8 ⑥
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「…………」
柿崎皆代は、すっかり日が暮れて、周りには誰もいなくなってしまった公園のベンチでまだうなだれていた。
死にたくて死にたくてしょうがなかったが、だがそんなことを考えてしまうことそれ自体がすでに彼女の中の生命力が回復しつつあるということの証だった。あの〝ホナミアキコ〟とかいう少女に言われたことが頭の中でぐるぐると回っていた。
「……ううう」
泣き続けていたので、
そんなときである。
彼女の前に、ひとつの影が立った。
「……こんなところで何をしているんだい?」
そう訊いてきた、その声はなんだか男だか女だかさっぱりわからない不思議な声だった。
「……うるさいわね、ほっといてよ」
皆代は無理矢理に声を絞り出す。
「しかし……穏やかじゃないだろう。〝死にたい〟とかなんとか」
どうやら皆代は一人でぶつぶつ呟いてしまっていたらしい。
「余計なお世話よ。ひとが何を考えていようがこっちの勝手でしょ……!」
「それはその通りだがね」
声はとぼけた言い方をした。
「しかし、それなら何だってこんなところで座り込んでいるんだい。ここで、誰かに何かを言われてショックでも受けない限り、こんな場所にわざわざ来て、それで泣いたりするかな」
「……だから何だって言うのよ……!」
「実は人を
「……誰を捜しているのよ?」
「自動的なぼくには未だによくわからないんだがね……とても危険な物を持っている奴だ」
「……だったら関係ないわよ。私に、あのお
「穂波、顕子?」
声は意外そうに言った。
「確かにそう名乗ったのか?」
「そうよ」
「……もしかして、そいつは変なことを言っていなかったか?〝あなたの死が見える〟とかなんとか──」
「え?」
どうしてこいつは、そんなことを知っているのだ?
皆代は顔を上げた。
目の前の影は、暗いのでよく見えないが、なんだか人というより筒が地面から伸びているみたいな格好をしている。
「──なるほど、たまごを手にしているのは〝
影は静かに呟くと、あっさりときびすを返して呆然としている皆代の前から風のように去っていった。