第三章 わずかな余白と次へと繫がる予兆 Girl. ⑥
「あの子自身に何かがある訳じゃない。学校の
「……、」
「となると、考えられるのはスキルアウト関連か、そこのリーダーだった駒場
「言っちゃなんだが、不良集団だぞ」
少し
「学園都市の『上』……政府機能を握る連中が、人の命を奪ってまで手に入れたがるようなものなんてあるのか?」
「お前も知ってると思うけど、駒場のリーダーはスキルアウトを率いて、学園都市に反旗を
復興のバランスを調整する事で『勢力図』の更新を行おうとしているのでは? という
「その時、駒場のリーダーはスペアの『計画』も用意していたかもしれない。当時、俺達が利用しようとしていたのとは違う、街の
「じゃあ、それが……」
「『上』の連中からすれば、対応はしたいだろう。そしてフレメアは駒場の保護対象だった。もしもの時のために、ヒントが託されていると考えているのかもな」
「でも、メインの『計画』だってあっさり
「俺達の計画じゃなくて、街の脆弱性ってのを
それが駒場利徳関連、といったところか。
だが
フレンダ。
さらに言えば、彼女の所属していた『アイテム』。
実戦的な
フレメアがフレンダの妹である以上、フレンダ経由で『アイテム』絡みの何かを手にしている可能性はある。
あるいは、
(死んだフレンダは『アイテム』の一員だった……。ただ、俺はあいつの行動を二四時間
今のままでは情報が少なすぎる。
「……フレメアには心当たりはない。でも、確かに『
「
「どこ行くんだ」
「
「
「言ったろ。携帯電話はダミーのSIMに入れ替える。仮に俺の番号に
言いながら、半蔵はドアノブを
扉を開けたところで、彼は振り返った。
「
「何だよ?」
「お前が来てくれて助かった。不愉快だが、そいつは認めるよ」
浜面が何か答える前に、半蔵は部屋の外へ出て行ってしまった。
何となく居心地の悪くなった浜面は視線を辺りへさまよわせたが、そこでフレメア=セイヴェルンと目が合った。
かつて『アイテム』の正式メンバーだった、フレンダの妹。
「久しぶり」
「俺の顔は覚えてるか?」
「うん。大体、駒場のお兄ちゃんと
その覚え方に、浜面は
浜面は、もう駒場の事を過去形でしか思い出せない。
しかし、時間の経過に伴う苦いものを、彼女に知られる訳にはいかない。
「そうそう、浜面
「私はフレメア。フレメア=セイヴェルン」
もっと早く、そのファミリーネームは知っておくべきだったかもな、と浜面は心の中だけで思ったが、声には出さなかった。
「大変な事になってるみたいだけど、
「大丈夫。さっきまで耳が痛かったけど、今はもう、大体、何ともないから。にゃあ」
(……にゃあは日本のどこで覚えたんだろう?)
以前話した時は、こんな
疑問が生じたが、追及しても仕方がない。
本来、相手が日本語を使えるだけでも
「大体、これからどうするの?」
「今、半蔵が仲間を呼んでる。だから心配しなくても大丈夫だ」
「駒場のお兄ちゃんは?」
フレメアは、青い
「駒場のお兄ちゃんと会っていないの。お電話にも出てくれないし、いつもの道を通っても顔を見ないの。大体、どこへ行っちゃったか知ってる?」
浜面は、息を止めないように努めた。
成功したかどうかは分からない。
「あいつは、ほら」
笑顔なんて作れる。
だが、彼女の青い瞳は、そこらの
「見ての通り、頭の悪そうなヤツだろ。俺が言うのもなんだけど。実際、頭が悪いんだ。だから、今はずっと学校で補習を受けてる。これをやらないと、あいつ留年になっちまうんだ。しばらくそっとしておいてくれるか?」
「……うん」
わずかに
声は沈んでいたが、それは休日の遊びの約束ができなかった程度のものだった。
「大体分かった」
フレメアは、彼女にとっては大きすぎるソファに、ぽすんと座る。
「む」
「?」
「お腹が鳴りそうで鳴らない」
彼女は背中をソファに預けながら、
「……何か食べたいのか?」
そう尋ねると、フレメアは小さく
個室サロンはカラオケボックスと同じく、内線で料理を注文する事ができる。その他にも、広い室内には冷蔵庫が備えられていた。
フレメアの食べ物の好みなど知らないので、浜面は内線電話を使って適当に注文を出す。壁に掛けられた電話に向かって話していると、
「
「メシの注文」
「さっき食ったばかりだろ」
「フレメアが」
「そうか。じゃあ
注文した料理は、一〇分ぐらいでやってきた。
基本的にはメインとなる料理ではなく、フライドポテトや野菜スティックなど、軽食系のものばかりが並べられる。
「……薩摩揚げ、やっぱ浮いてるよな」
「うっさいな。俺が全部独占するから良いんだよ」
大皿に載っていた料理を自分の小皿に移す浜面と半蔵だったが、何やらフレメアの様子がおかしい。
彼女はカニ玉を小皿に載せていたが、中に緑色の豆類が入っている事に気づくと、その小皿を浜面の方へ寄せてくる。