第三章 黒い陰謀と障壁の消失 Enemy _Use_XXX. ⑰
ストレッチャーに腰掛けて
変な加工や影武者なんかは……使っていなかったのか。
……
古い時代の権力者、と言っていたのは
あるいはすでに失われたものに憧れているクチかも、と。
苦労を知らない世代。
老人達が口々に言っていた言葉の意味が、どこかのタイミングで途絶えてしまった。そんな、のちの時代の権力者。
パリッ、という紫電の
「ともあれ、下手な傷をつけられる前で良かったわ。これでチェックメイトっていうのは自覚してんのよね? たとえ本物の
「だろうな」
鼻で笑っていた。
「これで君達を殺さなくてはならない理由ができてしまった。下手に
「どうやって? こっちは一応第三位よ。真正面から鉛弾撃ち込まれた程度でどうにかなるなんて思っていないわよね」
質問に、むしろ
ストレッチャーに腰掛けたまま彼は首を
「例えば、こう」
グァバッッッ!!!!!! と。
恐るべき爆発がもう一度、今度は
とっさの事で、
インデックスが慌ててその腕を両手で引っ張り、
しかし、何だ?
今のは何だ!?
武器らしいものは何も持っていなかった。それでも確かに現象は起きた。
「ッ、下がって!!」
今度の今度こそ。
学園都市でも七人しかいない
間違ってはいなかっただろう。
それでもまだ足りない、という程度の問題さえ発生していなければ。
「AuとCuの間、すなわち経路14に架空の端子を設けよ」
キィン!! と。
甲高い耳鳴りと共に、世界がブレた。
一二人のエリートたる統括理事、
わずか一言、
「フォイアエル」
キュガッッッ!!!!!! と。
今度こそ。
今度の今度こそ、音よりも早く飛来した何かが
消失したのだ。
一体、音声認識で何を実行したのか。親指の上に乗せ、まさに今絶大な火力となるはずだったゲームセンターのコインが……
飛来した『何か』は
『何が』飛来したのかは、
(……何が)
根丘は。
根丘則斗は、まだストレッチャーから腰を浮かしてすらいないのに。
(一体何が起こったんだッ!? 統括理事は、少数で学園都市を管理する『大人達の枠組み』は、こんなレベルで俺達の頭を押さえ付けるテクノロジーを隠し持っているっていうのか!?)
「さて」
ストレッチャーから影がゆっくりと立ち上がる。今度の今度こそ。手首の高級そうな腕時計を外して傍らに預け、女医から受け取ったジャケットに腕を通していく。
誰も。
何もできなかった。
一歩、怪物が気軽にドクターヘリから降りてくる。
音声一つで見えざる何かを掌握し、不可侵の何かを引きずり回し。子供の理論を振りかざす未熟な
科学が。
この男の科学が、見えない。
「……何をした?」
右手を構えたまま、
正体不明の攻撃もそうだが、先ほどの一発に関しては上条の掌で打ち消してしまえた。つまり、それが何であれ、
分かってきた気がした。少なくとも
若き統括理事は肩をすくめて、
「自分は平気な顔して殴りかかってくるのに、こちらには一切抵抗をするなって?」
「アンタ一体何をした!? 学園都市の超能力開発は、子供の生徒にしか効果がないはずだろうが!!」
学園都市の怪物は、大きく分けて二つに分類される。
一つ目は
二つ目は外の世界より三〇年以上進んでいると言われる科学技術を軍事転用した次世代兵器で身を固めた大人達。
だがこいつは違う。
「簡単な話だよ」
両腕を緩く広げて、むしろ相対する敵を歓迎するような格好で
そう、
「フォイアエル。AuとCuの間、すなわち経路14に架空の端子を設けよ」
「ッ!?」
能力、
「……じゃないッ!?」
「ヴァッサエル。HgとAgの間、すなわち経路20に架空の端子を設けよ」
今度は左手。一体どれほどの水を凝縮して圧力を高めているのか、ぎぢぎぢみぢみぢと古いロープが
まずい。
何だか知らないが、あれはまずい!!
そして
宣告があった。
「両者は異なるが本質においては等号である。すなわちここに新たな解を導くための合成を実行せよ」
それだけで。
恐るべき水蒸気爆発が