三章 ファイナルチャレンジャーⅩⅣ 新生アレイキャッツ ⑧
「やっ……」
「やったああああああ」
思わず立ち上がった。
叫ぶ、っていうか叫んでる? 既に叫んでた?
いやよくわからん!
やった! とにかくやった!
「やったったあああああ」
「勝ったのにゃああああ」
「ヴァレンシュタインざまあ!」
「マジざまあ!」
誰が何を言ってるやら。
みんなでぐちゃぐちゃになって喜び合う。
あの、でも、ちょっと、みんな距離が近い……いや、もういい!
やった、やったぜ!
抱き合って喜んでもいいだろ今ぐらい!
「みんなも喜んでるのにゃ」
猫姫さんが言うので画面を見てみると、そちらも歓喜の嵐だった。
◆†クラウド†:猫姫様の勝利だ!
◆ユユン:女神様に栄光あれ!
うおおおお、と歓声が上がってる。
いやー、めでたいめでたい。
◆ルシアン:やったな!
◆シュヴァイン:よくやったぞ貴様ら!
◆アコ:やりましたーっ!
◆セッテ:ジャイ出ます
ジャイ出んな!
◆猫姫:みんな、褒めてつかわすのにゃ!
◆アプリコット:この砦は、我らのものだ!
マスターが宣言し、領主の椅子に座った。
「ついに見返してやったな」
「うむ。見たか、この裏切り者めが」
あ、やっぱ根に持ってたんだ。
そんなマスターに、バッツは胡乱げな視線を向けた。
◆バッツ:アプリコット、さっきの正気でやってたのか?
◆ルシアン:なんだよ、負け惜しみか?
らしくないじゃん、と思ったのだが、
◆バッツ:負け惜しみじゃなくて、俺は負けてねえぞ今の
だってお前、とマスターに言う。
◆バッツ:今の一分で何百M使ったんだよ
は? 何百M? 何の話だ?
◆ルシアン:ええと、どういうことだ?
◆シュヴァイン:あー
マスターの画面を見ていた瀬川が額を抑える。
◆バッツ:さっきの俺の攻撃耐えてたの、一発食らうたびにユグ雫使ってたんだろ?
…………えっ。
ユグ雫って、ユグドラシルの雫?
一個10Mで使い捨ての?
使わないだろって言ってた全回復アイテム?
◆バッツ:しかもあのダメージはリフポ飲んでただろ、何本飲んだんだよ
◆ルシアン:リフレクトポーションまで飲んでたの!?
大事な一瞬だけにしろって言ったじゃん!
◆アプリコット:そうだな、開戦前は500個持っていて──残りは13個か。案外と薄氷の勝利だったな
◆バッツ:この砦取っても5Mも儲かんないのに、馬鹿じゃないのかお前www
◆ルシアン:っていうかその金どこから持ってきたんだよ!
普通にプレイしてて手に入る金額じゃないぞ!?
◆アプリコット:どこからも何も……倉庫の要らないアイテムを売っただけだが
◆ルシアン:要らないアイテム売って集まる金じゃないってば!
◆アプリコット:そう言われてもな。ガチャやパッケージで手に入ったアイテムで取っていたものを全て処分しただけなのだが
な……ガチャで手に入ったアイテムと、パッケージのアイテム……?
ガチャって、リアルマネーでガチャチケットを買って、ランダムでアイテムがもらえるやつだよな?
パッケージって、アイテムパックと一緒にプレイチケットが入った、スターターパッケージってやつだよな?
それをゲーム内マネーにしたってのは、つまり?
「公式RMTじゃねえかあああああああ」
「規約違反は何もしていないぞ、失礼だな!」
「結局金じゃないのよあんた!」
「い、一体幾ら使ったんですか、マスター」
◆バッツ:何万使ったんだよお前w
奇しくもアコとバッツが同じことを尋ねた。
しかしマスターはふっと鼻で笑うと、軽く答える。
◆アプリコット:くだらないことを聞くな、ワンコインしか使っていない
◆バッツ:ワンコインなわけねーだろ
◆アプリコット:バカを言うな。いいかバッツ、真理を教えておこう。仲間の為に使うのならば────例え百万円でも、ワンコインだ!
◆バッツ:こいつマジキチだわwww
否定ができない、辛い。
正直俺もこの人もう駄目だわって思ったもん。
◆バッツ:あー、負けたとか信じたくねー、こんな無駄金使ったヤツにw
◆アプリコット:無駄金だ? 何を言うか
食い下がるバッツに、マスターはいっそ自慢げだった。
◆アプリコット:これは私の人生で二番目に有益な金の使い方だったさ
◆バッツ:どんだけ本気なんだよお前www いいわそれ、好きだわwww
あ、この人もやっぱり駄目な人だ。
ライバル見つけてやったぜ! っていう超良い顔してるもん。
◆バッツ:次は絶対押しきるからもっと金貯めとけよアプリコットw
◆セッテ:えー、でもばっつん
セッテさんがひょっと横から出てきた。
◆セッテ:私達来週から来ないよ?
◆バッツ:はああああ!? マジで!? つっまんねー!
◆コロウ:ルシアン、今日の決着は?
◆ルシアン:盾同士の決着とか勘弁して
っつうかお前らの相手なんて二度とごめんだよ。
◆バッツ:まじかよー、期待してたのに
バッツ達は最後まで残念そうに砦を出て行った。
あの分だと俺達が参加しなくてもこの砦で待ってそうだな、あいつら。
「なんだ、マスターも変な人に好かれるじゃん」
「欠片も嬉しくない」
珍しく渋い表情のマスターがちょっとおもしろかった。
でも、とにかく勝った。
良かった──って言うのかは微妙だけど、俺達の表情には心地よい達成感しかなかった。
「はー。結局マスターはマスターだったわね」
「でも良いんじゃないですか、あんなに嬉しそうなんですし」
「お前もな」
ニコニコ笑顔のアコに笑いかける。
「お前はどうだった? 突っ込んで無茶苦茶に倒されたけど……後悔したか?」
「いいえ、とっても、満足です!」
アコは本当に満足そうに言った。
「頑張って良かったです!」
「だな!」
ならこの後も頑張れるよな!
「じゃあ文化祭本番も頑張れよ?」
「え゛っ」
アコの笑顔がびしりと固まった。
こうして俺達の攻城戦は終わった。
そして、文化祭が始まった。



