第一章 白井黒子は躊躇わない ⑥
浴室全体が綿菓子みたいな真っ白の分厚い湯気で覆われていても、強烈な
「きゃああッ!!」
「分厚い雲の下、屋根伝いで商店街を移動している時、常に地上からこちらの位置を正確に捕捉しているはずのあなたが何度か不自然にわたくしの方を見ない事がありましたわね」
目潰しの効果は一瞬だ。
だからその間に
見られても避けられない状況を、確定させる。
「つまりは雲の中の雷。分厚い雨雲や空気による光の減衰が一切ないあなたの場合、
次の一撃がトドメになった。
太いホースを飼い犬のリードみたいに思い切り引いて
5
そして
ツインテールも制服もびっちょびちょで、派手な下着とか全部透けている。
「……あの、
「なに?」
予備のメガネに掛け直している人は何だか不機嫌そうだった。
メガネ女子の顔の真ん中に全力の打撃を一発お見舞いする、という極限のやらかしをしてしまった後輩は恐る恐るといった感じで、
「確か勝負に勝ったら週末は自由にお休みできる報酬っつーか休日とは言葉の通り本来勝ち負けに関係なく誰でも休めるもんだろのはずなのに、わたくしは
「訓練中は
顔を真っ赤にして真面目なメガネ女子は叫んでいたが、同室のルームメイトは気楽にけらけら笑っているだけだ。
そしてどんな形だろうが勝利は勝利。
勝ったのだ。
勝って自由を獲得してしまったのだ、
もう誰にも彼女を止める事は
(これで邪魔する者はもういない。さあさあ待っていてくださいましねお姉様……。どぅるははは!! 一〇八の素敵なトラップが待ち受ける完全密室DIY夢のサバイバルラブルームがわたくしとお姉様を待っているうーっっっ!!!!!!)
ぼたたっ、と何かがこぼれた。
膝の上に落ちた色彩は赤かった。
「あ、あら?
「いいえお気になさらず。これはちょっと形にできない頭の中の妄想がエキサイティングし過ぎただけで……」
と、なんか長い髪のルームメイトが何か疑うような瞳をメガネ女子に向けて、
「
「ああ、やっぱりさっき顔の真ん中に膝を入れたのがまずい事になっているんじゃあ……」
「そりゃダメだわ。
……このカタブツ巨乳先輩の過去は一体何がどうなっているのだ? だんだん本気で心配になってくる
ていうか変な
「し、
「ちょ、まっ、お気になさらずと言っているでしょう!? これは
「
「しれっと無礼を極めておりますわね謎のルームメイト!?」
6
消えた。
逃げ出した。
やる事はやったのだからこれ以上付き合う義理なんかない。そして『
向かう先は一つ。
誰が何と言おうが
「ふ、ふふふ」
もう誰にも邪魔させない。
大丈夫。
ついてる。追い風が背中を押してくれている。何か巨大な運命的なものが
「うへへ待っていてくださいませお姉様もはや誰にもわたくしを止める事ができませんわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
「ほう
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「あの」
「遺言か?」
「寮監サマ。何がどうなってこんな仕打ちに結びついたのでしょう???」
「それは大変ユニークな遺言だ、墓には刻んでやるから心配するな」
待ってほしい。
ちょっと待ってほしい!!
今の今まで不眠不休でこっちはやりたくもない
そして
より正確には携帯電話。
「しっ、しまったア!? そういえばアカウントクラッシュしたまま
「寝言は
寮監のメガネが輝いていた。
これはダメだ、『
能力など一切ない。それでもあらゆる
最後にこうあった。
「お前はここで終わりだ」
「それが教育者の口から出てくる