第五章

 夜空がよく見えなかった。


 ……ん?

 記憶の中というか、”憶え”の範囲としては、僕は座って夜空を見上げていた気がする。

 だけど今は違う。

 寝てる。何かソフトな質感が枕のように頭の下にある。

 そして視界の中、というか上側から中央下まで、左右に丸い影が二つある。

 巨乳を下から見上げて”デカアアアアアアイ!!”って叫ぶときは、こんな感じだろう。


「デカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアイ!」



 マジだ。


 これは巨乳を見上げたアングル。

 誰もが皆、画とかで見ると

「そんな画、ありゃしないって」

 ってなるけど、実際に撮影したりするとそのものになるというアレだ。

 デカい。そのことに驚嘆して、脳内撮影で三桁ほど連射していると、御持ちの方からの戸惑う声が聞こえた。


「え!? えっ!?」


 ヤバい。気付かれた。なぜだ。まあいい、撮影を急ぐ。

 というか本当だー。巨乳だー。うわあー。

 神よ。欲すれば、授けられん。いやそうなのか。本当か。というかいいのか。ええんか? ええんのか? これがええんのか? あアン!? いいよ当たり前だろう!


 ……というかワッツハプン!?

 恐らく僕は今、巨乳の誰かの膝枕攻撃を受けている。マズい。この攻撃は特定の趣味の人の特定の部分によく効く。効いた。あー駄目です駄目です。ホント駄目。


「あの、ええと、起きました?」


「寝てます! 寝てまーす! このまま! このままで!」


「起きてますよね!? ね!?」


 と確認の声が来て、確認の動作が来た。

 覗き込むように上半身が倒れてきて、つまり何だ、アレだ。巨乳が落下してきて、


 ……オウ……。

 つぶれる。サンド。挟まる。圧迫。顔面ナンタラってアレ。

 あ、駄目。死んでも良いとか思い始めた。このままだと窒息して死ぬけど、老衰より遙かにいい死に方だと思う。お爺ちゃん! 誰がジジイだ。まあいい。死因は巨乳の圧迫による窒息死です。皆多分、墓石を見て羨ましがるに違いない。


「あの」


 と、あっさり圧迫が抜けて、頭を左右からつかまれる。

 終わりだ。人生が今、終わった。そのくらいの忘失感。何だろう、この虚無は……。誕生日プレゼントに欲しいものが手渡されたと思ったら違う人宛だったとか、そのくらいのショックだ……。

 だがつまらない人生はこれからも続くらしい。僕は起こされ、そして振り向き、


「あの、ええと」


 という声を送ってくる持ち主を見た。


「…………」


 御隣の先輩だった。


 まさかの知り合い。


 やべえ。

 まさか知り合いとか。明日からどう生活すりゃいいんだ。

 落ち着け僕。

 僕があんなに騒いで、挟まってガクンガクン震えていたとしても、僕の社会的地位が失われるとは限らない。

 駄目か。

 ハードルを下げよう。警察に通報されないことを第一目標にした方がいいかもしれない。

 正面。見ると先輩は、顔を赤くして視線を逸らし気味だ。僕はそんな彼女を見て、


「いい……」


「え?」


「あ、ファイ! 何でもないです!」


 ええと、と僕は、とりあえず場を停滞させないため、言葉を作ることにした。まず頭の中に思いついたのは、


「体温、高めなんですね!」


「え?」


 僕は自分の頬を自分で叩いた。


 ……落ち着け!

 感想戦をやっている場合じゃない。とりあえず落ち着け。というか、


「先輩、……で、いいでしょうか」


「あ、はい。その方が」


 ……ウワア、他人の余所余所しさ抜群ですゥ……。

 まあ確認即ポリス行きより遙かにいい。他人行儀、いいじゃないですか! 

