刑罰:ゼワン=ガン坑道制圧先導 1 ③

「しかし! これでは諸君ら聖騎士団の長、代表としての面目が……」


 キヴィアはまだ何か言いたそうだったが、兵士たちになだめられて、結局は引き上げていくことになる。俺を睨んだ眼光の鋭さは気になるが、これで己の画力を見つめ直してくれることを祈ろう。

 後でもうちょいまともな地図をもらうとして、俺たちにはまだまだたくさん仕事がある。


「休憩、終わりにするか」

「むうっ、そうだ。休んでいる暇などないぞ!」


 と、ノルガユは言った。


「掘削を再開しろ。遅れた分を取り戻せ。ザイロはタツヤを見習え、無駄口を叩かずに作業し続けているぞ!」


 ノルガユはまったく、炭鉱の現場監督のようではないか。

 俺はため息をつき、作業を再開した。


(しかし、妙な任務だ)


 と、思わざるをえない。

 単に俺たちがこうして重労働していることへの不満、というだけではない。この坑道への対処自体が、どうもに落ちないことだ。

 鉱山が異形フェアリー化し、もう放棄するしかないのなら、基本的には放っておけばいい。

 土地をダンジョン化させた魔王現象の主は、そこから出てこようとしない傾向がある。これから攻勢をかけるならば無視できない拠点となるだろうが、クヴンジ森林を放棄し、間もなく訪れる冬に備えて守りに入ろうとする中でやることじゃない。

 残る可能性で、俺に思いつくのは一つしかない──そう。

 俺を嵌めてセネルヴァを殺させた連中がでっちあげた任務、ということだ。貴族どもか軍部か神殿か知らないが、確実にそういう勢力は存在する。でなければ、あの裁判であんな無茶苦茶な展開がまかりとおるはずがない。存在しない部隊もねつぞうできない。

 だとすれば、やつらの目的はなにか。

 俺への嫌がらせだけじゃないとすれば、あるいは《女神》テオリッタを殺そうとしている?


(どうもキナ臭い話になってきた)


 結局、予定が完了したのはその日の夜遅くのことだった。

刊行シリーズ

勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録VIIIの書影
勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録VIIの書影
勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録VIの書影
勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録Vの書影
勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録IVの書影
勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録IIIの書影
勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録IIの書影
勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録の書影