第四章 善人になる権利と突っぱねる権利 Black. ㉔
20
シルバークロース=アルファを
彼はまだ意識がある状態のようだが、制御用のコンピュータが
その事実を確認した浜面は、ようやくトンネルの壁に背をつけ、
この十数分の時間がやけに濃密だ。
今さらのように、浜面の全身から命の危機を訴える
「浜面!!」
暗いトンネルの向こうから、
「無事か?」
『何とかな……』
言いながら、浜面は
『だがスーツはやられた。運動量の増幅は無理。思考の補助も、そのパワーを前提にしたものだ。この壊れかけのモデルで使ったら自分の骨格を
シルバークロースのように『固まる』現象が起きなかっただけでもマシだったかもしれない。それに運動量の増幅はなくとも、
ひとまずヘルメットを外し、じかに外気を吸い込みながら、浜面は尋ねる。
「フレメアは?」
「近くにいる。お前の事を変身ヒーローか何かと
「顔を隠した程度で何やっても許されるんなら、なってみても良いけどな」
ギチリ、という音が聞こえた。
地下鉄の暗いトンネルの奥から、わずかな音が聞こえていた。自然界のものとは違う。太いバネが
改めてヘルメットを
『……クソッたれが……』
「何だ浜面? 何が見える?」
金属の
無機質なレンズ。
『
「今さっきお前の手で倒しただろう!?」
『一機二機じゃない。一〇機以上いやがる……。シルバークロースだけじゃなかったんだ!!』
そういう事か……という
壊れた
彼は
「あの女……人のハンガーから勝手にコレクションを出撃させたな」
具体的な
『フレメアと合流しよう! さっき近くにいるって言ってたよな!?』
「
『決まってる……』
敵側の戦力は無限を思わせるほど、次から次へと投入されてくる。
終わりは見えない。
どこまで逃げれば良いのか。逃げ続ける事はできるのか。そもそも逃げる事が正しいのか。
再び追われる者となった浜面は、しかし前を見据えながらこう答えた。
『フレメアを助けるためには、あいつらを出し抜くしかねえ!!』