第四章 善人になる権利と突っぱねる権利 Black. ⑦
傷をつけないために角を丸めた
「みんな、俺の持っていないものばっかりだ。あがいてもあがいても手に入らなくて、それでも絶対に
それは純粋であり、だからこそ
「胸を張ってくれよ、ヒーロー。アンタは俺の
中年の男は、
やがて、彼の体から
「……私も行く。
「良いのか、だって」
「君がフレメアって子を逃がさなければならないように、私も娘を助け出さないといけない」
「この混乱だ。娘さんがどこにいるか分かっているのか」
「私に似たところのある子だ。多分、
そっか、と浜面は
彼は電動補助式ブロウパイプを
「なら、俺ができる限りエッジ・ビーを引きつける。目的地が分かっているなら簡単だ。アンタはとにかく走れ」
「引きつけるって……自分が何を言っているのか分かっているのか!? たとえ武器があったって不死身になれる訳じゃない。あんなものが大勢、一気に飛んできたら……ッ!!」
「俺のせいなんだ」
「この混乱も、エッジ・ビーが押し寄せてきたのも、変な能力者が壁をぶち破って暴れているのも、全部俺が招き寄せちまった。俺は全部解決できるほど強くない。できる限りしかできない。でもやらせてくれ。できる限りしかできなくても、俺にやらせてくれ!!」
引き止める声を聞かず、浜面は屋内
ちょうど、別の壁を破って『
「いい加減にフレメアと合流しろよ。そして私をあのガキの所まで案内してくれ」
「……ッ!!」
「それとも、逆をやってみるか。建物中に伝わるぐらい大きな悲鳴を上げさせてやれば、フレメアの方から近づいてきてくれるかな? それともビビって逃げてしまうかな?」
言葉に
何のために手に入れた武器だ。
だんっっっ!!!!!! という鈍い音が
発射音ではない。弓矢と同じく、ブロウパイプは着弾音の方がはるかに大きい。だが能力者の肉を
少女の顔から余裕は消えない。
しかし収穫だ。
弾くのではなく
つまり、
(当てれば勝てる!!)
第二射を
そこで『
(くそっ、撃てるか!?)
少女がこちらの
だが両手で構えた時、すでに少女は必殺の領域に
「逆から吹いてやろうか?」
「ッ!?」
とっさにブロウパイプから両手を
直後に
床の上を転がる
「がっ!?」
手首と
そして必殺の
「フレメア=セイヴェルン」
「予定通り、悲鳴であの女を呼び戻せるか、試してみるか」
その時だった。
『
特に携帯電話などないはずなのに、少女の
『問題が発生した。中断して外へ出ろ。施設内については、こちらが引き継ぐ』
「『アイテム』の増援か」
『違う。もっとまずい方だ。私の「力押し」の性質上、相性の問題であいつは止められない。元々、あいつの対処はお前の
「なるほど」
言うだけ言って、少女は浜面の腕から足をどけた。
「ちょうど良かった。私としても、テンポが良すぎて手間取っていたところだ」
「ぐっ……」
浜面は壁に手をついて必死に起き上がり、少女の行く手を
だが少女は予想外の行動に出た。
手近な壁を『槍』で
だが落下しない。
水平に広げた二本の手、その先から噴き出す
「『アイテム』の名前を出したな」
浜面は痛む体を引きずって、空中で静止する少女へ必死に問いかける。
「答えろ。フレメアだけじゃない。お前は、あいつらにも何かするつもりなのか」
「
それだけ言うと、少女は噴射を中断させ、背を下にした状態で垂直に落下していった。だが当然、彼女の目的は
「くそ……」
『
8
個室サロンでの
彼女は『暗部』でありながら、それらの騒ぎに全く
その表情にも余裕がある。待ち合わせの最中に携帯電話で適当にゲームをやっている学生だって、もう少しは
「チッ。シルバークロース。問題の増援とやらはどこにいる」
軽く周囲を見回すが、それらしい影は見当たらない。
いるのは黒夜の動きを
黒夜は近くにあったオープンカフェの座席に腰掛けると、四人掛けの丸テーブルの空いた席にイルカのビニール人形を置き、店のお勧めらしき紅茶を適当に注文する。
やってきたティーカップに口をつけ、
(……どこかの