 じゃあ、と僕は、デカアアアアアイ! よりも話を逸らすため、別の言葉を作った。


「あの、先輩?」


「はい。何です?」


 疑問がある。


「先輩、何で、ここにいるんです?」



 間違った、と、そう思った。

 選択肢があるなら、恐らく、二番目だ。思い切りバッドじゃないけど、トゥルーに戻せる範囲でのバッドだ。そんな顔を一瞬、彼女が見せた。 

 そして先輩が、こう言った。


「ええと」


 考えて、


「上級プレイヤーは、始めたばかりの人を、フォローする義務があるんです」



 成程、と、そう思った。何となく、今までいろいろ聞いたことで、繋がった部分があるように感じたんだ。つまり、


「何か、いろんな人から聞いたんですけど、僕が、先にパートナーの神様選んでるとか」


「あ、つまり、そういうことです」


 えーと。


 ……僕は先輩を知らない訳だから……。

 この場合、システムはどういうこととなるか。考えるならば、


「……どういうことなんです?」


「え?」


「いやまあ、多分、このゲームを始めるとき、テキトーに何か連打してたら、先輩を巻き込んだとか、そういうことなのかな、って」


 何となく想像出来るのは、こういうことだ。


「恐らく途中で、上級プレイヤーのフォローを受けるかどうかの許可があって、それをよく読まずに連打して、そしたらそこでフォロー先に先輩が勝手に選ばれてしまったとか?」


「うーん……」


 ちょっと先輩が、首を傾げた。ああ、巨乳は意外と水平を保とうとするんで……、ああ歪んでる歪んでる……! エクセレント……。そういうの! そういうのです!

 凝視してるの間違いなく気付かれた。なので一瞬視線を切って、如何にも周囲に視線を回してる途中だった振りをして、


「えーと」


「はい?」


 お咎めなくこちらの話を聞こうとしてくれるとか、この人、菩薩か何かじゃないか……。

 だが、気になることがあった。図書委員長の言ってたことと、そこに繋がる事だ。


「先輩も、神様キャラなんですか?」



 問われ、彼女としては、こう思った。


 ……どう説明したものでしょう……。

 だけど嘘を言う必要もないし、隠す意味もない。これから長い付き合いだと思えば、


 ……うわあ……。

 何かいきなりとんでもないことが、しかし改めて始まった感を受ける。だが、


「まあ、当然、そうなります。私達の世代は、皆、それが普通だったので」


「あー」


 今の言葉が、何かを一気に解いたと、そう感じられたのだろう。彼は幾度も頷き、


「会う連中が皆、神様のクラスってかキャラだから、おかしいと思ってたら。そういう」


「どういう?」


「要するに、システムに追加があったってことですよね? 人間キャラが参加とか」


「ああ」


 と、今度はこっちが理解する番だ。確かにその解釈で間違ってない。だから、


「そういうことです。ええ。説明不足ですみません」


「あ、いや、こっちも、何かよく解らん内にこれ始めていて……」


 ……うん。

 そうでしょうね、とは思う。だが、それ以上を言っても仕方ない。ゆえに、


「――これから、頑張って行きましょう」


「あ、でも」


 何か疑問があるらしい。何かと思い、促しの間を作った。そのときだ。彼がこう、問いかけてきた。


「図書委員長が言うには、僕がパートナーに選んだ神様って、最強らしいんですけど、先輩、最強なんですか?」


 僕の目の前で、先輩が右の平手を立てて見せた。

 空いた手で、彼女は逸らした視線の先に、アレを出す。

 アレだ。何かマルチウインドウのアレ。


 思兼は、自分の傍らに啓示盤が開いたのを見た。

 学校敷地内のファミレスで、メニューを開いている最中のことだ。同じく向かい側にスケアクロウと、後輩の少女がいる。黒シャツの彼女が首を傾げるのを横に、スケアクロウが、


