第5話 岩城理事長 ②
「
他は、戦士、魔法使い、僧侶、盗賊ばかりだから、あの三人が留学生のトップ3だと思う。
レベルも、他の留学生たちに比べると5~10は高かった。
「しかし……」
賢者の少女は、どこの国の人なんだろう?
日本人にしか見えない……。
ああ、そうだった!
確か
きっと俺が、
「あの人たちは成績優秀者。俺はEクラスの落ちこぼれ。お知り合いになる機会はなさそうだな。さあて、今日もお仕事お仕事」
この日も、
「もうすぐ、日本にあるダンジョンは全部最下層まで撮影できそうだな。ダンジョンコアコレクションを見ながら食べる半額弁当と謎メーカーの安いウーロン茶は
夕食を終えてからダンジョンで手に入れた錬金術の本を少し読み、明日に備えて早めに就寝するのであった。
「ダンジョン探索『後』情報チャンネルですが、今日は
メインのダンジョン探索情報チャンネルと、サブのダンジョン探索『後』情報チャンネルの視聴回数は順調に増えていた。
毎月驚くほどの金額が会社の口座に振り込まれるが、元々あまり無駄遣いをしないタイプなので、預金は増えていく一方だ。
会社の口座なので勝手に使えないけど、便宜上、支払われている俺の給料も使いきれなくて困っているくらいなのだから。
「そういえば、あの話は受けようかな」
動画投稿サイトを運営しているアメリカの企業が仲介者となり、新しい仕事を依頼したいというメールが来ていた。
どうやら俺に気を使ったようでメールの文面は日本語だったけど、実はもう世界の主要な国の言葉はほとんど
この世界の冒険者たちもそうなのだが、レベルが上がるほど知力が大幅に上昇しやすくなるので、いわゆる天才になってしまうのだ。
覚えたいことはすぐに覚えられるし、決して忘れない。
冒険者高校には、簡単に東大に受かりそうな生徒がゴロゴロしている状態であった。
多分、本当に受験する人もいると思う。
冒険者に学歴は不要だけど、世間の見る目が変わるからな。
冒険者としては強いが、トップクラスには届かない。
そんな人なら東大卒の学歴はあった方が、のちの人生では有利になるのだから。
「二年生になったら、アメリカのダンジョンで活動するかな」
まずは普通にアメリカのダンジョンをクリアーして、次は念入りに動画撮影だな。
そして、それを動画投稿サイトで独占配信する。
視聴数に応じたインセンティブだけでなく、国家予算なんじゃないかと思うほどの契約金も出すそうなので、断る理由がなかったのだ。
実は他の国の有名企業などからも依頼がきているのだけど、多分その後ろには各国の政府がいるんだろうな。
報酬はとてつもなくいいので、順番に引き受けていこうと思う。
なお、日本の企業及び政府などからはなにも連絡がなかった。
頑張って日本中のダンジョンをクリアーして動画撮影を続けている最中だけど、多分報酬は出ないはず。
元から期待していないけど。
日本はダンジョンの数が多いし、階層が多くてクリアーが面倒なものばかりが集中している。
日本のダンジョンを最初に終わらせてしまったので、あとは比較的簡単に仕事をこなせて、大金を得られるようになったのだから文句もない。
日本のダンジョンは宣伝で、外国のダンジョン攻略と撮影が稼ぎの本番……そもそも現時点で一生使い切れないことは確実だけど。
なにより俺は順調に強くなっているし、これなら再び魔王が出てもそう苦労なく倒せそうだ。
どうして俺がこんな生活をしているのかと問われれば、ただこういうことをするのが好きだからとしか答えようがない。
いつか飽きて冒険者
このあと、一生遊んで暮らしたって構わないのだから。
「あれ? こんな夜中にメールが来た。それも、全国の冒険者高校を経営している企業の会長にして、冒険者高校の理事長? 何々……『
そういえば自分が通っている学校なのに、いくら調べても理事長の正体がよくわからないんだよなぁ。
当然理事長の名前と顔写真ぐらいはわかるけど、ぶっちゃけどこにでもいそうなオジサンで、短期間で全国に冒険者高校を設立した
有能な人だとは思うけど、いったい何者なのであろうか?
「まさか、殺されるなんてことはないだろうからな。もしかして、生意気だから退学にされる? もしそうなったら、海外の学校にでも留学しようかな?」
突然理事長に呼び出されたので、予定を変更して明日は学校に顔を出すことにしよう。
「まさか……。俺はレベル25のアサシンなんだ……それがどうして、レベル1のノージョブに押さえ込まれているんだ」
「実力差があるからでしょうね。昔の漫画のセリフであったでしょう『スローすぎてあくびが出るぜ』ってやつ」
「なるほど。私が見込んだだけのことはあるね。
「理事長先生ですか? しかも手の平を見ると、レベル1でノージョブだ」
「私は君と同類なんだよ。君がいたところとは違う別の異世界に召喚され……まあ私は魔王を倒していないけどね。私は元々機械工学の研究者だったから、その能力が必要とされたみたいだね。この世界に戻って来てから、会社を立ち上げて結構稼いでいたんだけど、ダンジョンが出現したから新しい事業を始めたんだ。学校運営や他にも色々あるけど。紹介が遅れたね。私の名前は
「
まさか日本に、自分以外にも異世界から帰還した人間がいたとは……。
自分は技術者で戦闘にはあまり参加していなかったと言っているが、俺の勘が彼はとてつもなく強いと告げていた。
「警戒しなくていいと思うよ。確かに私はそれなりに強いけど、今の君と戦ったら簡単に殺されてしまう」
「その前に、素早くトンズラしそうだけど」
「そうするしか生き残る手段がないのだから、もしもの時はそうさせてもらうよ。ところで……
「はい!」
実は理事長室に入ろうとした瞬間、このアサシンのジョブを持つ
レベルが低いからであろう。
アサシンなのに、俺からしたら全然遅くて話にならなかった。



