第1話 アキラとアルファ ⑧
アキラが不愉快な気分を紛らわす為に軽く尋ねる。
「そういえば、クズスハラ街遺跡で倒したモンスターは何て名前のやつなんだ?」
『ウェポンドッグよ』
「……えっ? 全然違うように見えたけど、あれも同じ種類のモンスターなのか?」
『恐らく自己改造の仕様変更に失敗した個体なのでしょうね。だからアキラでも倒せるほど弱かったのよ』
「あいつ、見掛け倒しだったのか?」
『そこは解釈次第ね。あのモンスターにはアキラでも倒せるような致命的な弱点があって、幸運にもその弱点を衝いただけかもしれないわ。アキラが今からあれともう一度戦っても問題なく倒せるって言うのなら、見掛け倒しって解釈でも良いと思うわ。
「絶対無理だ」
『それなら、それだけ私のサポートが凄いってことね。感謝してくれても良いのよ?』
どこか得意げに
「ありがとうございました」
感謝は本心だ。失態を補ってもらった恩もある。だがその感謝を笑って催促されると、それを素直に表に出すのは、いろいろと捻くれているアキラには少々難しかった。
『どう致しまして』
アルファはそれを察したように、その上で少しからかうように、楽しげに笑って返した。
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ハンター稼業の一日目。アキラはアルファと出会い、命賭けの遺跡探索を何とか生き延びて、無事に都市まで帰還した。
この日から、アキラとアルファの数奇なハンター稼業が始まった。