「思兼さん、受神来てます」


「ああ、解ってる。現場からのようだ」


 何事か。大体解っているが、とりあえず相手をすることとする。


『どうしたのかな一体。ははは』


『わ、笑ってますね!? というか思兼さん! 誰が最強ですか誰が! 私、貴女達に比べたらアウト組で、レベルだって激低いんですよ!?』


『その元気を彼にぶつけ給えよ。それにレベルが低いのはヒッキー気質の君の個性のせいだろう。レベル上げて、ちゃんとした強さを持つといい』


『また前途多難なことを……』


『まあ、君の幸せを祈っているのは間違いない。今度は上手くいくといい』


 僕の視界の中、先輩が光るウインドウをデコピンで割った。

 フウ、と一息入れて、しかしそれで気分を戻したのか、元の佇まいでこちらに身を向ける。そして、 


「あのですね」


「あ、ハイ、何です?」


「別に最強とか、そういうのじゃないです。神様キャラとしても、神道系ですけど、私のは、アウト組なんで」


「アウト組?」


 問うと、先輩が一瞬考えた。


 ……あ、いかん。

 言葉的に、ちょっとネガティブだ。これを本人に説明させるのは酷な場合もある。コーカン度がこれ以上下がったらポリス行きの道がまた開かれる可能性もある。だから、


「あ、いや、言わなくてもいいです。先輩がまあ、そういうのじゃないって事で」


 言ってみる。だが、


「うーん……」


 何かちょっと、こっちの認識差が駄目らしい。そして先輩は、


「ほら、神話って、いろいろな神が出るじゃないですか」


「えーと」


 すみません、よく知らない。明日、図書室に行くべきかな、って思う。しかし先輩は、ちょっと肩を小さくしながら、こう言った。


「……出てくる神様の中には、メインどころで暴れ回るのもいれば、名前が全くなくて、単にモブみたいに書かれる神様もいるわけなんですよ」


「先輩も、そういう?」


「いえ、私は一応、名前は出るんですけど、そこで出番終了というか……」


 ああ、と納得した。


 ゲームだ。

 上手い人と、下手な人が確実に別れる。また、要領の良し悪しも、だ。

 上手ければ、強くなれる。下手な人は、弱くなるわけではなく、強くなるのが遅い。

 だけど、


 ……強いプレイヤーから順に、クラスとして獲得できる神が決まっていくとしたら?

 恐らく、雷同先輩達は、廃プレイヤー級で神だ。

 でもそうではないプレイヤーは?

 答えが目の前にいると、そう仮定する。つまり、


「先輩は、そういう神を獲得したというか、襲名したというか、そんな感じなんですね」


「素体の時点では、あまり差がなかったと、そうは聞いてますけど」


「じゃあ」


 と僕は言った。


「先輩の名前、聞いていいですか」


「え? あ、……駄目です」


 かなり迷って、そう答えられた。


 あ、間違った。

 否、これはホントに、無意識で間違った。

 僕は、先輩の本名と、プレイしている神の名前と、どっちを聞きたかったのか、実際には決めていなかったからだ。

 何となく、先輩という存在を確認するために聞いてみようと、そう思った。

 だから否定が来たのだろうか。否、そうではないとしても、


「神道は、名前がその存在を表しますから、……教えるなら、お互いがもっと強くなってからの方が、安心だと思います」


「それは――」


「私みたいな神でも、能力がある訳です。そしてそれは、名前から介入して借り受けたり、奪ったりも出来ます。もしここで、迂闊にそれを言って誰かに聞かれていたら、お互いの今後に差し支えがあります。だから名前を明かすには、聞かれていてもそれを奪われないくらいの強さをもってから、と、そうしたいです」


 凄く解りやすい。だとすると、


「じゃあ、先輩で」


「はい。それで」


 成程。そう納得して、しかし疑問が残った。


「でも、だとすると、何で図書委員長は、先輩を最強って言ったんですかね」



「それは……、何ででしょうね……」


 思兼さんはまた面倒なことを、と思ったが、ふと気付くと、彼がこちらを見ていた。

 胸を凝視されている。そして、


「最強……」


「え?」


 と声を上げると、彼が、はっとして視線を合わせてきた。


「あの、何となく、今、解りました。何が最強なのか」


「いや、あの、ええと」


「アーいいですいいです! 言わなくて! これは本人には口に出して言いにくい事です! 僕には最高の信仰なので大丈夫! そういうことで!」


 そういうことになった。 

 ただ、彼がそれで良くても、こちらとしては引っかかりが一つある。それは、


「あのね? 住良木君」


 狡いなあ、と自分でも思いつつ、問うてみる。


「今更ですけど、私でいいの?」



● 

 愚問だ……。

 いいに決まってるじゃないですか! 巨乳で御隣ですよ! しかも流れ的にあれだけやらかしてポリス案件になってない! あり得ない! だから有りです!

