第一章 屋上で鉢合わせる女性には大抵何かある ④

 なんにせよ、俺に対してこの脅しはまったくと言っていいほど無意味だ。


「その……下手したら裸の写真をばらかれる可能性があるのよ? 嫌じゃないの?」

「それは嫌ですけど、俺が何もしなければばらくつもりはないんですよね? じゃあ別に大丈夫ですよ」

「……」


 だろう、どう先輩がすがるような目でひよりの方を見ている。

 あれ、もう脱がせてくれないのかな。まだワイシャツの胸元がはだけている程度なんだけど。


「……どうセンパイ、ちょっとこいつのことで相談があるんですけど」


 ひよりはあきれたような表情を浮かべながら、どう先輩を呼ぶ。

 結局彼女らは三人で会議を始めてしまい、俺はぽつんと一人残される羽目になった。

 意図せず放置プレイみたいになっているが、大して服が脱げているわけでもないからか、別に興奮はしないな。俺もまだまだ修行が必要らしい。


「────待たせたわね、はなしろ君」


 しばらくして戻ってきたどう先輩は、ずいぶんと苦い顔をしていた。

 その後ろにくっついているひよりは諦めたような表情を浮かべているが、まあそれはいつも通りとして。

 ふたさんの表情はまったく読めない。割と顔色の変化が乏しいんだな、この子は。


「あなたを脅すのはもうやめておくわ」

「え、そうなんですか?」

「代わりに……」


 どう先輩は、俺の目の前に何かを突き出してきた。

 それは腕章。

 生徒会役員であることを証明する、限られた者しか持てないあかしだ。


「あなたには、生徒会雑務────もといがしゆいの秘密を守る者として、生徒会に席を置いてもらうことにしたわ」

「……はい?」