第一章 まるで遊園地のような Red_Wear,Big_Bag,and_Flying_Sledge. ③
3
勝算はある。
こういう時までやたらスタイリッシュ(笑)なクラッシュ画面で埋め尽くされるレベルのエラー自体は実際に起きているのだ。つまり、どこに格納されているんだか正確な話は知らないが一応携帯電話の中にはエラー報告くらい記録されているだろう。
だから自信を持ってツンツン頭はこう切り出した。
何でだろう? 心の中は超幸せなくせに、さっきからアスファルトの地面が綿菓子みたいにふわふわしてちっとも落ち着かないんだ。
「どこ行きますか?」
「キラキラな所!!」
あのインデックスが食べ物の名前を連呼しなかっただけでも奇跡である。やはりクリスマスイヴとは魔性なのだ。予測不能な何か、言い換えれば小さな奇跡がバカスカ発生している。確か偉い人のお誕生日だった気がするが魔性で
とはいえ、だ。
学区そのものが巨大遊園地と化した第六学区など、観光地も観光地のバリバリな所(?)へ予約もなしに足を運んでも地獄を見るだけだろう。こんな日にわざわざレンガと土の間に潜り込む必要はないが、一応チケットとか行列とかがいらない場所というのを線引きにした方が安全かもしれない。
「となると特別な場所に行くんじゃなくて、いつもの第七学区を見て回るのが一番分かりやすくクリスマスを満喫できるかなー」
「何で?」
「ビフォアとアフターでどこがどれだけキラキラしてるか分かりやすいだろ」
何しろ
「とうま、何で笑顔に暗い影が差しているの?」
「何でもない。おかしな所なんか何もないんだよインデックス」
という訳で、こんな事になるくらいなら、腐った倒木を
ビフォアとアフターの違いで街の飾りつけを見て楽しむ。
という話でまとまったので行き先は自然と決まった。何の変哲もない一軒家がこの日だけ突然ビカビカに光を放っているのもトラック野郎みたいで笑えるが(←どっちに対しても失礼)、やはり人の多い場所の方が派手だろう。ひとまず駅前の方に足を向けてみる。
あちこちにある三枚羽根の風力発電プロペラについては、
トラックベースだが物を運ぶというよりは広告用に使われる事が多い、でっかい液晶画面を荷台にのっけた宣伝カーが
ニュースは語る。
『クリスマスには生クリームでデコった自慢のカスタムドーナツを食べよう! こちらニューヨークではケーキの代わりに一風変わったお菓子が
「死ねばーか!! 知らねえんだよテメェらのキラキラしたプライベートなんか海の向こうまで押し付けんな! そんなにカロリーが気になるなら
「とうまが怖いよう。……レギオンと名乗りし負の塊よ、あの獣に乗り移って崖に向かうがよい!」
インデックスが両手を組んでなんか
しかし実際に駅前まで出かけてみるとあちこちに変な行列ができていた。
増えてる。
冬休み前から流行の
なんか知らない内に似たようなドーナツ屋さんがアメーバ系のモンスターみたいに増殖していた。どうやらプリン的な甘いドロドロでドーナツ全体を浸してババロアのように柔らかくしてから、その上にしこたま生クリームを始め、カラフルなチョコの粒やシロップなどをお客さんの好みに合わせて盛りつけていく仕様らしい。何の好みだって? 味なんか何をどう組み合わせて選んだって甘いに決まっている、SNS映えの好みだとさ!!
ちなみに海を渡った時点で伝言ゲームのように何かが
(大丈夫なのかな、あれ。生年月日や血液型からラッキーカラーを決めるって話だけど、そんな写真ネットに公開したら自分の個人情報が全部分析されちゃうんじゃあ……?)
というか何で運と色に関係があると思っているんだろう?
それで確率や統計のデータにブレが生じるなら、量子論を使った学園都市製の超能力開発なんかいらなくなるような気もするが。
そもそも手で持って食べられないような品をドーナツと呼ぶ事は許されるのか。
紙の小皿に置いたドーナツの上に生クリームを盛りまくり。
写真が目当てなので、どっちが食べるかについてはなんか二人でイチャイチャしながら互いに押し付け合っていた。どうやら苦労して並んで買ったお菓子が罰ゲーム扱いのようだ。もはや寝言のレベルがマリー=アントワネットを超えている、食べ物を粗末にしてはなりませんという思想はどこかのタイミングで消滅していた。何でこの人達は爆発しないんだろうと
「あ……」
しかも
とにかくケーキを売りたいコンビニや洋菓子店はもちろんの事、カラオケボックスやら回転寿司(!?)やらまで、今日この時に限ってやたらと店先の路上で増殖していてありがたみのなくなった真っ赤なサンタ少女達はいったん脇に置いてだ。
「とうま?」
「あああっ!? 待てよ、
鉄道ガード下でひっそりと営業していたラーメン屋がなくなっている。