撃を受け続け、回復職カーディナルの女性キャラが倒れた。


◆猫姫:残り二人にゃ!

◆猫姫:って、にゃ、にゃにゃ!?


 突撃してきたバッツに猫姫さんが切り払われた。

 アマテラスの鎧は流石に強い。

 無属性武器なら早々死なないが、流石に向こうが上手だ。

 一撃放った時点で気づき、二発目からは属性武器の攻撃が飛ぶ。


◆猫姫:駄目なのにゃあああ

◆†クラウド†:貴様あああああああ

◆ユユン:許すなああああああ


 猫姫親衛隊が襲いかかる──しかし、バッツに届かない。

 一人、二人、三人、五人、七人、十人と凄まじい勢いで味方が減っていく。

 やべえ、俺もすぐに──とかけ出した瞬間、がん、と横合いから殴りつけられた。


◆コロウ:どーも


 残った一人、俺と同じ盾職のコロウ。


「な、盾と盾が殴りあったって泥仕合にしか……」


 いや、そうか。

 スタンから高火力のコンボが入らない限り、多分バッツは止まらない。

 そのスタン攻撃ができるのは野良猫姫親衛隊には、悲しいかな俺のルシアン一人。

 俺さえここで抑えたらバッツは無敵かよ!


「抜けていかねえと……くっそおおお!」


 シールドチャージで吹き飛ばそうとするがあっさりと避けられる。盾を投げても、剣を振るっても、避けられ防がれ止められて、逆にこちらのダメージが増える。

 PSが違いすぎる!

 どんだけ上手いんだよこいつら!


「西村早くっ、もうクリスタル守ってるのほとんど居ないから!」

「わかってるけど、こいつがっ!」


 俺より強い奴が帰らないんだよ! どんな地獄だ!

 ああもうっ、邪魔なんだよ!


「心配するな、まだ私が居る」


 言われてちらっとミニマップを見る。

 マスターが居る、じゃない。もうクリスタルの前にはマスターしか居ない!


◆バッツ:一分であと一人、余裕すぎるw

◆アプリコット:そのチャットの時間で残り五十五秒だ。タイピング速度はまだまだだな


 会話を交わすのも一瞬、バッツがマスターに斬りかかった。

 マスターもスキルを打つけど、駄目だ、そんなので止まる相手じゃない。


「マスターっ!」


 マスターがバッツの攻撃を受けた。

 一発、二発、三発、ダメージ表示とスキルの光が重なる。

 四発、五発、六発……?


「あ、あれ?」


 マスターが何故かやられてない。

 またしても黄金のオーラを吹き出して、その場で仁王立ちしてる。


「ま、マスター? 生きてるのか?」


 それどころかすごい勢いでバッツのHPが削れていく。

 即死級のダメージを受けながら地味に短詠唱の低ダメージスキルで反撃もしてる!?

 いや、減り方が小規模スキルの減り方じゃないぞ!?


「何それ、どうやってんの!?」

「いやいやいやマスター、それはちょっと、マジでありえないって」


 マスターの画面を見てる瀬川がどんどん青ざめていくんだけど、何が起こってんの!?


◆バッツ:ちょっと来いコロウ、こいつヤバイ、スタン入れて早く!


「っ、させるか……ぐっ」


 あああ、くっそおおお!

 散々避けられたシールドチャージを、俺は何であっさり食らってんだよ!

 ノックバックでマスターの反対方向に飛ばされる。止められない。


「マスター、スタンが行く! 逃げろ!」

「逃げられるか! ここを抜かれたら終わりだ!」

「幾らなんでも死ぬって!」


 コロウが盾を構えて振るう。

 クリスタルの前を離れる気のないマスターには避ける余地もない。

 その眼前にピンク色の影が飛び出した。


◆アコ:駄目ですーっ!


 ごいんっ、と頭に盾がぶつかり、ひよこが舞う。

 マスターじゃなく、間に入ったアコの頭から。


「ううう、痛そう……あああ、死んじゃった!」


◆バッツ:邪魔っ!


 怒りにまかせたような無茶苦茶な連撃で、アコは一瞬で沈んだ。

 でもそんなのどうでもいい!


「よくやったアコおおおおお!」

「ナイスよアコ、偉いっ!」

「え、ええ? 死んだのに褒められるんですか?」

「当たり前だろ!」


 スタンスキルは強い。

 でもその分だけ、次にスキルを使えるまでのクールタイムがとんでもなく長い。

 残り十秒、もう一度は使えないだろ!

 それだけじゃない。割り込みで防がれたショックか、コロウに初めての隙が見えた。


「よっしゃああああ!」


 ルシアンを突撃させ、勢いのままに突進、二人揃って領主の間の端まで吹き飛んだ。

 ががががが、と光がまたたく。

 ダメージ表示とマスターの黄金のオーラが重なる。

 走っても間に合わない。でも邪魔はさせない。


「マスター、頼む、勝ってくれ!」


◆アプリコット:ははははは! 貴様の力、この程度かバッツ!

◆バッツ:クソがっ、死んどけってマジでっ!


 攻城戦の終りが近い。もう十秒もない。


◆ルシアン:スリー!

◆シュヴァイン:ツー!

◆アコ:ワンっ!


 今回は誰もカウントを邪魔をしなかった。


◆アプリコット:ゼロだ!


▼ただ今をもって攻城戦を終了します▲


 終了のアナウンスが流れた。

 光が消えた時、そこには仁王立ちするマスターと、


◆バッツ:噓だろ


 倒れ伏すバッツの姿があった。

 砦内部で死んでいたキャラクターが自動的に蘇生される。


▼[帝城ロードストーン]の領主に[TMW]が就任しました▲


 そして領主就任のアナウンスが流れ始めた。

 倒れていた野良猫姫親衛隊のみんながクリスタルの周りに集まってくる。


▼[大要塞グランベルグ]の領主に[門閥貴族]が就任しました▲

▼[サイレイン神聖王城]の領主に[ラストデイズ]が就任しました▲

▼[モコモコ海上砦]の領主に[秘密結社アルパカ牧場]が就任しました▲

▼[スペルランナー空中回廊]の領主に[ラビッツホーン]が就任しました▲

▼[ガイオニス山砦]の領主に[てこっつ]が就任しました▲

▼[ライソード聖堂要塞]の領主に[おそうじ組合]が就任しました▲


 そして、そのアナウンスが流れた。



▼[カントル小砦]の領主に[アレイキャッツ]が就任しました▲

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