第四章 異世界交流、その始点 “R&C OCCULTICS Co.” ②
「もはやこれくらい、誰でもできる」
「
まさか。
古代の図書館とか遺跡の奥深くとか、そういう話とは違う。
「そういう風に、流れは変わったんだよ」
「冗談じゃない!! そんなの
道端に銀行の通帳を放り出しておくどころじゃない。そんな誰でも見られる場所で無造作に置いてあるとでも言うのか!?
「普段は自由に泳がせて『次の波』へ自動投資するアルゴリズムが面白い前兆を掘り当てたが、私が一人で独占してしまうとすぐにアシがつきそうだったんだ。なので、いっそ大量にばら
インデックスは別の所に注目していた。
というより、もしも
「……出エジプト記?」
一〇万三〇〇一冊以上の魔道書を完全記憶した魔道書図書館、禁書目録。
彼女の口が全てを
「ううん、聖化発声どころじゃない。適当なドイツ語の末尾にelをつけるだけで、その場その場で適当な天使を作っているっていうの!?」
「最小衝突理論とでも呼んでくれ」
「そんなのっ!!」
「そういう集中法があるのか、実際にオカルトとやらが機能するのかはあまり興味がない。ようは、現実に使える技術が手元にあればそれで
迷いがなかった。
学園都市の能力者だって、暴走の可能性くらいは常に頭の片隅でちらついているだろうに。『力』との付き合い方が確立していない証拠だ。
そうなったら最後。
痛い目を見る、程度では済まされない事まで想像は及んでいないのか。
「ふざけた手法だとは私も思う。しかし実際、歴史が証明しているらしいな。神の子を無視して天使崇拝が過熱していた時代には、聖書に一度も登場した事のない天使が人の手で粗製濫造されていたらしい。歯止めを掛けたのは教皇ザカリアス辺りという話だとか」
ジャココン!! というバネ
「なに、あれ……?」
左右の袖から飛び出したのは、暗殺用拳銃に近い。注意しなければ
頭の上に光輪を
超常を操る二丁拳銃。
先にインスピレーションを与えたのは
「リヒトエル、PbとAuの間、すなわち経路7に架空の端子を設けよ」
輝くような、白の光へと。
「っ、来るよとうま!!」
「襲いかかる光を目で見て対処できるならやってみろ」
笑って。
真空管の少女が、ほどけた。
ガラス管の外、外気に触れると同時だった。
そのまま真正面から、壮絶な一撃が突っ込んできた。
3
そのくせ科学サイドの中では勝てないと早々に見切りをつけた彼が手に取ったのは、よりにもよって外の世界にあった魔術。
まったくひどい反則だ。
であるならば。
こちらがヤツの知らない反則に手を伸ばしたとしても、文句なんか言わせない。
「オティヌス!!」
「呼ぶのが遅いぞ、人間」
ひょっこりと
北欧の神。
ダウンサイジングはしているが。
彼女は少年の右肩に腰掛けると、そのまま細い脚で少年の肩を蹴る。
それでわずかに刺激され、構えた右手がブレた。
結果。
弾道ミサイルすら正確に撃ち落とす、艦載クラスの閃光兵器を掌が正確に捉える。どんなものであっても魔術は魔術。彼の
「っ」
「足りないな、インスピレーションが」
吐き捨てるように、尊大に腕を組んで小さな少女は言い捨てた。
「せっかくの超常を自在に振り回せるというのに、やっているのは機械製品で作り出せる艦載兵器と全く同じとは。貴様の魔術が泣いているぞ。とはいえ、胸に魔法名すら刻んでいないのでは泣くモノさえ存在しないのかもしれないが」
「エクスプロジオエル、FeとAuの間、すなわち経路12に架空の端子を設けよ」
「それフォイアエルとどう違うんだ?」
もはや、半ば
しかし
事実として、オティヌスは眉一つ動かさなかった。
「聖化発声の安易な応用。手触りを知る事のできる身近な金属を用いて不可視のセフィラを想起し、
炎と煙で
ぐらりと重力がブレる。
「オティヌスっ、エクスプ何だっけ? ありゃ何だ!?」
「爆発。これについては英語のエクスプロージョンとほぼ変わらんだろ落第生」
「まだ留年って決まった訳じゃねえーし!!」
てっきり重力関係の魔術かと思ったが、そういう訳ではないらしい。
ヘリ空母の飛行甲板のようだった屋上の構造体そのものが爆発に耐えられず、砕けたか傾いたかしたようだ。
煙の向こうから見知った少女達の声があった。
しかし合流は
『とうまっ』
『馬鹿、アンタ落ちたいの!?』
というか、耐えられそうにない。
急激に角度をつけていく足場に耐えられず、滑り台のように
「くそっ!!」
「意外と慎重派だな、馬鹿げた黒幕。不確定要素の排除が第一。そのために、魔道書図書館なり学園都市製の超能力者なりと私達を切り離しにくるとは」
肩の上のオティヌスは気軽に言っていた。
滑り落ちたと思ったが、幸い、いきなり高層ビルの屋上から空中へ投げ出される事はなかった。すぐ下の最上階から外側へ大きくせり出した庭園に転がり落ちたのだ。前もって
そしてもう一つの影。