第二章 変わる学園都市、前夜 the_24th,Showdown. ④
そもそも
(そうなると、一緒にダーツを楽しみましょうって雰囲気にもならないか……)
まるで仲間外れにするようで
いつか彼女達も、大手を振ってお陽様の下を歩ける時がやってくる。
そこまでは安全策で
「とにかく出ましょう。いつ店員さんが休憩なんかでこっちの事務室にやってくるか分からないんだし」
ともあれ、怪しい追跡者や襲撃者なんていなかった。
ひとまずの確定にそっと息を吐いて、
それは来た。
ドゴァッッッ!!!!!! と。
外からの
3
「おっとと……」
そしてどこかで誰かが
影は
ラッキーカラーで染め上げた毒々しいドーナツのせいか、唇の近くにあった生クリームを妖しい舌で
「ちょっと誤差っちゃいましたかね? 注意注意、と」
4
風景全体が、ズレた。
はっきりと断層のようなものがある。
細長い直方体の部屋だった事務室が、いきなり手前と奥で分かたれる。インデックスと
(っ、違う!?)
厳密には逆だった、と気づいたのは頭上からのしかかる大きな影の意味を捉えてからだ。向こうが飛び上がったのではなく、こちらの床が深く沈み込んだのだろう。壁も天井も地盤すらも切り裂かれ、
「まずいっ!!」
床全体が斜めに
平素のイメージと全く違い、地盤そのものが嵐の小船のように大きく揺れている。
一〇〇トン以上の地盤同士が激しく
巨大でゴツゴツした断面はこうしている今も
しかしそんな
口が開いていたのだ。
ただの土の壁ではない。地下空間があった。土地の限られた学園都市は足元だって開発の手が過密気味に伸びている。おそらくは駅と駅を
まるで最初から狙ったように、だった。
(ただの事故とか災害とかじゃない)
当たり前だ、こんな自然現象があってたまるか。具体的な手法までは見えていないが、どう考えたって人の手による『悪意』が透けている。
何かしらの超常を使って攻撃されている。放っておいても良い事なんか一つもない。
決断の時だった。
(だとすると、今はあの子を一人にするのはまず過ぎる!!)
「ばっ、危ないわよ!!」
「お前はインデックスがどうなったか確かめてくれ。頼む!!」
間一髪だった。
遅れて
床に転がったまま、
「大丈夫か、
「うん、
普段であれば何の変哲もない地下道だろうが、今はそこらじゅうに亀裂が走り、コンクリートの裂け目から黒土がこぼれていた。電気系統もやられたのか蛍光灯は軒並み死んでいて、所々から仕掛け花火の輝きに似た電気的な火花が壁や天井から散発的に、滝のように降り注いでいる。
「んー」
辺りは映画館のように暗くて、千切れた配線やコンクリートの破片がどこに落ちているかも分からない。亀裂の場所を把握しておかないと、大量の土砂で生き埋めにされるかもしれない。暗闇の中では危険だが、携帯電話のLEDライトに頼るしかない状況だ。
両手を上げて小さな女の子がぴょこぴょこ飛び跳ねていた。
「ミサカもピカピカできるよ、ってミサカはミサカは胸を張ってみたり」
「何だ? 無事な蛍光灯に電気でも通せるとか?」
「この髪をバチバチさせるの!!」
これについては丁重に辞退しておいた。暗がりの中だと、光源は真っ先に狙われる。頭や髪なんていうのは一番危ない。
やはり心細いのか。小さな
「これからどうするの? ってミサカはミサカは相談してみる」
「そうだな……」
しかし自由に動けるとして、どこへ行く?
何をすれば安全を確保できる?
(考えろ……)
壊れかけの地下は明らかに危険だが、地上に出ても安心とは限らない。開けた場所に出た事で集中砲火を浴びるリスクだってもちろんある。
だから闇雲な迷走よりも、動く前に方針を決めておいた方が
第一に考えるべきは、
(こいつが人の手による攻撃だとして、まず誰が狙われたのかってところだ)
いいや、
(……中でも特別扱いは、やっぱりこの子か)
「?」
そもそも大地の大顎が開いて
一方で、あのダーツバーにはもう一人、全く別の重要人物がいたのも事実だった。
インデックス。
魔術サイド、という別の世界がある。彼女は一〇万三〇〇一冊以上の魔道書を頭の中に完全記憶する魔道書図書館なる役割を持っており、世界中のアウトローな魔術師達がその
つまり、科学か魔術か。『見えない敵』がどっちに属しているかで、この先の展開は大きく変わる。読みを外せば間違った方向に盾を構える事になり、結果、背中や脇腹を集中砲火されて大打撃を受ける羽目になるだろう。