第一章 まるで遊園地のような Red_Wear,Big_Bag,and_Flying_Sledge. ②
「とうま七面鳥買おう!! 道端で売ってるなんて奥が深いんだよ!!」
「聞けよおー人の話をッッッ!! しかもケーキじゃねえのかよっ。つか何あれ、安すぎて逆に怖くない? ディスカウントストアで売ってる七面鳥ってマジのヤツなのか? ガワなんていくらでも工場でデザインできるだろ、今はもうコンビニでどこの部位なんだか分かんねえ骨なしチキンとか金の延べ棒みたいな形にまとまった謎のサラダチキンが売られている時代なんだし。もしかして、回転寿司のネギトロの正体はアカマンボウ的な感じで何か全然別の肉を使っているんじゃあ……」
『あの』
店先では小学生女子がわあわあ言っていた。
『にゃあ!? サンタ捕獲キットだって!! が、学園都市はいつからこんな発明を……』
『だ、だめだよフレメアちゃん。これ絶対夏はおろか秋シーズンを越えても売れ残った普通の虫取り網だよ』
『おじさんこれくださいな! スマホでチャキーン!!』
『ああっ、サンタさんは樹液のゼリーじゃ集まらないのにーっ!?』
……まったく『ジョークグッズ』とは(最初っからジョークなんだから効能を保証しなくても良いという意味で)幅が広くておっかない。これを季節の定番と受け取るか子供相手にも容赦のない残虐非道な詐欺行為と見るかは人それぞれだ。そこはかとなく縁日の射的に通じる何かを感じる。
そして今はまだ、享受する訳にはいかないのだ。
(……くそうー。ケータイ自体は普通に再起動できたから、それでも
ちなみにまだ使える携帯電話で軽く検索してみても、似たようなトラブルが発生している様子はなかった。
青空に漂っている飛行船の大画面でも、大規模な通信障害といった話は出ていない。
……世界でたった一人、自分だけだと思うとすごく不安になる。まだ世間が気づいていないような得体の知れないものに感染しているけどセキュリティ関係が素通りになってはあるまいな、とか。
(どうか先生の側の機材がきちんと吹っ飛んでいますように!!)
クリスマスイヴまで電子機器のトラブルでクリーンインストールの旅だなんて絶対に嫌だ。そもそもパソコンでなくモバイルの場合はどうやったら
(と、とにかく一個ずつだ。足で歩いて何とかなるトコなら潰せる潰せる)
こう、二階建てで階段や通路はおろか、二槽式の洗濯機まで外に出ちゃっている感じの。昭和の漫画家か浪人生しか立ち入りを許されないような神域を我が物にしている身長一三五センチのファンタジー女教師。それが
「おらーっ!! 奥さん新聞取りませんか!? 今なら箱の洗剤二個つけちゃう!!」
適当な事を叫んだがやっぱり反応がなかった。
……。
嫌な予感しかしない。
ドアには新聞受けのスリットがついていた。プライバシーの概念が完全に根絶している。
(これは、まさか……)
隣のドアががちゃりと開いた。
真っ赤なジャージにお
「あのう、お隣さんなら三日前からどこかに出かけていますけど……。郵便物は預かっておいてほしいって頼まれてますし」
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。
たっぷり五秒は硬直していたと思う。
そしてツンツン頭はあらん限りの力でもって絶叫した。
運命を握る
ジャージ
「おっといけない、デイトレードデイトレード。クリスマス景気なんて訳の分からん大波が来ているんだから画面から目を離しちゃダメっ。休むのは株を売り抜いて大納会の終わりを笑顔で迎えてから! それでは!!」
「テメェそのナリで充実したセレブ様かよお!!」
相手は聞く耳を持たずにドアを閉めてしまった。家賃だけなら恐ろしく安いだろうし、本宅ではなく仕事場扱いで借りている部屋なのだろうか?
そして名前も知らない人のライフスタイルなんぞ気に掛けている場合ではなかった。
核の冬って感じの不毛っぷりだ。
「とうまー、お
「……そうね」
やけにゆっくりとした動作で
影しかねえ笑顔であった。
世界そのものから見放された時、孤独な人は最後に笑うのかもしれない。
この現世に大魔王が降臨なされた。
「ぶわァーっはっはっはあ!! 知らねえよ、もう何にも知らねえんだよおおお!!
違うよツンツン頭。
そいつはさ、泣いているって言うんだよ。