 だけどこれを口にしたらポリス案件になる気がする。

 しかし僕は思う。先輩が言っていることは、多分、そういうことじゃないんだ、と。いや、多分じゃないよ! 絶対そうだよ! 世界の誰もが自分と同じと勘違いするな。良いこと言うなあ、僕。ハイ次の方どうぞ!


「えーと、どういうことです? 先輩」


「うん」


 あのね、と先輩が問うてくる。


「まだ、始めたばかりだから、チェンジ効くと思うんです。だから――」


 だから、


「レベル低くて、名前もアウト組みたいな私で、いいの?」



 ああ、そうか。

 僕は思った。先輩は、大事な事が解ってない。そりゃ、信仰とかいろいろあるけど、


「僕の処に来る、というのも、また、選択ですよね」


 馬鹿な後輩。不慣れなプレイヤーのフォロー。自分のリソースを奪われる訳だ。


「それを承知で来てくれたんだから、僕はその神様が一番いいです」


 言う。

 そりゃそうだ。承知で来てくれたなら、お互いが尊重し合える。それは対等で、共通の目標なども持てるってことだ。何かあっても信じていられる。

 だけどこれが能力頼りに選び直したら、僕はその相手の能力に服従だ。相手が能力を振るうとき、僕はそれを肯定しなければならない。

 無論、先輩は強くない。自分でそう言う。だけど、さっき、こうも言ってくれた。


「お互いがもっと強く。――それが僕達の”承知”ですよね」


 いきなり泣かれた。


 ……待ったア――――――!!

 訳がわからん。それとも何だ、弱いとかアウト組とか、それほどカーストの圧迫プレイがあって、そこからの解放運動的な言葉が心を揺さぶるとでも言うのか!? そうなのか!?

 だが、僕としては巨乳の美人で御隣さんを泣かせるとか人生初というか役満のドラ八くらいをフリ込んだような気分になって、


「あああああああああのあのあのあの、せ、せ、センパィィ?」


 後ろ上ずった。だけど先輩は両手で顔を覆ったまま首を左右に振る。


 ……すると人間工学的に、両肘に挟まれた巨乳が歪んで、復元して……。

 駄目。駄ー目。今は信仰の御時間じゃありません。脳内マルチタスクでメインは心配、撮影はサブ! そういう区分。めっ。

 ということで宥めようと、そう思っていると、いきなり背後の遠くから、


「泣かしたア――――!!」


 聞き覚えのある声がスっ飛んできた。


「く……!?」


 ポーズつけて振り返ると誰もいないが、チキショー、誰かというかあの連中、覗きに来てやがるな!? 覗き趣味とはふてえ野郎だ。僕が覗きをするときは例外とする!


『紫布先輩! リアクションするにしても大声は駄目ですよ!』


『いやあ、まさかいきなり彼女チャン泣かすとかどういうことヨ――』


『つーかあの女、いきなり名前ポロっとしなくて助かったよ俺。俺、一応、不意打ち対策にパッシブで相手の名前とか取得するスキル設定入れてっから……』


「油断も隙もないなあ……」


 と一息ついていると、先輩が泣き止んでいた、というか、泣きよりも笑い気味の泣き笑いになっていた。


「心配で見に来たんでしょうね。……でも、さっき名前言わなくて良かったです」


「あー」


 やはりそこらへん、用心があるのか。図書委員長が言っていた”神道系は究極的な味方”という言葉を思い出すけど、それでも尚、先輩は僕との間でも用心をしてるというわけだ

 信用できる、そう思った。だから、


「先輩」


 座り込んでいる彼女に、手をさしのべる。


「これから一緒にやって行きましょう」


 言うと、先輩が手を握り返してきた。


「はい」


 そう言われ、僕は気付いた。


 ……女の人に手を握られるとか、初めてだろうよ……。

 ヤバい。もう、手から異臭がするまで洗わない。これは僕との約束だ。だが、

《神格が上がりました!》

 いきなり、先輩の周囲にさっきのウインドウがいくつも開き、咲いて散った。


 ……う、うわあ……!

