刑罰:クヴンジ森林撤退支援 5 ④
それに激痛で叫ぶ魔王──ざまぁ見ろ。魔王からの命令が一時的に途絶え、親を見失った
「……我が騎士! こちらを見なさい!」
名前を呼ばれた。テオリッタ──眩しいくらいに瞳が輝いている。炎の色だろうか?
それと、あと一つ。
(……なんだこれ)
幻覚であればいいと思った。そのくらい、それはあまりにも異様かつ滑稽で、見たくもないものだった。
「……あー……ザイロ?」
そいつは俺を困ったように覗き込んでいた。
史上最悪のコソ泥、ドッタ・ルズラス。あいつの薄汚い顔を、いまここで見る羽目になるとは。
「何やってんの、こんなところで」
お前にだけは言われたくないと思った。
しかもやつは子供が入りそうなデカさの
「ドッタ」
俺は笑ってしまった。笑いながら体を起こす。
全身が痛んだが、そんなことを気にしている場合じゃない。ドッタの胸倉を摑んで、逃げないように押さえつける。
「また盗んだな?」
「これは違うんだ。忍び込んだぼくの目の前に、ちょうど置いてあったから──」
「よくやった。あとで殺すのは勘弁してやる」
それからのことは、別に語るほどのことではない。焦土印は、言ってしまえば聖印を刻んだ木片の集合体だ。その樽自体が、木片を組み合わせた兵器なのだ。
こんなものを盗んで
すでに殻を破壊された手負いの魔王相手なら、最低限の爆破でよかった。このあたり一帯を更地にする必要はない。
俺はその樽を思い切り蹴飛ばし、そして同時に跳んだ。ついでにドッタも抱えてやったのは、せめてものサービスだった。着地と同時にやつを殴り倒したのは言うまでもない。
地面を抉り、森の一角に閃いた爆発を、俺たちは間近で聞いた。
このようにして、俺たちは魔王『オード・ゴギー』を撃滅し、聖騎士団の撤退支援を完遂した。
──もちろん、語るべき問題はその後のことだった。



