第一章 〝彼〟のいない平和的な学園都市 City. ③
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『
かつて、学園都市の『暗部』と真っ向から戦った
元々、学園都市の科学技術は『外』と比べても二、三〇年もの開きがある上、研究所の資料については街の『中』でさえ非公開なものが多い。情報の取り扱いについてはかなり神経質なシステムが組み込まれているに違いない。
そして、浜面としてもそのつもりはなかった。
彼の目的は学園都市の打倒ではなく、その街の中で
ただ安全性を確保するだけなら、学園都市から
しかし、今はまだそこまでの準備は整っていない。
彼の命より重要な少女、
学園都市には他の地域にはない設備や施設がたくさんある。街の至る所には風力発電のプロペラがあり、警備や清掃用のロボットが行き来し、畜産や農業のための『食材を作る工場』があちこちに建っている。
だが、それ以外にも違いはある。
この街には、墓地が圧倒的に少ないのだ。
住民の八割は学生であり、親元を
学園都市唯一の墓地は第一〇学区にあり、その形状はエレベーターを使った立体駐車場に似ていた。
耐水性の厚紙でできたトレイの中に収まる範囲でなら、献花やお
前述の通り、ここへ学生の骨が収められるのは
それはつまり、引き取りたいと名乗り出る者がいなかったのを意味する事が多い。
犯罪者や、『
「……
彼らは『墓地』であるビルの中には入らず、味気のない出入り口の近くにあるベンチに腰掛けていた。おそらく本来は喫煙スペースとして用意されていたのだろう、
『墓地』には、麦野だけが入っている。
かつて、その手でフレンダを殺害した麦野だけが。
語るべき事は色々あるだろう。
その言葉を盗み聞きしたいとは思わなかったし、その顔を盗み見たいとも思わない。
ぼんやりと青空を見上げながら、浜面は言う。
「フレンダって、何が好きだったっけ?」
「さば」
と答えたのは、
「なんか缶詰ばっかり超食べていた人でしたよね。金には困っていなかったはずなんですけど」
人物について過去形で語る事には、まだ多少の違和感がある。
その違和感が消えるのを望むべきか、望まざるべきか。
それすらも、未熟な
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テレビゲームは
一〇歳前後の容姿をしている
「……あのおっぱいがミサカの集中力を散らせているの、ってミサカはミサカは敗因を分析してみたり」
「おやまあ。他人の身体的特徴を
「一体何を食べたらそんなに大きくなるのかミサカに説明しなさい、ってミサカはミサカは情報の開示を求めてみる」
「食べているものはみんな
愛穂、というのはこのマンションの家主の体育教師、
年中緑色のジャージを着ている色気ゼロの女性なのだが……
「
「あら。みんな同じものを食べてこの結果なんだから、それってつまりあなたにも同じ可能性が与えられているという事ではないかしら?」
「……ッッッ!!!???」
「だからそんなに
芳川の言葉に、まるで救いの光でも浴びたかのような表情になる
その時だった。
ボトッと、芳川の
それは奇怪な健康器具だった。
ベルトを使って胴体の一部分に巻きつけるための機構が備わっており、見たところ、女性の体の一部分にとても干渉するように設計されているようであった。
つまり。
平たく言えば、豊胸マシンの疑惑である。
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
大人の汚さを
やがて彼女は、わなわなと
「……『自然と』
「ほ、ほほほ。いやこれは大学時代の友人から
「もうそんなオトナの言葉には
「いけないわ
「だからそんな言葉には惑わされないとミサカは言ったはずだ!! ってミサカはミサカは制止を振り切ってみたり! そもそも成熟した肉体を持つ女性ならこんな機械は必要としないはずでは!?」
手持ち
「生物関係の研究者とは思えないぐらい
「面倒
心底うんざりしたような声と共に寝返りを打つ第一位。すると、代わりとでも言うかのように、家主の爆乳体育教師、
「はいはいそこまでじゃんよ。これ、効果がないって桔梗が嘆いていたヤツじゃん。っつか、これに限らずダイエットマシンとか小顔になるベルトとか『肉体を変質させる機器』を集める
言って、黄泉川は奪い合う二人から豊胸マシンを取り上げてしまう。
「この世で最も必要としない人物に希望の光を奪われた!! ってミサカはミサカは
「
しかし事態は彼女達の予測を上回った。
「……あれ? 何もしてないのに、何でもくもく煙が出ているじゃんよ?」
「有り余る乳パワーが逆流したのかも!! ってミサカはミサカは未知の現象を前にわなわなしてみる!!」
「非科学的だわ……ッッッ!!!??? そんな、まさか、でも、
あまりの光景に科学的視点が揺らぎそうになる
ところで、この中の女性陣で唯一、
「オマエは喰いつかねェのか?」
「あなたにつけても巨乳にできるなら、ちょっとは」