第四章 異世界交流、その始点 “R&C OCCULTICS Co.” ⑤
そのまま右の銃を突き付けた。
「フォイアエル!! AuとCuの間、すなわち経路14に架空の端子を設けよ!!!!!!」
バッキン!! という何かが砕ける音があった。
頭上の輝く光輪を
しかし噴き出した炎が
「震えるだろう?」
「体ではなく魂の中心がッ!! 科学も非科学もない。人が狙われるとはこういう事だ、命を奪われる瞬間に立ち会うとはこういう感覚なんだ! ここにはもう理屈なんかない。正しいからやっている訳でもない。私には、これしかない。この最悪な方法以外で人が救われるビジョンなど想像が及ばないんだよ!!」
「人間」
肩の上に乗っていた小さなオティヌスが、短く少年に呼びかけた。
それでいて、どこか
「……言葉の応酬はこの辺りが限界だ。状況の破綻についてはヤツ自身が一番理解しているだろうさ、分かった上で認められないんだ。どこかに取りこぼしがあって当然だろう、この神が手掛けない限りはな」
「オティヌス」
「
メキィ!! という鈍い音があった。
ちっぽけな一人の少年が。
それでも我と我をぶつけて押し切るために、右の拳を硬く握り締める。
「まだ……」
血まみれの体も無視して、
「まだチャンスがあるのなら!!」
「やるのは貴様だ。かつてこの神を救ったその力をもう一度見せてみろ」
4
こちらに向かってくるのは、一人の少年。
ガラスの銃身は四つ。これは何色にでも簡単に染まっていく小さな少女達、
火か、水か、風か、土か。あるいは切り取る力はそれ以外でも構わない。
考え。
そして若き統括理事は静かに笑った。
手放す。
魔術などという得体の知れない代物を落とし、自由になった両の拳を硬く握り締める。
初めて、だ。
あの少年のみならず、肩に乗った小さな影すら虚をつかれた顔になった。
がつっ、と。
硬い床に
空気を引き裂いて、
「まずいぞ人間!!」
「分かって、ッる!!」
元レスキューの精鋭。未だにその強靱な肉体をキープしているのだとすれば、身体的には単なる高校生に過ぎない
そう。
これが一番の正解だったのだ。
学園都市第一位の超能力に、本物の『魔神』が解き放つ極大の魔術。
そんなものより恐ろしいのは、誰でも覚えられる当たり前の格闘技の方だ。
「お」
それでも、ここまできたらもう戻れない。
一番見たかった
振り払えるか。
丁寧に距離を取って、スマートになんか立ち振る舞えるか!!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
叫んで、踏み込む。
全力の拳と拳が、真正面から交差する!!
鈍い音。
めりめりと。自分の耳ではなく、頭蓋骨を伝って響き渡ってくる音を、
やはり、純粋な腕力勝負となると
クロスカウンターには失敗した。
ただし、
「……ただの、拳」
脳を揺さぶられながらも、まだ
そのまま言ったのだ。
「だと思ったか?」
「ッ!?」
すでに膝が笑っている
だから、握り込んでいた拳を、ただ開いた。
より正確には、
だけど。
こんなものでも、使い方次第では確実に目を潰す武器となる。
「卑怯者で悪いな」
「チィッ!!」
目元についた血を拭うように指をやり、頭を左右に振るが、それでも隙は隙だ。
血には凝固作用がある。酸素または他の生体に触れると、特に。
「レスキューなんて言葉が出てきた辺りから、殴り合いになったら勝てないって思ってた。だから、泥臭くても意地汚くても絶対に勝てる方法を考えなくちゃあならなかったんだ。アンタと同じように!!」
仕切り直しても、すでに頭を揺さぶられている
それでも。
なけなしの力を全部集めて。
「もしも、こんな方法でなくちゃ大切な人を守れないって言うならさ」
そんな彼が次に頼るのは、おそらく耳。
純粋な格闘技が怖いなら、それが使えない状況に追い込めば良い。だけど
「もしも、形のない自分縛りに捕らわれちまっているのだとしたら」
二人はどこまで理解を深めたって敵同士。ここで時間なんか稼がれて、
だから、今度こそ。
最後の一撃を
「まずは、その幻想をぶち殺すッッッ!!!!!!」
その拳が限界だった。
右の手首に確かな手応えが返ってくるのを確認し、