第四章 善人になる権利と突っぱねる権利 Black. ⑱
「
『第一位の能力は首筋の電極のバッテリーに依存している。正確な制限時間は不明だが、明確な目的もなしにフル
「了解。これで作戦は
言いかけたシルバークロースの言葉が、そこで途切れた。
おかしい。
後方から威圧を感じる。
内部は暗い。自動車用のトンネルと違い、決められた線路の上を走る地下鉄は急なカーブを除けばそれほどの光源を必要としないためだ。
しかし四足の
映像解析用の補正が
「何だ、これは……」
何か巨大な、
爆音と共に、闇が
学園都市第一位ではない、しかしそれでいて、フレメア=セイヴェルンを守るために、シルバークロースを追う可能性のある人物。
「まさか……ッ!!」
15
バォン!! という爆音が
地下鉄用のトンネルは工事作業員が最低限歩ければ……というレベルの整備しか行われていない。地面も効率良く線路を
通常であれば、こんな中を時速数百キロで走るのは自殺行為だろう。
だが関係ない。
浜面はスロットルレバーをひねり、ジェットエンジンと補助ブースター、リニア機関など
(いける……単純な速度なら『ドラゴンライダー』の方が上だ!!)
問題はあれだけ分厚い装甲の
『火力に困ってるなら補助ブースターを使え』
『不調になった時、被害を軽減させるために燃料を放出する機構がある。そいつを
『待てよ。そんな特殊操作、俺は……』
『分かっているはずだぜ。
いつの間にか、浜面はロケット燃料の
学校の勉強もロードサービスの技術もみんなこんな感じになれば人生は気軽になるだろうか。だが恐ろしい。知らない内に何を付け足されているか分かったものではない。やはり自分の手で習得するのが一番だ。
(今は深く考えている余裕はない)
浜面は意識的に疑問を排除し、目の前の標的にだけ集中する。
(フレメア=セイヴェルンを助ける方法が手の中にある。それだけで十分だ!!)
補助ブースターは一種のアームになっていて、状況に合わせて大幅に角度を変えられる。だがそれでも、基本的には推力を後方へ流すためのものだ。真後ろから左右水平辺りまでの角度が精一杯。前方に向けるようにはできていない。
となると、
(最低でも真横につけなくちゃ、補助ブースターの爆発には巻き込めねえ!!)
その時だった。
前方を走る四足の
右の後ろ脚にあたる部分が、突然
馬のように。
地面に落ちていた照明器具の
『……ッ!!』
より正確には重量三キロ前後の金属の
ハンドル操作で照明器具の残骸を
そう思っていた
前方。
ちょうどこれまでとは対向線路にあたる闇の向こうから、
(地下鉄……ッ!?)
浜面の背筋に
直後に、
暴風、
トンネル内に巨大な質量の通過に伴う諸現象が発生していた。列車の運転手も直前で気づいたのだろう。ブレーキと共に金属製の車輪とレールが
その真横を、四足の
それが単なる車両とは違うためか。追っ手を排除した愉悦は、モデル全体から発散させられているようにも見えたかもしれない。
そして。
列車という長い壁が途切れた直後、その反対側から巨大なバイクが顔を出した。
HsSSV-01『ドラゴンライダー』。
浜面は地下鉄の列車と壁の間にある、わずかなスペースへバイクを突っ込ませたのだ。ほとんど壁に触れるか触れないかの曲芸を、最高速度で実行したのである。
前述の通り、単純な速度なら四足の
まして、障害物を排除したと油断していたとあっては、追い着かれない理由がない。
『チ……ッ!!』
ここにきて、シルバークロースの取った行動は、向かってくる『ドラゴンライダー』へ、自分から突っ込んでいくという
つまり、その重量差を使って、真横から追っ手を
だが、
とっさに行動した者と、あらかじめ準備していた者の差だろう。
補助ブースターを支えるアームが真横へ大きく動き、補助ブースターの側面部分から大量のロケット燃料が噴き出した。それらは暴風に巻き込まれる形で
噴出から点火まで、コンマ一秒にも満たない。
起爆。
音という音を圧縮させたかのような、透明な壁に近い
左の補助ブースターが自らの爆発に巻き込まれて『ドラゴンライダー』からもぎ取られる。電子制御であれだけ
四足の
ロケット燃料をまともに浴びた上での爆発。後部のプロペラの羽は
だがおかしい。
超高温、そして衝撃波。損傷は無視できるレベルを超えていた。四足の内、右側の二本の挙動に異常が見られるのだ。脚を滑走させる事はできるが、地形に合わせて脚を動かし、衝撃を