第四幕 ②
「ただ、もう本当に
少し視線を遠くしてから、ホロは自分の手元を見る。
「友人を探しに、かの」
言ってから、ホロは
「友人、か」
「うん」
あまり
「で、見つかったのか?」
ホロはすぐに答えずに、照れたように笑った。
その様子を見れば答えは
「……うん」
しかし、ホロがそんなふうに
「それが、パスロエの村のやつじゃった」
「ああ、村の麦畑のことを頼んだってやつか」
「そう。少し間抜けじゃが、底抜けに明るくての。わっちの
のろけ話を聞いているようでついつい鼻の頭にしわのよってしまうロレンスだったが、当然それを
「本当に間抜けでな。わっちもよう
楽しそうに、思い出すのが少し恥ずかしいように
それからふと、子供同士が秘密を共有して笑い合うように思い出し笑いをすると、そのままもそもそとベッドの上で丸くなってしまった。
おそらくは
もちろん、だからといってホロに声をかけられるわけでもなく、ロレンスは小さくため息をつくと手の中のコップの酒をすべて飲み干したのだった。
「友人……か」
ロレンスは小さく
少し
しかし、
すなわち、金がないと言って一つのベッドの部屋にするべきだったかなと。
そう胸中で呟いてから、ロレンスはホロと反対側をむいて今度は大きくため息をついた。
「この取引、受けさせていただきます」
ミローネ商会パッツィオ支店店長、リヒテン・マールハイトはそう静かに言い放った。ロレンスがミローネ商会に話を持ちかけてからわずか二日後のことだ。さすがに仕事が速い。
「それはありがたい。ただ、そう
「彼の後ろにはメディオ商会がついています。言わずと知れた、この町で二番目の規模の商会です」
「メディオ商会ですか」
パッツィオに本店を置く商会だが、いくつか支店も出している。麦をメインにした農産物の取引ではパッツィオ随一で、
ただ、とロレンスは胸中で引っかかる。メディオ商会は確かに大きな商会だが、ロレンスはもっと大きなところを考えていたのだ。それこそ、最大の取引相手は王侯貴族であるような。
「我々も、メディオ商会の後ろにさらに何者かがいると思っております。彼らだけでは、ロレンスさんが描いている仮説の実行はおそらく不可能です。ですから、我々はメディオ商会の後ろに貴族が控えているものと思っておりますが、メディオ商会ともなれば貴族との付き合いも多く今のところまだそれが誰かはわかりません。ただ、相手が誰であろうとロレンスさんの指摘どおり、先手を打てばどうにでもなりそうです」
にやり、と笑いながら言うマールハイトのそれは、ロレンスなどから見れば想像もつかない資金力を持つミローネ商会全体を後ろ
ただ、ロレンスもだからといって
だから、堂々とロレンスのほうから言ったのだった。
「それでは、分け前の話に入りたいのですが」
ちなみに、夢の
ミローネ商会から店長以下役職を持つ者達に見送られて店を出て、ロレンスは鼻歌を歌いたくなる気持ちを
ロレンスがミローネ商会に提示した分け前は、ミローネ商会の得る
なにせ、ロレンスの提案でミローネ商会が動けばそこでやり取りされるトレニー銀貨の量は千や二千の数ではない。二十万や三十万といった数の貨幣が動くとみて間違いない。概算でもその一割の儲けを見込むことができるとなれば、ロレンスが受け取る分け前はトレニー銀貨千枚以上ということもあり得る。しかも、純利益として、それなのだ。二千枚を超えることになれば、
ただ、ミローネ商会が本当に
しかし、その儲けをロレンスが手に入れることはできない。あまりにも巨大すぎて、ロレンスの
鼻歌が止まらなくとも、当然と言えた。
「ご
そしてついに、横を歩くホロが
「これで機嫌が悪くなるやつなどいるものか。今日は人生最高の日だ」
ロレンスは大
実際、夢であった自前の店はもうすぐそこだ。
「まあ、
対して、ホロは
なんのことはない、二日酔いなのだ。
「つらいなら宿で寝てろと言ったろう」
「ぬし一人で行かせたらいいように丸め込まれたりしないか心配での」
「どういう意味だ」
「うふ。そのまんまの意味……うぷ」
「まったく……。ほら、もう少し
「……うん」