 慌てたのは、自分の名前が何処かに表示されていないかということだった。だが、


 ……だ、大丈夫!

 名前のところに”7代+3代”と書かれているが、セーフ。このくらいならたくさんいる。

 ただ、今ので格が上がった。自分はレベルが低いのだが、”格”が上がるのはちょっとすごい。上がった条件としては、彼との関係を確約したという、それだけだろうに。

 つまりイベントでレベルアップと、そういうことだが、


「凄い……」


「え? 何がです?」


 何か手を離さない彼がちょっと気になるが、まあそれはそれとして、今起きているのは、こういうことだ。


「住良木君が、私と関係したので、神としての私の”格”が上がったんです」


 彼が首を傾げて動かなくなったので、説明が必要だと思った。


「えーと」


 どこから話したものか。そう思っていると、


《あー! すみません! 出遅れました! バランサーです!》


 線で単純な顔を描いた啓示盤が出た。

 ……あ。

 ようやく出てきたというか。出てきちゃうんですね、というのもちょっと本音。だけど、


「運営ですからね」


《そうです! このテラフォームの運営! いろいろ用意は出来てきていると思うので、私から説明するタイミングだと、そう思いました!》


「どういうこと?」


 彼が疑問するが、こればっかりは任せた方がいいかもしれない。


「何かいろいろ解らないことあると思うんですけど、ここで説明なので」

 

「ああ、説明ターン……」


 そういうことだ。


 バランサーと名乗ったそれは、AIだと自分を説明した。

 まあ、多分、正確には違うんだろうけど、その方が理解が早いと言うことは多々ある。だからこっちもその流れで聞くことにする

 先輩と共に聞き役に回る場所は、用意があった。

 岩屋だ。

 さっきから先輩と人生史上初のイチャイチャをしていた訳だが、その場所は何と前のように溶岩の上ではなく、固まった火山岩って言うんですか? まあ、冷えて固まった岩棚の上だった。そしてそこに、同じ岩を使って出来た小さな小屋があった。

 小屋と言っても、その形をしているだけだ。

 壁があり、窓のような穴があり、ドアが入っていないような、入り口がある。屋根もあるのは上出来で、何となく、これを作った人が一気に作ったような、つまり楽しんでテンション上げてたような、そんな感を受ける。

 壁も結構、平滑で、


「明かりは――」


《あ、私が出しましょう》


 天井の中央に、ウインドウ……、啓示盤というらしい。その一枚が発光用として表示された。何か魔法だなあ、と思うが、岩屋内に据え付けられた岩の椅子に僕達は座る。


 ……お? 何か暖かい?

 地熱だろうか。そして今更ながらに、先輩が新型制服だと気付く。

 最高です……。

 そんな満足をしていると、バランサーが軽く回りながら、こう告げた。


《では、とりあえず現状の基本的な理解、または神界での生活も出来ていると判断しましたので、最低限ではありますが、説明を致します》


「どういうこと? このゲームのこと?」


《あ、ハイ、このゲーム、ゲームとしておきましょうか。ここまで神界も含めて進行してきましたが、これ以上進むと齟齬が生じるのです》


「齟齬?」


《イエス齟齬》


 ……齟齬が生じるようなこと、あったか……?

 じゃあ、とバランサーが言った。


《この世界は、こっちが本物です。

 また、この世界において、人間は貴方一人だけです。

 他は皆、神と呼ばれる存在です》

刊行シリーズ

EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩の超能力学園OO〈下〉の書影
EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩の超能力学園OO〈上〉の書影
EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩のウハウハザブーン〈下〉の書影
EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩のウハウハザブーン〈上〉の書影
EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩の惑星クラフト〈下〉の書影
EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩の惑星クラフト〈上〉の書影