第二章 変わる学園都市、前夜 the_24th,Showdown. ⑥
さらにクリスマスシーズンなのも拍車を掛けた。本来だったら街を
道路はまるで海面のようにギラギラと太陽の光を照り返していた。
あちこちでビルが
大空をゆっくりと流れている飛行船だけが、世の中の混乱からぽつんと取り残されているように平和だった。お
「じ、地震を操る能力者とかなのかな、ってミサカはミサカは首をひねってみたり」
「どうかな……」
初手から派手な大技で大盤振る舞い。
だけど攻撃手段を限定する事で、こちらのミスリードを誘っているようにも思える。
そもそも単に揺らすだけの能力なら、最初のダーツバーは倒壊していないとおかしい。あれは地盤を持ち上げるというより、『建物のある場所を、足元の地盤ごと断ち切った』という方が正しいのではないか。だから地盤が揺れても建物は崩れなかった。元から二つに分かれていたから、ねじ切られる恐れがなかったのだ。
そしてそちらの方が厄介だ。
あれが汎用的に何でもできる
その場合はロックオン=死、となる。
ただし逆に言えば、
(……現実にはそうなっていない)
そこまで強大な能力だとしたら、反撃不能な獲物を
悪意に
その裏まで読んで希望に変えろ。
現実の事件では、誰でもクリアできるように魔法の傷薬や予備の弾薬が一定間隔で床に落ちている訳ではない。敵は、こちらにとって利になる物など全て排除し、自分に
「これからどうするの? ってミサカはミサカは質問してみたり」
「高い場所だ」
「最初のダーツバーからここまで、全景を見渡せる場所はどこだ? ヤツが単一の能力で襲い続けているとしたら、俺達を見ているはずだ」
「けっけど、ミサカ達は地下を走っていたような……?」
「敵の招待でな」
そもそも向こうからのセッティングだったのに、向こうが逃げる
「ダーツバーの事務室をきっちり分断した最初の攻撃と比べると、地下での攻撃は大雑把だった。どこか遠くにある水道だの工業用水だのの配管をぶち破って、地下道のエリア一帯をまとめて水没させるようなやり方だったろ? 大きなエリアは把握できているけど、細かい座標までは
もちろん決定的な証拠映像なんかどこにもない。
だけどそうやって自分で骨組みを作っていかなくては、とりあえずの目的地すら見えなくなってしまう。感情に任せて闇雲に走り出したところで、何が待っているかは言うに及ばずだ。自分達の命がかかっているのなら、せめてこの手で地図を開いて目的地を決める自由くらいはキープしておきたい。
「だとすると今がチャンスかもしれない。距離を置くほど敵は大雑把にしか俺達を把握できなくなる。俺達が水没した地下道にいるのか、外に出たのかも
敵の攻撃はあまりにも大規模だが、だからこそ、例えば同じビルの屋上まで
能力は一人に一つだけ。
破壊特化のあの能力は、おそらく自分の身を守るには不向きだ。ビル解体用の重たいアームを使って生卵を
『えー、なに? 何がどうなっているのー???』
あれはアルバイトか何かだろうか、短いスカートも気にせず道路にハの字女の子座りでぺたりとへたり込んでいたミニスカサンタの少女が
『すげーけど、この写真は上げたら炎上するかなあ……』
『なに言っているのよ、記録は正確に残さないと!』
ウィンドウの砕けたビル一階喫茶店に避難していた恋人達も、ようやく戸惑い半分不満半分といった形であちこち見回し、表の道路に出てくる。喫茶店の店員さんは割れたガラスだらけの床を見て頭を
当たり前だが、今日はクリスマスイヴなのだ。冬休みの中でも特に人の出入りの激しい一日。こんな中で、これ以上正体不明の能力者の横暴を許す訳にはいかない。
「じゃあ
「どうやって敵のいる場所を見つけるの? ってミサカはミサカは方針を確認してみる」
実際にやってみればすぐ分かるが、背の高いビルは下から見上げると屋上に何が置いてあるか見えなくなってしまう。闇雲に道路を走ってビルの群れを眺めたって答えは出ないし、かと言って『エリア一帯で最も背の高い建物から全体を見下ろして
しかし
「ないんだ」
「うん?」
「ダーツバーからここまで、一帯を奇麗に全部見渡せる場所なんて。最近の地図アプリはドローンの衝突を避けるために、平面の地図だけじゃなくて立体化までしてくれているからな。こいつで見れば分かるけど、どこのビルも他のビルに視線を遮られてしまうから獲物を狙うには不都合なんだよ」
「でも現実に、ミサカ達は狙われ続けているよ? ってミサカはミサカは反論してみる」
「だよ。だから仕掛けがある」
「ビルの『高さ』だけ見れば直線的な視線は全部塞がれてしまうように見えるけど、でも実際には違う」
「?」
「風力発電のプロペラだ」
「そこらじゅうにあるだろ? あれは風で勢い良く回ると大きな円形の鏡みたいに振る舞う事があるんだ。溶けた雪で表面が
当然ながらそんな条件に合う建物などそうそうあるものではない。