05 木曜日 ③
VRHMDを外してベッドから起き上がる。部室にあったゲーミングチェアが羨ましい。ああいうのの方が疲れないよな。
起き上がって部屋の扉を開けると、自分のVRHMDを抱えた美姫が不思議そうな顔をしている。
「どした?」
「いや、賢者タイムはもう終わったのか?」
「お前なあ……。で、なんの用だ?」
そう問うと、美姫が俺の椅子に座ってVRHMDを被る。まあ、俺も被れってことなんだろうな。
「ここに映っているのは兄上ではないのか?」
俺が被ったのを確認して、動画を一つ取り出して再生する美姫。その動画は……
「あー……、お前、これ誰にも言ってないよな? さえずったりしてないよな?」
「うむ、兄上だろうと思ったので伏せておる。それに姉上が言っていたのはこの
「はー、助かった。しょうもないところから身バレするとこだった。しかし、よくわかったな」
IROのキャラ名はいつも通りのショウだけど、髪型も髪色も変えたゲームキャラになってるし、喋りだけでバレると思ってなかったわ。
「くっくっく、我の目を誤魔化せると思うなよ」
「お前も始めたんだ」
「兄上と遊びたかったところだが悩みどころよのう」
チラチラと目線でアピールしてくる美姫。
「あれ部活だし、黙っててもらえると助かるんだけど……」
「それは対価があればなのだが?」
「……明日何が食いたい?」
「サーロインステーキ!」
そう言ってニヤリとして手を差し出してくるので握手。
大幅な予算超過になるけど、その分は親父に請求しておこう。美姫のためだって言えば通るだろうし。
「まあ、それは良いが、再生数もチャンネル登録者数もすごいことになっておるぞ。珍しい内容なのもあるが、次に期待させる動画よのう」
そう言われて確認すると。
「え、再生数一〇万突破してる!? 登録者数も三〇〇〇人近くまで来てるし」
放課後に確認した時からの伸びがすごいことになってる。やべえ……
「我も登録しておいたからの。それで次の動画投稿はいつになるのだ?」
「うーん、どうだろ。今日、編集作業してたし、明日か明後日にはあがると思うぞ。……このことも内緒だからな?」
「わかっておる。我のサエズッターで拡散する必要もないのだろう?」
「ああ、正直、最初の動画がこんなに跳ねるって思ってなかったんだよなあ」
もうちょっとこう、徐々にって計画だったんだけどな。
今日の部活であったことを美姫にも話し、俺のプレイがスローライフメインだと伝えておく。
「ふむ。だが、我が兄上のいる島まで行けば遊んでくれるのだろう?」
「前も言ったが、来られたらな?」
「ふむ。すぐには行けぬだろうが、IROのプレイに目標ができた。キャラを作ったはいいものの兄上は見つからぬし、どう遊んだものか悩んでおったのでな」
そう言って笑う。
「あー、すまん。変なこと言わなきゃ良かったな。てか、お前、友達とかとやんないの?」
「我は受験生なのだが?」
「そうでした」
周りはこれから高校受験に向けてペース上げていく感じだし、今からMMORPGっていうか、ゲームに誘うのはなあ。
「で、大事な話が聞けてないのだが?」
「ん? まだなんかあったか?」
「このミオンというのが
「はい……」
結局、美姫にミオンのことを根掘り葉掘り聞かれ、それが終わる頃には日付が変わってた。
風呂入って寝よ……



