第一幕 コープス・リバイバー 5 ②
群体タイプの一部を除けば、同じ種族の
しかしロゼは、平然と続ける。
「その集団には、群れを統率するリーダーが存在するようです」
「クシナダってのは、そのリーダーの名前か……」
「そうです」
青髪の少女が、ヤヒロの言葉を肯定した。なるほど、とヤヒロは唇を引き結ぶ。
ロゼの話が事実なら、クシナダと呼ばれる個体には、間違いなく
「クシナダが、どのような手段で
「人類が
ヤヒロが皮肉めかした口調で言い放つ。しかしロゼは、ヤヒロの言葉を否定しなかった。
「逆にこの事態を放置すると、いずれクシナダに統率された
「人類の脅威……か」
ヤヒロは小さく鼻を鳴らした。ロゼの考えを
しかし、
既存の生物と同じように
二十三区内で餌が不足すれば、彼らが外部に獲物を求めるのは火を見るより明らかだ。
そして彼らが海を渡り、他国を
そうなる前にクシナダを捕獲する。理屈としてはおかしくない。クシナダの能力が金になるとわかっているなら、
「まさか、俺に、そのクシナダとやらを回収してこいって言うんじゃないだろうな?」
「できるの?」
警戒心を
「できるわけないだろ。旧・
「だよねえ」
双子の姉が落胆したように肩をすくめる。
「私たちもあなた一人にクシナダの回収を任せるつもりはありません」
双子の妹が、生真面目な口調で言った。
「二日後に大手の軍事企業〝ライマット〟が主体となって、クシナダ捕獲作戦が決行されます。我々ギャルリー・ベリトも、その作戦に参加する予定です。ですから──」
「ヤヒロには、道案内をお願いしたいんだよね」
ロゼの説明を途中で遮って、ジュリが
「道案内?」
ヤヒロは眉間にしわを刻んだ。道案内は回収屋の仕事ではない。GPSや
そんなヤヒロの疑念を見透かしたように、ロゼは小さく首を振り、
「クシナダの捕獲は、ライマットに雇われた民間軍事会社四社の共同作戦です。互いに協力するという前提ですが、指揮系統は独立しており、各社の部隊は独自の判断で行動します」
「要するにね、クシナダを手に入れるのは早い者勝ちってこと」
猫を思わせるジュリの大きな瞳に、好戦的な光が浮かんだ。
共同作戦とはいっても、実際に参加するのは民間軍事会社の社員や
「二十三区への侵入経験の多いあなたは、
ロゼが、ようやく本来の目的を明らかにする。
回収屋としての実績に加えて、日本人であるヤヒロは、
ヤヒロに会いに来たロゼたちが、民間軍事会社の
逆にロゼたちが今夜ここに来なければ、ヤヒロはなにも知らないまま、彼らに殺されていた可能性もある。だが──
「悪いが、断らせてもらう。俺は他人の命にまで責任は持てない」
ヤヒロは、きっぱりとロゼの依頼を拒絶した。
「あんたたちも、昼間の連中の雇い主だったのならわかってるだろ。俺はたまたま死ににくい体質ってだけで、他人を
「死んだ二人のことなら、気にしないでください。あなたの指示を無視して
ロゼが
そんな妹をフォローしようと思ったのか、ジュリが
「べつにヤヒロにくっついてなくていいって言っといたんだけどねー……二十三区に残ってたお宝を見つけて欲を
「私たちの生死にも、責任を感じてもらう必要はありません。危なくなったら、一人で逃げてもらって結構。ですが、あなたが案内を引き受けてくれなければ、私たちの生還率がいくらか低下するのは間違いないでしょうね」
ロゼが
ヤヒロは
青髪の少女の言葉は事実だ。ヤヒロは
それでも、彼女たちの作戦が無謀であることに変わりはない。一万分の一の生還率が二倍や三倍になったところで、なにか意味があるとは思えなかった。
「なにを言われても同じだ。そんなヤバい仕事を受ける気はない」
ヤヒロは強い口調で言い切った。そうやって拒絶することで、彼女たちが、クシナダ捕獲を諦めてくれればいい、と
しかしロゼの返答は、ヤヒロの想定外のものだった。
「あなたへの報酬が、
「なん……だと?」
ヤヒロは、ぞくり、と全身の血液が逆流するような感覚を味わった。
喉が
「あなたが二十三区から離れようとしないのは、妹さんを捜すためだと聞いています。回収屋の仕事で稼いだ金の大半を、彼女の情報を集めるために
「
ヤヒロがロゼに詰め寄った。ロゼは曖昧に首を振る。
「さあ、どうでしょうか?」
「答えろ──!」
冷ややかに
だが、その瞬間、ヤヒロの視界がぐるりと回転し、



