7話 長ナスの出荷作業 ②

「セラム、袋にこのシールを貼っていってくれ」

「しーる?」


 シールのことを知らないセラムのために貼り付け作業を実演。

 指で剝がして袋に貼り付けるだけなので、すぐに理解できたようだ。


「これでいいのか!?」

「ああ、それでいい。ドンドン貼ってくれ」

「なんか楽しいな!」


 ぺたぺたとシールを貼り付けて楽しそうなセラム。

 子供が初めてシールの楽しさを知ったかのようだな。

 セラムのはしゃぎっぷりを横目に見ながら、俺はシールを貼り付けた袋にナスを詰めていく。


「む? シールがもうないぞ」

「シール貼りは終わりだ。袋詰めを手伝ってくれ」

「わかった」


 シール貼り作業は一旦停止してセラムにも袋詰めを手伝ってもらう。


「五百グラムになったか?」

「うう、五十ほど足りないのだ」

「ははは、なら別のナスで試してみてくれ」

「ジン殿は先ほどから一切量っていないようだが、規定の重さに達しているのか?」


 俺が笑いながら言うと、セラムが疑うような視線を向けてくる。


「経験者をめるな。俺くらいになると量らなくても手で持っただけで大体の重さがわかるんだよ」

「では、載せてみせてほしい」


 セラムの要望通りに袋詰めしたものをはかりに載せると、ばっちりと規定重量だった。


「規定重量ちょうど……さすがは経験者だな」

「当たり前だ」


 とか言いつつ、あまりにもきっちり過ぎる数字が出てヒヤッとしたのは内緒だ。

 あと数グラム低ければ恥をかいていたところだ。危ない。

 袋詰めが終わると包装道具に差し込む。

 ガッチャンッという音が響くと、袋詰めしたナスを綺麗に閉じることができた。


「ジン殿! それは!?」

「バッグシーラーっていう包装道具だ。やってみるか?」

「やる!」


 キラキラとした瞳を向けてくるセラムに言ってみると、笑顔で頷いた。

 好奇心旺盛だな。


「袋の先端部分をねじって細くし、ここの隙間にねじ込むんだ」

「こうか?」


 セラムがバッグシーラーに袋の先端をねじ込むと、ガッチャンという音がして袋の先端が閉じられた。


「お、おおっ! ジン殿、これも楽しいな!」

「気に入ったのならドンドンやってくれ」


 この世界の道具が珍しいセラムにとっては、包装作業も実に新鮮で楽しいようだ。

 そんなセラムに袋とじを任せ、俺は出来上がったものを段ボールに入れていく。

 そうやって進行していると、あっという間に作業が終わった。


「この箱を軽トラの荷台に載せてくれるか?」

「ああ、白い鉄の馬車にだな! わかった!」


 そう頼むと、セラムが段ボールをまた一気に運んでくれる。

 その間に俺は道具を片付け、軽トラの荷台に積み上げた段ボールにシートをかぶせ、走行中に落っこちないようにしっかりとロープで縛りつけた。


「後は出荷するだけだ」

「私も付いていこうか?」


 軽トラに乗り込むと、セラムが運転席に近づいて言ってくる。

 とは言われてもここから先にセラムが手伝えることはない。

 こちらが想定していた以上にセラムは働いてくれた。遅くまで無駄に付き合わせるのも申し訳ない。


「いや、ここから先は俺一人で十分だ。付いてきてもらってもセラムが手伝えることがない。家で休んでいてくれ」

「そ、そうか……」

「もしかして、一人で留守番するのが寂しいのか?」

「そんなことはない! 私は子供ではないのだ! では、行ってくるといい!」


 しょんぼりとしていたのでからかうと、セラムはズンズンと歩いて家に戻っていった。

 そうやってムキになるところがまだまだ子供だな。

 とはいえ、一人で長時間留守番をさせるのも不安なので早めに帰ってくることにしよう。

 そう思いながら俺は軽トラを走らせることにした。

刊行シリーズ

田んぼで拾った女騎士、田舎で俺の嫁だと思われている2の書影
田んぼで拾った女騎士、田舎で俺の嫁だと思われているの書影