10話 女騎士とショッピングモール ②

 何度か買ったことのあるメンズのファッション店ならどの辺りにあるかわかるが、レディースのファッション店に関してはどの辺をうろつけばいいのかわからない。


「三階の奥だよ、その辺に行けば、あんまり移動せずに買い物できるよ」


 掲示板を見ようとしたが夏帆がスッと歩きながら教えてくれた。

 さすがは女性。こういう時も頼りになる。

 夏帆のアドバイスに従って、俺たちは三階へと向かうことに。

 真っ白な床を踏みしめて進むとエスカレーターがあるので、それを使うことにする。


「……ジン殿、あの動く床はなんだ?」


 列に並んでいるとセラムが声を潜めながら尋ねてくる。


「エスカレーターだ。黄色い枠の中に立っているだけで上に運んでくれる」

「本当だ。人がドンドンと運ばれていく。珍妙な光景だ」


 幸いにして列ができていることで前の人の様子を眺めることができた。

 そのお陰でセラムは夏帆や俺が乗るのを真似するように自然に乗ることができた。

 そして、何事もなく二階にたどり着いた。

 セラムは運動神経がいいので、降りる際につまずいたり、転んだりしなかった。


「こんな感じだ」

「ああ、これがあれば物資の輸送がどれほど楽だったか……」


 文明の利器を使用して、何か色々と思うところがあったらしい。

 異世界でもこういった大きな建物があって、そこではすべての階層移動が階段だと考えるとなかなかに地獄だろうな。

 深く尋ねることはせず、もう一度エスカレーターに乗った。

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田んぼで拾った女騎士、田舎で俺の嫁だと思われている2の書影
田んぼで拾った女騎士、田舎で俺の嫁だと思われているの書影