プロローグ3|《神宮寺那織の独白》 ②

 ところで私は、どうやらじゆん君をして、サブカル女子というくくりになるらしい。いやいやメインカルチャーも好きですけど。なにゆえにそうなった? ともかく、私はそういうあつかいらしいようである。全くもつだくりよう出来ぬ。

 く言うじゆん君も同類である。小説や映画、まん、アニメ等々が大好きで、私や時には友人を交えて議論したがる議論家……いや、語り屋だ。そうやってあれこれ議論することも大好きだけど、私は議論をしたくて物語を消費するのではない。ただひたっていたいのだ。

 私は幼いころから数多あまたの本を読み、色んな映画を、様々な音楽とともに育ってきた。

 たんてきに言おう。私のお父さんがそういうタイプなのだ。絵本や映画が好きだった私を、お父さんは照準線レテイクルの真ん中にえた。そして、英才教育をほどこした……と本人は思っている。

 思い通りになんてなるか、このめ。

 私はだまされたりをして、父親の蔵書やDVDやCDをかたぱしから消費してやった。

 むすめにとって父親をだますなんて造作もないことなのだっ。父よ、むすめを見くびるでない。

 私にられたお父さんは、じゆん君をターゲットにした。じゆん君はくんとうとはほど遠いお父さんの話をしんけんいた。来る日も来る日も耳をかたむけた。

 その結果、お父さんのしゆいろいだ弟子アプレンテイスが誕生した。

 じゆん君はフォースのダークサイドに落ちたのだ。許すまじ、わが父。シスの暗黒卿ダース・ヴエイダーめ。

 だから言わせてもらおう。じゆん君こそサブカルろうなのだ。

 大体、お姉ちゃんと付き合っている時に宇宙航空研究開発機構JAXAのシンポジウムをデートの行き先に挙げるようないささかヤバい人なのに、宇宙の話になった時、宇宙は最後のフロンティアだからなぁと真面目な顔で言う人なのに、好きな音楽の話になった時、クラフトワークは外せないなんて平気で言うような人なのに、私をサブカル呼ばわりする権利がどこにあるのか教えて欲しい。じゆん君の方がよっぽどサブカルのかたまりじゃん。

 それなのに、じゆん君は周囲からサブカル呼ばわりされない。まことに、はなはかんである。

 説得力の差? じゆん君はいつも学年トップだから?

 いえいえしよう私も、学年順位が五位以内からすべちたことはないのがまんですから。

 改めて言わせてもらうなら、やっぱりじゆん君は立派なサブカルクソろうだ。

 あ、私のはつこいの人の話ですよ、これ。

 まぁ、はつこいとかそういうのをきにしても、私にとってじゆん君は、仲間とか戦友とかしゆともとかそういうたぐいの人間って話。だから、私はじゆん君といて退たいくつだと思ったことはない。

 そうであるがゆえに、思うのだ。

 お姉ちゃんはじゆん君とどんな話をしていたんだろう、と。

 どんなコミュニケーションをとっていたんだろう、と。

 あのうんちくが服を着て歩いているような男の子とどんな風にデートをして、どんな風にいちゃいちゃしていたんだろう。私にはわからない二人だけの時間。

 なんとなく想像は付くけれど、それは想像でしかない。

 いつだってお姉ちゃんは私より先を行く。

 友達を作るのも、服が小さくなって着られなくなるのも、ブラジャーを着けるのも。

 そして、こいびとを作るのも。キスをするのも。

 全部、お姉ちゃんが先を行く。

 私はそこに出来上がった道を辿たどるだけ。妹の私はペンギン・ハイウェイを歩くだけ。

 でも、れつとうかんなんていだかない。私は私。

 私には私の勝ち方がある。

 テストの順位は私のが大分上だし、胸だって今や私の方が大きい。

 私には、私のやり方がある。細工はりゆうりゆうげをろうじろってね。

 ペンギン? いやいや。私は飛べなくなんかない。

 私はたか。みにくいのは最初だけ。最後は星になるんだ。そうでしょ?

 私のかがやきに目を細めるがい。高いところからなら、何でも見通せるんだよ、お二人さん。

 かくれたってだからね。

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