序 章 フェミニンデンジャラスブライト ②
かざした
死体は後ろに倒れる事を忘れていた。
「悪いね。どこぞの精神系
口先だけだった。
「むぎの」
ピンクジャージに短パンの少女が話しかけてきた。
「あっちに何かある、緊急っぽい感じじゃないけど」
「アレかな?」
「結局アレでしょ。わざわざ部屋どころか入口のドアまで隠してある訳だし」
「じゃあ五分ちょうだい。ひとまず全部殺すまで待って」
提案通りになった。ありとあらゆる壁が遮蔽物として機能してくれない時点で、極限の飛び道具に全身をさらした警備兵や研究者の末路は決まった。一通り施設内の動体を全て爆破・蒸発させると、
「結局今のゲーム機ってすごいんだよ! フィットネスとか健康管理もしてくれんの」
「えー、五つ星評価のジムと契約した方が良くない? ピラティスとか、ホットヨガとか」
「チッチッチッ。むーぎーのー、結局そもそもダイエットのためn
「……、」
「こほん、大変お美しいオトナのボディメイクのためにッッッ!! それ『だけ』でわざわざ専用の時間を割く、ってのが結局もう無理めな訳よ。ながらで効果が目に見えるストレスフリーな感じにしないとこういうのって続かなくない? だから結局欲しいのは小さなゲーム機にワンセット全部入っちゃう、良くできた体操ソフト!!」
元々は図面にない機密エリアのようだが、彼女達が暴れすぎたせいで隠し扉そのものが
「お?」
左右の
ポッドの一つ一つの大きさは電話ボックスくらいか。
「結局コールドスリープで固めてあったから、心音や呼吸の反応がなかったんだね」
言いながら、フレンダはくるくるとモバイルを手の中で回していた。最近のカメラレンズは色々と多機能になったので、後ろ暗い連中にとっても便利な時代になった。位置情報含む、知らない間にプライバシーを切り売りする各種サービスの自動送信機能さえ気を配れば。
裸の少女が収まっていた。
改めて
「事前の資料通り。全部人間ロッカー、か」
「つまりプロジェクトを安全に撤収させるための標的。完全に無抵抗ってちょっと鬱モードになりそうだけど、どうする。結局、大雑把に爆破する前に人数確認やった方が
「いや、お土産にもらっていこう。まあ一人もいれば十分だけど」
ペットショップの衝動買いみたいな無責任テンションで
フレンダは
「なに? ヒトもモノも全部消し去れって依頼じゃなかった???」
「お行儀良く従う理由は?」
「……
「じゃあ理由の一個目。上からの依頼は公になったらまずいデータの抹消よ。標的標的とは書かれているけど、実際問題ここで何をやっていたのか具体的な数値まで自分の口で説明できない受け身のガキどもは割とどうでも
なるほどー、とフレンダは軽く
やっぱり命のやり取りをするほどの重さがない。
少女達にとって、生かすか殺すかは気分がかなり大きな判断基準だ。
「
「むぎの。そろそろ防御に向いた能力者が欲しいって事?」
「『
言葉だけは質問・提案っぽいが、フレンダと
フレンダは部屋の隅にあったコンピュータに向かって、
「えーっと、プロジェクト全体で一番の成功作は
「盾役」
そんな気軽さで道が分かれた。
片方は少女達と合流する道に、もう片方はここから始まる長い長い別の道のりへと。
ガゴン!! という太い機械音があった。
分厚い保護ガラスの内部を埋めている、時間や空間をそのまま固めたような透明な固体に変化があった。どろりとした液体に変わっていくのだ。水というよりジェルに近い質感だった。それもまたいくつもある排水溝から吸われて消えていく。
そして保護ガラスが真上に大きく開く。
「はろー、名前は
「……?」
ぺたりと座り込んだ少女はどこかぼんやりしていた。
「悲鳴ないね?」
「自分がハダカだって気づいてもいないんだろ、解凍直後だから頭に血が回ってないのよ」
ぺたりと座ったままこちらを見上げるアクション自体、自分の意思というより外からの刺激に促されて、といった印象が強い。のろのろ動くオジギソウっぽい。
おそらくこういう世話をするためのアメニティだろう。
「むぎの」
ピンクジャージに短パンの少女はどこかよそを見ていた。明らかに壁の向こう側を意識している。自他共に認めるバトルフリークの
「南南西がざわついている、そろそろ限界みたい」
「おっと想定よりも真面目に素早く働くじゃないかフツーの
「え、ちょっと! 結局、冷凍睡眠の連中はどうすんの? 他にもたくさんいるけど!!」
慌てるフレンダに
「それが理由の二個目よ。犯人役がいればちょうど
そこまで言って、