07 土曜日 ③

〈はい、見られましたよー。あ、私からの質問に答える必要はないですからねー〉


 グループ通話でヤタ先生の声が聞こえてきたけど、答える必要はないらしい。まあ、ミオンとしか話してないって前提だもんな。


「ルピ、ご飯な」

「ワフン」


 お約束となった兎肉をひき肉にしたものを渡すと、がつがつと美味しそうに食べてくれる。

 俺は昼に料理スキルを上げるのに作って食べた分で十分だし、ルピが食い終わったら罠の確認に行くかな。


『お昼に仕掛けた罠の確認ですか?』

「うん、そのつもり。まあ、そんなすぐに何かがかかってるとは思えないけど」


 ルピがひき肉を平らげ、しっかりと水も飲んだところで、いざ出発。


「ルピ、見回り行くぞー」

「ワフン」

〈ルピちゃんってかなり賢いですねー。調教スキルが上がればー、もっと賢くなるんでしょうかねー?〉


 答えなくていいって話なのに質問されると困るんですけど……と思ってたら、


『ルピちゃん、本当に賢いですね。調教のスキルレベルが上がるともっと賢くなったりするんでしょうか?』

「あー、うん、どうだろ。今のままでも十分賢いし、可愛いからいいけどね」


 なるほど、ミオンが代わりに質問すればいいのか。っていうか、ヤタ先生がそう持っていったって考えるべきかな。

 ライブの時に出た質問を拾って俺に投げるって感じで。


 しばらく歩いて一番近い罠の場所に到着。けど、作動した様子は全くなし。

 この辺はバイコビットも滅多にいないし予想通りかな。


「じゃ、次へ」

『はい』

「ワフ」


 もう少し先にある次の罠設置場所へと向かう。


「お?」

「ピスッ! ピスピスー!」


 見事に後ろ足をられたバイコビット。敵意しなんだけど……


「ルピ」

「ワフッ!」


 ジャンプして首筋をガブッと。ルピの重みで垂れ下がる蔓を途中で切ってやる。


『ちゃんと罠にかかってましたね!』

「意外とうまくいくもんだなあ。いやまあ、ゲームだからなんだろうけど」


 解体して肉と毛皮を手に入れた後は、罠の残りを回収しておく。ここはあくまで試しだし。


〈罠猟師みたいですねー。本当にスローライフっぽくなってきましたー〉


 ヤタ先生の感想が聞こえてくるけど、衣食住全部最低限できてるだけだからなあ。

 こう、山小屋作って、ウッドデッキでゆったりコーヒーとか飲みたい……


「よし、次行くか」

「ワフン」


 少しずつ奥の方へ。一番奥はゴブリンの集落がギリギリ見えるあたりに設置したので、ひょっとしたらって可能性がある。


「そういえば、あそこにいるゴブリンって倒してもリポップするのかな?」

『リポップ?』



〈倒した分の新しいモンスターがわくことですねー。ちまちま倒しても数を減らせないっていう問題がありますよー〉


 ヤタ先生のいいフォローが入る。ってか、顧問やってるだけあって、先生もかなりゲーマーっぽいよな。


「倒しても一日ったら元の数に戻るってなると、一気にせんめつしてクリアフラグ立てないとなんだよな」

『なるほどです。でも、その島がお一人様専用なら、そんなにすぐにリポップしないんじゃないかと』

「ああ、そっか」


 それでも、できれば一時間ぐらい、最悪二時間以内に全滅させたいところ。それオーバーすると翌日に持ち越しとかなって、絶対にリポップしそうだもんなあ……


◇◇◇


 三つ目、四つ目の罠は空振り。で、五つ目には……


「うわ、ゴブリンが吊られてる」


 足を括られ吊られたゴブリンがだらーんとしていて、失神してるっぽい。

 グラフィックが割とポップだからいいけど、リアルだったらドン引きだったろうな、これ。


「あー、気分悪くなったりしてない?」

『はい。ゲームですし』


 女の子の方がこういうの強かったりするかな。ともかく、サクッと倒しておこう。


【短剣スキルのレベルが上がりました!】


「あっ……」


 こんなのでスキルレベル上がるのも微妙なんだけど、それはそれということでいいか。


『解体しないんですか?』

「あ、そうだった。って、何が手に入るんだ?」


 蔓を切って下ろし、解体してみると……


【魔石(極小)】


「魔石って何?」

『街だと冒険者ギルドや魔術士ギルドで換金してくれるアイテムですね』



〈本当に攻略サイトとか見てないんですねー〉


 はい、ネタバレが怖くて見てません。


『ショウ君は攻略サイトとか見てないんですか?』

「うん、全然。まあ、わからないことあったら聞くのでよろしく」

『はい。任せてください』


