第一章 『五』人目の少女 4
新しい仕事に取りかかる以上、『アイテム』全員で詳細な情報を共有する事になる。そうなると
そんな訳で、五人はエレベーターを使って下層エリアに向かった。
ジャージ少女の
「それにしても、きぬはた、クレカ使えないのに新しい服は買えたんだね」
「結局ポケットの奥まで全部
「? ダメだったらフレンダどうなってたの?」
「……『
「ぎええ……。そ、そんなヤバいのまで
横で聞いていた
目的地はフィフティーンベルズ内にいくつかまとまっている映画館の中でも、クラシックなシアター。平日昼間とはいえ客が誰もいないのは奇妙だったが、疑問の声はなかった。そして照明を落として真っ暗になるとやたらと大きなスクリーンいっぱいに殺しの資料が広げられる。こう見えて『アイテム』の仕事は学園都市内の不穏分子の削除・抹消だ。
「あれ、暗い顔してどうしたんですかあ
「いや超別に……」
一体どこにいくつスピーカーを設置してこちらを取り囲んでいるのか、やたらと立体的な音質で『電話の声』が説明を始める。やっぱり相手の顔は見えないが。
『コロシアムって知ってる?』
「結局、武器も能力も使用オーケー、ルール無用の
フレンダ=セイヴェルンがあっさり言った。
即答できたのは、彼女自身ポップコーン片手に楽しんで眺める側だからかもしれない。
「会場は毎回バラバラだから尻尾は
「フレンダくわしい。すごい、ものしり博士」
「へっへー、結局死ぬほど褒めろ☆」
ピンクジャージのズレた言葉に、フレンダもフレンダでくすぐったそうにしていた。普通の感覚
『一応建前としては、大人の研究員の都合で決められる
ぴくりと
彼女はそういうのに目がないバトルフリークだ。
『バカが集まって勝手に殺し合う分には構わないけど、問題なのはそっちの子が言った高額賞金の方なのよ。優勝賞金は一五〇億。これって一体どこから出てくるものだと思う? まさか、ライブ配信の広告収入じゃあないわよねえ』
答えが返ってくるとは思っていないのだろう。三秒も待たずに『電話の声』はこう続けた。
『生命保険』
「……、」
うええ、という
『つまり参加選手全員に手取り億単位の高額な死亡保険を掛けてやってから、試合と称して全員ブチ殺し、優勝者一人に全額が集中するように制度を整えているってコト☆』
「あれ? でもそれ、選手はともかくコロシアムの運営側は超どうするんです。保険金の元手もありますし、絶対バレない通信インフラを整備して危ない橋を渡る以上、一番お金が欲しいクソ野郎は超彼らじゃ?」
『その子誰? まあ
「結局、生き残るためにホスト風男子とかチョイエロコスのお姉さんとかも多い訳よ。ああいう作戦に頼りきりな連中はファンから飽きられたら後はひたすら悲惨だけど」
『そうそう。あと稼いだ金を元手にSNS闇金とかインサイダー取引とか、無許可で色々手広くやっているわ。もちろんビビってリタイアした負け犬選手でも脅して、あちこち配置して支店長とか専門スタッフとか防波堤を作り、まあつまりバレても自分まで捕まる事のない安全地帯を構築した上でね。いやあー何にしても暗号資産ってやっぱり便利だわ。これだけ巨額が動いているのにちっとも追跡されないんだもん。そんな訳で運営は一五〇億程度じゃ興味を持たない。そっちのフレンダって子が言った通り、死亡保険の集約はあくまでも釣り餌よ』
「……私達『アイテム』にナニしろと?」
「まさか人殺しを止めてほしいとかって眠たい話じゃないよな」
『そんな馬鹿な。今回は食い物にされている保険会社からの依頼よ。保険金っていうのは、競馬なんかと一緒でお客に支払う額より預かる額の方が常に多くないと成り立たない商売なの。こんな短期間にバカスカ高額死亡保険を吐き出しちゃったらフツーに倒産の危機よ』
「だからそうなる前に蛇口を締めろって事か」
『依頼人の常務さんが言うには、方法については報告不要だそうよ。先方の保険会社に迷惑をかけない限りは自由にやれって話。つまり仕事のレギュはDOA、オッケー?』
これは
ふむ、と
(……運営は一五〇億程度じゃ興味を持たない。札束だか金塊だか暗号資産だか知らないが、つまりヤツらの金庫には、最低でもそれ以上の額が眠っているって訳だ)
「
『言っておくけど、能力アリでゴリゴリの選手達をスカウトしてるコロシアム運営サイドはその選手側から一斉に難癖つけられても対応できるよう、人には言えない高火力で身を固めてると思うわよ。つまり「
「ますます面白い」
話は終わった。
通話が切れると映画館全体が照明で明るくなっていく。
「結局
「てか、そっちとそっち」
フレンダの質問に、
「いきなり五人目が出てきたけど、まずはこいつら新入りの扱いから決めないと」