04:嘘で叶える約束
●
学校の桜の木の下には、死体が埋まってるって、そういう話。
●
よう、幽霊です。
男だよ。残念だったな。
何か期待したか? ともあれお
桜の木の下は日陰になってるから、運動系の部活の女の子
アー短パン! 短パン! いいですね! 意外と隙間があります。
幽霊って、気付かれないから見放題って感じで、いいなあ! 自由だ!
●
まあこの学校の学生みたいなことやってんだけどね、俺。
気付いたら、深夜の病院にいて、ベッドに俺が寝ていて、外に出られて、
だからやって来て、もう三年か。
何となく、この姿での生活も
というか、この状態になったときはアレだ。スモックって言うんですか。裸エプロンを全身で
●
だけど一年もすると服装の変え方も何となく解って、マッパでもバレないってことに気付き始めた。
何しろ、誰もこちらのことが見えないのだ。
本当かどうか試すのに、マッパで女子剣道部の試合現場に入ってみたら、股間を突きで貫通されたが、アレは見えていないのだと信じてる。というか見えててアレぶっ込んで来るのは怖えよ! 少し
●
とはいえ、たまにはちょっと見えるというか、感じられる連中もいるらしい。
たびたび、自分が〝いる〟かどうか、何となく自覚持てなくなって、木の下でマッパになって、
「アー! 開放感──!」
とか叫ぶと、ホント、たまにこっちに振り返るのがいる。
女の子だと
でも、それでも、こっちが見えている訳ではなく、声がちょっと聞こえた気がするとか、そういうことらしい。
また、近寄ると、人によっては冷気を感じるようでもある。
なので、正門通りをこっちに向かってやってくるイチャつきどもには、後ろから不審者ムーブで近づいていって一発クールダウンさせてやるのだが、
「正門通りで妙な冷気を感じた場合、それは
とか、変なジンクスが学祭の時に発表されてたんですけどォ。それ俺でーす! 俺で──す! 上手く行けとか思ってませんン──ゥ! 滅びればいいとか思ってます──ゥ!
●
でも何だよ俺、幽霊ちゃんとやってるっぽいじゃん……。
●
あ、一応、テレビにも出ました。
何か、地方の夏の納涼とか何とかで。桜の木の下に幽霊がいるとか。
勝手に取材したらしく、後で局から謝罪あったとか何とか。
でも俺、ずっと全裸だったけど、映ってなかったようでな……。
●
で、三年もやってると、勉強も解ってくる。そりゃそうだ。
別にここに縛られてる訳じゃないけど、知覚されないので、友人という存在を持てない。
人付き合いというのは、多分、
それが無い上で学校に居続けていると、いろいろと学ぶしかなくなる。
授業を受けて、他の連中がやっている部活を眺め、また桜の木の下で一晩を過ごす。
●
記憶が無えんだ。
というか多分、閉じてる。
本当はあるんだろうけど、思い返したくないというか、それをしちゃいけないとか、そんな鍵が掛かっている。
だから、いろいろな知識はあるんだけど、自分のことや、他人のことはよく解らん。
学校前の通りとか、病院までの道とか、明らかに途中のコンビニに寄った経験はあるようだけど、自分の家とか、友人周りは憶えていない。
「俺、友達がいなかった系の人では……」
考えてみたが、今、コンタクトを取る方法がないから解らない。
じゃあまあどうでもいいか、っていうのが現状の感じだ。
●
よく考えたらコレも独り言か……。
いや、春になって、さっき始業式に付き合ってきたから、自己紹介気分なんだけどな。
●
そしてこんなのを三年やってると、やはりそれなりに
桜の木の下の幽霊と、そういう話だ。
特に、この桜が咲き出した春、新入生に、在学生がこっちを指差しながらそういう話をしていて、
「ここね? 幽霊が出るって、そういう噂なんだ」
ああ、いるいる。いるよー。お前が指差している位置に全裸の座標を移動……!
いいね幽霊。誰も幸せにならないけど、誰も不幸せにならない気がする。