 ミオンはプレイはしないけど見てるのかな? 俺は一人でやるって決めた時から、わからないことはナットにでも聞くかって思ってたけど。


「で、魔石って使い道あるの?」

『今のところは換金以外の用途は見つかってないみたいですね』

「じゃ、とりあえず持っとこうかな。この島だと誰かにられることもないし」


 テントの中に置きっぱにしてあるものも特に消えてなかったのすごいよなあ。一応、家だから? 外にほったらかしだったら消えんだろうか……


「ワフワフ」

「ん? どうした?」


 ルピが木の根元のあたりを前足でちょいちょいと……何かあるっぽい?

 しゃがみ込んで草をかき分けると……


「おおおっ! カナヅチ!?」

『落ちてたんですか?』

「うん、落ちてたっていうか、ゴブリンが持ってたのを落としたのかも」


 そういや、あの集落、あんまりちゃんと確認してなかった。作戦決行前にもっとちゃんと調べに行かないとだ。


〈人型で群れるモンスターは武器や防具などを落とすこともあるのでー、戦利品はしっかり確認した方がいいですよー〉



『もっと他に落としてる何かがあるかもですね』

「確かに。ルピ、他に何か落ちてるか?」


 そう聞いてみると、嬉しそうに少し離れた草むらへと駆けていく。


「ワフ〜」

「お、ナイフ……にしてはボロボロだな。うーん……」


 えーっと、【刃こぼれしたナイフ】か。研ぎ直せば使えたりするのかな? いしってどこかに落ちてる物なのかもわかんないけど。


『直すよりはそのまま石工とかに使うのはどうでしょう?』

「ああ、そっか。カナヅチも入ったし、ノミだと思えばいいのか」


 今のところそんな複雑なものを作る予定もないけど、あって損ってことはないし。

 えーっと、他に何か落ちてたりは?


「ワフン」

「おけ。じゃ、次行くかな」

『はい』



◇◇◇



「んー、いったん戻ろうかな。今って九時過ぎぐらい?」

『です』


 残り七箇所の罠を見て回って、バイコビットが二匹にゴブリンが一匹。

 兎肉と毛皮、ゴブリンの小さい魔石が一つで収穫としては微妙。カナヅチとか手に入ったのが良すぎただけかも。

 そっちよりも、キャラレベルが上がったのと、気配感知、気配遮断、罠設置・解除のスキルレベルが上がったことの方が嬉しかったかな。

 BPはまた全てステータスへ。今回はDEXに3、STR・INT・VITに2ずつ、AGIに1、LUKはいつもどおりスルー。ちなみにSTRが増えたからといって筋肉ムキムキになったりはしないっぽい。


「ルピ、帰るぞー」

「ワフー」

〈本当にMMOをやってるのかわからなくなってきましたねー〉


 なんかヤタ先生が呆れてるんだけどスルー。答えなくていいんだし。

 キャラレベルにしてもスキルレベルにしても、この島で一人のんびりスローライフを送るために必要な分は上げたいけど、それ以上に無理をするつもりはないかな。

 帰り道もパプの実やらを採集しつつのんびりと。そういや、応急手当はともかく、調薬は薬の作り置きができるんじゃ……


『荷物を置いて、また罠の設置ですか?』

「ううん、時間も微妙だし、調薬を試してみようかなって。ヒールポーションとか作れるんだよね?」

『はい。でも、材料はあるんでしょうか?』



〈ベルさんがいる王国ではー、ヒールポーションはコプティという野草からですねー〉


 あー、そもそも植生が違ってるのか。一応、この無人島は通常プレイでスタートできる国と緯度的に同じなんだけどなあ……


「じゃ、やってみるしかない感じかな。……どうやるんだろ?」

『コプティからヒールポーションを煮出すそうです。調薬に熱心なプレイヤーさんがいるみたいですね』

刊行シリーズ

もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ6 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ5 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ4 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ3 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ2 ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影
もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~の書影