02:素敵の距離÷2
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告白の木というのが、ありますよね。
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その木の下で好きな人に告白をすると、それが
よく考えたら一方的な効果の呪い系アーティファクトだと思うけど、これがうちの町には三本もあります。
一本あれば充分でしょう。住人どんだけ発情してるんですか。否、発情してないから町全体でそうやって盛り上げようとしてるんでしょうか。明らかに余計な
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というか〝告白の町〟とか放送されてると死にたくなりますよね。もうインタビュアーが楽しそうに犠牲者とっ捕まえて人生全てがハッピーだろオマエみたいな質問してると、あの日あの時あの場所に行ってなくってホント良かったと思う。
一回食らった。
「アーソウデスネー。ワタシモイツカソンナキカイアルカナー、ナンテー」
ないです。
死ね。
あ、すみません。本音が二文字でそれが全てで。人生シンプルに生きたいのです。
ザッツ告白の町。死にたくなりますね……!
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でまあ告白の町ですよ。
学校が〝外〟の子
「エー! アンタあのコクり推しのトコ住んでんの! やっぱそういう土地な訳!?」
とか。
いや、〝そういう土地〟ってどういう土地ですか。
住民が皆、告白して結婚してるとか、ぶっちゃけ恐怖の町なんですけど。調査すると住民の脳に寄生虫か何かいる土地じゃないですかねそういうの……。
ただ何か、ディスられてる訳じゃなく、「いいねえ!」とか「カワイー!」とか言われるんですが、脳に寄生虫がそんなにいいんでしょうか。カワイイですか寄生虫。まあ寄生虫かどうか知りませんけど。
つまりここまで言ったこと大体忘れていいです。
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ただ、どうすれば正式に告白の効果があるのか、
うちの学校で何となく定説になっているのは、
「告白の木、三本、全ての下で告白をすれば、思いが通じる」
というものです。
そんな無茶な……。三段ロケットか何かですか。何処まで高みに昇るんですか告白事業。
というか、三本も連れ回せる仲だったら、そもそも一本目から
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ちなみに一本は、うちの近くにあります。
私の住んでる家の裏手に、結構急な勾配があって、その上。
高低差四十メートルくらい?
神社というかそれなりの御堂があって、その横に一本、大きいとは言えないような、何か中途半端なのがあります。
告白の木ってので、小学校の時に、ええ、まあ、当時は〝ないです〟とか、本音が二文字じゃなかったので調べた訳ですよ。そしたら由来がありました!
「ナンタラの戦いの際、逃れてきた落ち武者がこの木の下で敵の大将の名を恨みながら死んだので、以後、この木は成長しないとされ、町の七怪異の一つとされてます」
やりました! 呪いのアーティファクトでしたよやはり! ビンゴ呪い!
誰ですかコレを告白の木とか言い出したの。成長しない木? 精神年齢のことですか一体。というか七怪異の後六つどれですか一体。他の二本がそうですかねー……。でもそれでもあと四つあるんですよねー……。
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で、もう一本は、ちょっと離れます。
うちの町は、中央を東西に流れる川によって削られた谷。その谷底というか、広い盆地にあるものでして、うちから見ると対岸が存在するんですね。
三百メートルくらい離れた位置に、やはり同じような勾配があって、その上にまた同じような木があるんです。
それがもう一本の告白の木。
こっちも背丈中途半端なんですけど、調べてみると由来がありました。どうも、前の戦争で空襲あったとき、何か、町には爆弾落ちなかったらしいのに、これにだけ落ちて、町の人々は「身代わりになってくれた!」って新しいのを植えたとか。
──って、お前らか! お前らですか!
というか当時の写真が残ってて、見るともう全開で「人生超ハッピー」って顔した
でもよく考えたらこれ「新しい身代わりを植樹」って事じゃないかな……。戦争はマジいけないですよね。戦後においても遺恨を残します。ええ。要らん一本が追加されるとか。ホント勘弁して欲しい。
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さあ、最後の一本! お待ちかね!
そのもう一本は、町の中央にあります。
私が今、通っている高校の手前。公園にある木がそれ。
学校の正門前にあるとか、告白の木としては衆目最高過ぎて致命的な気もしますが、まあそんなところで告白出来る双方だったら、落ち合う約束した時点でゴールインじゃないかって気もします。
この木は、別に由来もなく、フツーに公園の木で、ちゃんと成長してます。よーしよしよし、他の変なのと違ってまともですよー、ってせいなのか、たまに見かけます。下にいる男女というか、寄生虫派の人々。
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そして私もその御利用者の一人だった訳ですよ。
そして御利用
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あ──。
思い出すだけで
コンビニの中とかで不意にリフレインして、
「あッ……、ァエヘン!」
とか変な
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つーか若かったです。
ほら、恋愛とか憧れてた訳ですよ。漫画とかドラマを、中学入学祝いで買って
そういうのの、
中学一年だと、どのくらい〝若い〟って
いけます? どうです? 五年
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まあ当時は純粋で、いろいろと信じていた訳です。
着いた腹の肉は十代前半だったら成長に伴って消えるとか、推しは絶対結婚しないとか、信じてた訳ですよ。ええ。クソ。あ、いや、何か嫌な事があった訳じゃないです。
FCで作られた引退記念のCDはまだ聴いてませんけど弱い私を赦して頂きたい。
で、当時の最強に強かった私は、何か世界が全て残高ありまくりな心持ちになっていて、クラスの男の子、ああ、運動系に入って何か超目立ってたその子がよく話掛けてくるので、何かそういう風だと思った訳ですよ。
丁度、読んでいた漫画で、似た展開があった訳です。
その真似というか再現があるんだと、そう思った訳です。



